670 AN/SPS-39レーダーについて質問です。
アンテナ中央部に仕切り板のようなものが設置されていますが、どういった意図がありますか?
Kaveri

  1. 仕切り板のような板状空間の内部には、背面の反射器(縦長のシリンドリカル・パラボラ・リフレクター)へ電波を吹き付けるためのリニア放射器(アレイ・フィーダー)が入っていました。
    AN/SPS-39も周波数スキャン方式の3Dレーダーですが、フィーダーの導波管は折れ曲がって数十段に重ねられたような形になっていて折れ曲がった各導波管の先端に放射スロットや反射器があったと思います。

    SPS-39レーダーもその後には発展・改良型のAN/SPS-52レーダーと同様な平板型のスロット導波管アレイ式のプレーナー・アンテナに付け替えられていますね。
    MK@2004-

  2. ご回答有難うございます。

    この形状ゆえのメリットなどもあったのでしょうか?
    航空自衛隊ではありますが、J/TPS-101の空中線装置もAN/SPS-39に近い形をしているようです(中まで同じかは不明です)
    ただ配備開始が1981年とのことで、すでにアクティブ式フェイズドアレイレーダーも実用化されている時かと思います。
    あえてこの形状とした以上、何らかのメリットのある形状だとは思いたいのですが。

    Kaveri

  3. AN/SPS-39(試験用途で終わったAN/SPS-26のアンテナとほぼ同一)や現在は一線からは退いたJ/TPS-101も現用品のJ/FPS-4も反射・ビーム成形用のパラボラアンテナの焦点面に送受信アンテナ素子列(アンテナ・フィーダー)を持つ点は同じですね。
    アンテナ中央前面にフィーダーを置く方式はシンプルで確実な方法と思いますが、送受信ビームの中に構造物を置くので、その分電波をブロッキングする可能性が出てきます。
    これを防ぐにはフィーダーをビーム外に置くオフセット給電方式もありますが、一長一短があるようです。
    SPS-39はアンテナをマストの高い位置に装備する艦載レーダーとして、重量軽減やスタビライズの容易さ、風等に対する空力バランスなどを考慮した結果と思われます。

    上下方向にビームを振る方式としてSPS-39は周波数変更のみで走査を行っており、位相/周波数複合走査方式のJ/TPS-101などに比べれば、移相器や駆動回路などもない導波管構造主体の非常にシンプルなものです。
    移相器ドライバーや冷却用のファンなどもないので、導波管アレイとアンテナ素子群を囲むだけの構造で済むと思いますからSPS-39のアンテナではシンプルで見た目も導波管や支柱など見えないプレーンなものとなったのでしょう。
    固定三次元レーダーのJ/FPS-4では、更にアクティブ方式になっていますので、このリニアアレイフィーダー部分は送受信モジュール等を含む大がかりな構造となっていますね。

    SPS-39のリニアフィーダーでも用いている折れ曲がった導波管(サーペンタインあるいはスネーク導波管などと呼ばれます)の各放射スロット部分に横(直角)方向に直線状のスロット導波管を接続して全体で数十本をスタックし、平面板的なスロット導波管アレイアンテナとしたのが、その後のAN/SPS-52やより大型のAN/SPS-48のシリーズになります。
    国産のJ/TPS-100(退役済)やJ/FPS-2のアンテナも同様な構造ですが、位相/周波数複合走査方式となり、移相器も有る点などが違っています(艦載のOPS-12は位相走査方式のみ)。
    MK@2004-

  4. 平面(プレーナ)型アンテナでより近代的な外観に感じられるJ/TPS-100の後継たるJ/TPS-101のアンテナが、なぜ昔からあるような古い形式の反射型アンテナなのか、同様にJ/FPS-2と同じようなプレーナ型アンテナでアクティブフェイズドアレイ方式となった近代的なJ/FPS-3の後のJ/FPS-4が、なぜこれも古い形式の反射型アンテナなのか、何かメリットがあるのかと言う意味のご質問だったのではないかと、ふと思い直しました。

    アンテナ素子数が多くなる平面型アレイアンテナでは、アンテナコストが高くなる傾向があります。特にアクティブフェイズドアレイ方式のAESAレーダーでは、この傾向が著しいでしょうね。反射型アンテナで要求を満たせるのならコスト的に有利な反射型アンテナでも良いという考え方があります。

    上記のJ/TPS-100とJ/TPS-101は、担当メーカーの違いと言うのもありますが、移動三次元レーダーとしての移動・展開・運用能力などの要求やメーカーの考え方の違いがあったのかもしれません。構成要素の削減などコスト低減もあったように思います。
    現在は強風下などの環境により強い円筒型固定アンテナでアクティブフェイズドアレイ方式のJ/TPS-102に置き換わっていますね。

    J/FPS-4の例では、これも製造担当メーカーが異なりますが、第一に調達コストの低減にあったと思われます。
    運用用途も限定するなどしてコスト低減を優先した結果と思います。構成をL帯の周波数のアンテナ一式に絞りましたが、代わりに回転式アンテナは背中合わせに2式が組み込まれ、前後にビームを発射して走査レートを倍増させています(J/TPS-102も前後にビームを発射可)。
    J/FPS-4はビームを電子的に上下に振れるだけなので、J/FPS-3のL帯(遠距離)アンテナのように上下左右には振れません。J/FPS-3のようなBMD探知能力付与には無理な面があるので発展性の面では制約があると言えますね。
    MK@2004-

  5. ご回答有難うございます。

    J/TPS-101についてはコストもしくは強風対策だったのかもしれませんね。確かに海沿いの山頂は風も強そうですし。
    位相/周波数複合走査方式であるとは知りませんでした。
    Wikipediaによると76式対砲レーダ装置でも使用されている方式で、空中線方位を固定したままでも左右方向に対応するとの記述がありました。
    対砲レーダー限定の技術かと思いましたが、地上用の対空レーダーでも採用されていたのですね。

    まだまだ三次元レーダーの疑問は付きないのですが、艦船関連から脱線しそうですので別項目から質問したいと思います。
    MK@2004-様、大変有難うございました。
    Kaveri


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