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GUN誌2010年3月号に日本陸軍26年式拳銃の特集があります。 その記事で、弾丸と銃身内径がスカスカなのは この時代の無煙火薬は発明されたばかりなのでガス圧がまだ不安定であり運悪く異常ガス圧が発生した時の逃がしの為。 そして引金と兼ねたシリンダーストップだけなので、普段のシリンダー回転の固定がされない設計なのはコストダウンの為であるという解説がされていました。 これらの解説は本当なのでしょうか。 ウィキペディアにもガス圧逃がしの為みたいな事が書かれていました。 それならば同時代の外国のリボルバーも皆そうなのかな、と疑問を持ちました。 リボルバーキッド |
- 弾丸と銃身内径がスカスカなのではなくてライフリングの溝が深いと表現すべきでは?
SC
- まともな回答がないので小生が一言二言解説します。
Wiki の26年式のところを拝見してきました。 かなり詳しい解説で、現日本にあれだけの研究解説出来る方が
おられた事に感心しましたが(恐らく書き込み者の想像がつきますが)、深い考察が不足しています。
1.口径の話
弾丸外径と銃身内径(谷径、綫底径せんていけい、GROOVE DIAMETER)の勘合割合を弾丸緊塞度と言いますが、
26年式は弾丸径Φ9.1に対し 山径Φ9.0〜9.1磨耗状態、谷径Φ9.3 であり確かに山も谷も ゆるゆるです。
(普通は弾丸径≒谷径でありその差は5/100mm 程度。100年前なら無視可)
さて、模範とした”Belgian Nagant M1878” は公称口径9mmですが実は 弾丸径≒谷径Φ9.32 ライフリング右4条を
26年式銃身はそのままコピーしたものです。
(当時のリボルバーライフリングは、ヨーロッパ主流右4条、S&W右5条、COLT左6条であり、その仕様を見ただけで
ヨーロッパ式を真似た事が 自明であります。 )
対し 9mmX22R NAGANT弾薬はリボルバー拳銃用薬莢としてはややテーパーがきつく、当時の日本の工業力による生産に躊躇し、
国内でもちらほら輸入されていたS&W拳銃のストレート薬莢 .38S&W (俗称 38ショート、38レギュラー)弾薬を元に
延長したものと推測されます。
26年式9mm弾薬、Nagant M1878 9mm弾薬、.38S&W 弾薬の三者寸法比較すれば、26年式9mm、.38S&W 両者が、
薬莢長以外 弾丸も薬莢径、リム径ほとんど同寸なのが解ります。
Nagant 9mm弾薬は前記 Φ9.32の通り全体的に太く且つテーパー状です。
よって 26年式は、ガス圧逃がしの件を完全否定はしませんが、上記の通り弾丸径と銃身内径のミスマッチを覚悟で
設計・生産された背景があります。
2.シリンダーストップの話
26年式の元になった ”Belgian Nagant M1878”始め初期のNAGANTや当時の他リボルバーも
「引金と兼ねたシリンダーストップだけ」の銃はちらほら有ります。
パテント回避かコストダウンの為かは不明ですが、NAGANTも後年 引金部に独立したストップ付きモデルや
又、ガスシールドで有名な”NAGANT M1895”は ピースメーカーの様なローディングゲートが
シリンダーの後端円周部ノッチに引っかかりストップを兼ねる工夫がされています。
(シリンダーが前進するので 通常のストップメカは不可能。)
さて、26年式は、以下の理由で「普段のシリンダー回転の固定」用ストップを付属させなくても 実用になったのでしょう。
・通常(ほとんどの時間)ホルスターに収めており、不意にシリンダーが回転してしまう機会は少ない。
・ダブルアクション専用銃なので、発射瞬間に次発回転を正規位置で止める、引金兼兼用程度のストップが有れば事足りる。
発射瞬間以外は回転ズレに神経質になる必要なし。 少々の回転ズレは引金を引けばそのまま次発回転し射撃可能。
・「普段のシリンダー回転の固定」が必要なのはシングルアクション発射するリボルバーです。
(回転ズレが問題となるのは、シングルアクション・ハンマーコツキングしたまま暫らく所持している状態です。
もし回転止めされておらず、いつのまにか銃身軸線と薬室軸線がズレたまま発射したら大変な事になります。)
この状態で、「引金兼用ストップ」の構造をシングルアクションに適用すると一方向の固定のみ可能。
反対方向には回転してしまう欠陥品となります。
26年式で このシリンター固定に起因する事故や欠陥話を聞いた事はありません。
普段の使用に 特に問題とならなかったのでしようね。
以上 長文 失礼しました。
軌跡の発動機?誉