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陸上設置の海軍対空砲は高角砲、高射砲、どちらの名前で呼ばれていたのでしょうか? U-TARO |
- 旧日本海軍は高射砲を高角砲と呼んでおりましたので、陸上にあっても高角砲です。
hush
- hush様、早速のご返答ありがとうございます。
映画に出てきた対空砲を相当な年配の方が「海軍の高射砲は立派だった」とおっしゃっているのを耳にして質問させていただきました。
劇中でもちゃんと「高角砲」と言っていましたので、そういう表現もあったのかなあ?と愚考した次第です。
U-TARO
- 鄭重な御礼を賜り恐縮いたしております。
軍隊用語は日常会話で使用されるものと違っている場合が多くあります。司馬遼太郎によると、旧日本陸軍では、ねじ回しは柄付螺廻(えつきらまわし)で、ミシンは縫穿機(ほうせんき)と呼んだそうです。また、長靴を「ながぐつ」ではなく、「ちょうか」と読み、兵隊の履くブーツは半長靴(はんちょうか)、革靴は短靴(たんか)、スリッパは上靴(じょうか)と呼んだそうです。
陸海軍で言い方が異なる場合もあります。たとえば、陸軍ではイチ、ニ、サンと数えたのが、海軍はヒト、フタ、サンとなり、pを陸軍はセンチと読みますが、海軍ではサンチとなります。また、陸軍士官学校に当たるものは、海軍では兵学校です。
ところで、軍隊内で日常の言い方をすると、娑婆っ気が抜けていないとして制裁の対象となりますので、軍隊経験者は呼称には気をつけます。したがって、その登場人物は海軍に籍を置いた人ではないということになります。
ただ、高射砲という言い方は、戦争中は一般に使用されたと思われます。したがって、その映画(「この世界の片隅で」でしょうか)の中で、一般人が高角砲という言い方をすれば、かえって不自然であろうと考えたのでしょう。そして、だとすれば、たった一つの言葉に対してもリサーチの行き届いた映画ということになろうかと思います。
なお、アジア歴史資料センターでリファレンス・コードC01004455100で公開されている「羅津要塞地帯内海軍施設等に関する件」には、「高角砲」と記載されています。これは陸軍側の文書ですが、海軍の施設であるため、陸軍側でも「高角砲」と記載しているわけです。
hush
- 大変詳しいご説明、ありがとうございます。
海軍でも陸軍でも高角砲で統一されていたのですね。
そして高角砲を「高射砲」と呼ぶのは軍から距離をおいた表現と理解しました。
あの方が高角砲と言わず海軍の高射砲などという、まどろっこしい表現をしたのは軍人ではないという意識の現れなのかもしれません。
戦争体験者があえて娑婆っ気のある表現をするのは何度も耳にしていますし。
なお、見た映画はご指摘の「この世界の片隅に」でした。
U-TARO
- ごめんなさい、説明が悪かったです。
陸軍は高射砲と呼びましたが、海軍は同じものを高角砲と呼んでおります。したがいまして、海軍の高射砲という言い方は、民間人特有のものではありません。
なお、戦争中に高射砲という言い方が一般化したと書いたのは、当時のニュース映画等で使用されて人口に膾炙していたと思ったからです。
hush
- 戦前から国内一般の防空は陸軍の担任であり、民間への防空思想の教育普及も陸軍が主体となっています。
ですので、民間では陸軍式の呼び方「高射砲」が戦前から一般的なものとなっていました。
片
- ひえ〜!片様!
素晴らしい映画をありがとうございました。
なるほど、腑に落ちました。納得です。
U-TARO