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帝国陸軍の火砲名称についてお尋ね申し上げます。 なぜ旧軍では、(戦後現代の一般的な呼称である)いわゆる「カノン砲(加農砲)」を(「砲」を語尾につけずに)「加農」と表記呼称していたのでしょうか。 特に深い意味はなく、創生期に多大な影響を受けたフランス軍のcanonにそのまま当て字しただけなのでしょうか。 Kempei-chan |
- 語源的にはカノン砲というほうがおかしいわけですし、自然なことではないかと。
また日本陸軍に於けるカノンの略号はK、榴弾砲の略号がHですんで、ドイツの影響であると見るべきでしょう(フランス語だとカノンはC、榴弾砲はOになるはずです)
SUDO
- ご回答ありがとうございます。
確かに「加農+砲」では重言になりますね。
律儀に言葉を正しく使っただけで、他の砲種(野山榴弾臼迫撃歩兵騎…)と違い加農だけが「加農」なのは特に深い意味はないのですね。
Kanoneに由来する軍隊符号は盲点でした。
重ね重ね失礼致します。
戦後日本において「加農」でなく「加農砲(カノン砲)」の表記が一般的になってしまっているのは、単なる間違え・語感の良さのせいなのでしょうか?
比較的専門的な出版物やサイトでさえ帝国陸軍の加農の名称を堂々と誤って表記している(八九式十五糎加農→八九式十五糎加農砲)ものが大半です。
Kempei-chan
- 確かに、旧軍での制式名称は“加農”でしたが、俗称・通称としては公文書でも“加農砲”という単語は使われています。
例えば、明治30年12月の砲兵会議では「九珊米加農砲架属品追加ノ件」という議題が出たという資料(アジ歴Rel.C07041433500)がありますし、明治32年10月の「三軒屋砲台加農砲用榴弾下付の件」、明治34年7月の「斯加式12珊米及9珊米速射加農砲説明書の件」の様(他多数)に、砲兵会議という日本陸軍の砲兵の元締め的な会議でも明治30年代から“加農砲”という単語は俗称・通称として使われています。
よって、一概に『帝国陸軍の加農の名称を堂々と誤って表記している』とは言えないのです。
“加農砲”が制式名称として使われだすのは戦後の自衛隊創設からであり、「155mm加農砲M2」と標記する様になってからと言われています。
伸
- ↑一番最初の明治30年の資料は、ちょっと的外れでしたね。
明治32年資料がアジ歴Rel.C07041551500、明治34年資料がアジ歴Rel.C07041643700になります。
明治24年の資料「加農用弾丸属品備付の件(アジ歴Rel.C07070570800)」は、第六師団が提出したものですが「日ノ山砲台備附済之二十四珊加農砲一門」と記述されていますから、俗称・通称としては古くから使われていますね。
伸
- 日本国語大辞典によりますと、大砲を意味する言葉としての「かのん」が日本の書物に初見されるのは、
新井白石が1715年頃著した”西洋紀聞”で、カタカナで「カノン」(語源オランダ語 KANON)だそうです。
これには「砲」の漢字は付いていません。
そして江戸後期から幕末には色々な兵法書物に漢字で「加農」や、「モルチール」(臼砲)、
「ホーウィツル」(野砲) それ以前には「フランキ 仏狼機」などが散見されますが、
当時の書物どれも「砲」の漢字は付きません。 舶来名の大砲にあえて「砲」の漢字は添えていません。
その呼称がそのまま 明治陸軍に継承されるのも自然であります。
さて、戦後は「砲」を付けて、「加農砲」と呼称してる件ですが、
>単なる間違え・語感の良さ >俗称・通称、
Wikiにては”この呼称が浸透している。”←浸透と解説。
などではなく、しっかり「加農砲」が制式な呼び名です。
極東某国の戦争プロ組織 次A隊は、内規で各種装備品の呼称や運用用語を規定しており、
火砲用語として加農砲も定義・制定しております。
加農砲:一般に砲身の口径長がりゅう弾砲に比べて大きく,主として低射角で射撃をする火砲。英訳 GUN。
「砲」の漢字を添える事になった理由を推測するに、次A隊の装備品や消耗品はそれを制定するにあたり
仕様や呼称方法について、内規 例えば"装備品等標準化実施細則"にて事細かく規定されており、
その名称漢字表記、特に最後の漢字でその兵器種別を表すことしている様です。
××式小銃、××機関銃・・・・小火器などの銃。
××式榴弾砲・・・・火砲。
××式××車・・・・車両。
××弾、××誘導弾・・・・弾薬。
××機・・・・・航空機。
××艦、××艇・・・・それぞれの艦、艇。
よって「加農」も兵器種別を表す漢字「砲」を添えて火砲を表す制式呼称としたものと愚考いたします。
以上
軌跡の発動機?誉
- 帝国陸軍が何処まで厳密に「加農」と使っていたかですよねぇ。
例えば、昭和13年5月の陸軍技術本部が出した公式文書の「九二式十糎加農借用ノ件」では、内容で「九二式十糎加農砲借用致度件申請」と書いていたりするので、現場ではかなり自由度というかちゃんぽんだった気もしますよねぇ。
「各國15糎級加農ノ研究」という陸軍が作成した印刷物では標題こそ「加農」ですが、中身は「加農砲」が主として記述されていますが、「加農」の記述もあり、かなりちゃんぽん状態です。
例えば『英国の15糎(6吋)加農砲は36口径、46口径、52口径(?)の3種あり。36口径6吋加農には…』様な感じですね。
伸
- ご教授、誠にありがとうございます。
一昔前、元野砲兵下士官の方にお話を伺って以来(「今は違ったけど、本来加農砲なんてのはあくまで俗称」)気になっていた話題でありました。
>5
自衛隊の都合でありますものの、戦後現在では「加農砲」も制式・正式の表記となっているのですね。
>6
事前にアジ歴も少し漁ってみまして末端レベルでいくつか「加農砲」と表記してる資料はヒットしましたが、技本発の第一級の公式文書でも使用されていたとは勉強になりました。
Kempei-chan