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過去ログは拝見したのですが、どうにも(自分の頭が)錯綜として混乱してしまったので質問させていただきます。 日本海軍の各空母は(零戦/九九艦爆/九七艦攻のトリオの場合として)、格納内には最大で何機程度搭載できるのでしょうか。また、格納庫に最大限搭載したうえでの甲板上搭載余力を含めた最大搭載機数はどの程度なのでしょうか。 定数が搭載機数とイコールではないことは分かるのですが、ならば搭乗員や機体の不足といったファクターは無視したうえで、航空機運用能力を損なわない範囲内ではどの程度搭載できたのでしょうか。 伊吹 |
- 最近空母についてアレコレ調べる機会がありましたので、そこで得た知識を元にご回答させていただきます。
基本的には、日本の空母の場合、スペック上の搭載機数=実用の最大搭載数と考えていただいていいと思います。補用機は、ある程度分解してパーツとして積み込んでいるものですから、通常は常用機と区別して表示されているわけです。
大戦時の3大空母大国、日英米では、それぞれ搭載機収納についての考え方が根本的に違います。
日本と英国は、基本的に全搭載機を格納庫の中に収容することを基本としています。理由はいくつもあり、日本にとっては飛行機は高価な装備だったこと、英国については北大西洋の荒れた海での運用を考えると収納することがマストな選択だったなど、それぞれの国の事情があります。
そのため、少しでも格納庫スペースを広げるために2層や3層の格納庫構造にしている艦が多くあります。
(ただし英国の場合は、格納庫周辺の装甲を厚くするなどの結果、搭載機数は少なめですが)
一方でアメリカは、早くから飛行甲板に露天係留することを基本としています。これは大量生産を得意とした大国ならではの効率重視の考え方といってもいいかもしれません。
また格納庫は搭載機の整備スペースとしての使い勝手の良さに重きを置いています。それは現在の原子力空母でも、同様の思想です。
空母の構造も、上甲板の上に1層の格納庫を作り、その上に飛行甲板を載せるという形で、上甲板の下の層にも格納庫を作った日英の空母とは設計思想も異なります。
米空母の飛行甲板の幅が、同じような排水量の日本空母と比べて広いのも、露天係留を考えたつくりだからでしょう。もちろん早くから油圧カタパルトを備えていたことも、露天係留で運用できた大きな要因だと思います。
仮に日本の空母、例えば翔鶴型で、米空母のような露天係留まで行えば、積むことができる機数は増えるでしょう。ただその場合、発艦や着艦作業に大きな支障が生じるなど、実用的な運用ができたかといえば、難しいでしょうね。
ですから、飛行機を単に運搬するのではなく空母として使うのなら、スペック上の数字を最大搭載数としていいかと思います。
PAN
- 1の追記ですが、日本の空母で唯一、露天係留しても実戦的な搭載機運用が可能だったかもしれない艦は、信濃でしょう。
もともとに船体が大和型で、飛行甲板の幅は40m、実際にはもっと広かったという話もあるようです。
信濃は搭載機が常用42機+補用5機ですが、アメリカ型の露天係留の運用すれば、倍近い数を積んでも運用可能だったんじゃないでしょうか?
もっとも、あまりにも資料が少ないこともあり、あくまでも推測にすぎませんが。
PAN
- 過去ログだけではなく、当サイト別館「真実一路」も参照されると良いですよ。
http://www.warbirds.jp/truth/ijn_cv.htmlここに回答のすべてが書かれています。
・各空母の新旧機種の標準搭載機数
・露天繋止は日本海軍でも常時行なっていた。正規空母では10機前後。
・補用機は全機が分解状態というわけではない。
などなど。
超音速
- 英国空母についてですが、イラストリアスの搭載機数が少ないのは装甲した結果ではなく、1933年の計画時に空軍からの艦載機の割り当て数が限られてしまったために一隻あたりの機数も少なくなった為です。少ない艦載機を守るための装甲空母としたわけです。
また大戦中の英国空母も露天繋止で搭載数を増やしており、正規空母で約20機前後が露天繋止可能であったことが下記のリンクでわかります。
http://www.warbirds.jp/truth/ukcv/ukcv.html同じく「真実一路」
超音速
- >超音速様
BUN様がお書きになった真実一路にあった資料などは、非常に興味深いものですね。
たしかに飛行甲板の幅に多少余裕のある日本の空母においても、実戦での運用状態では露天繋止はされていたでしょう。しかしだからと言ってスペック上の搭載機数+10機程度は可能とするのは、いささか難しいのではないでしょうか?
最大機数を格納した場合は、格納庫内は文字通りパズルのような有様で、ギッシリです。戦場まで赴く間はそれでもかまいませんが、実戦時に実用的な運用を行うためには、格納庫内に物理的なスペースを作る必要があります。
まして新型機が大型化した時代には、なおさらでしょう。(そのスペースを確保するために、補用機を減らしているぐらいですから)
ですから、質問者さんが書かれている「航空機運用能力を損なわない範囲内ではどの程度搭載できたのでしょうか。」という意味では、やはりスペック上の搭載機数が限度と見たほうが実情に近いんじゃないかと思います。
また、単に搭載機を格納するスペースだけではなく、搭載する航空機用燃料の量とか、弾薬の量などから考えても、やはり常用機+補用機として公表されている数が、運用上での最大量と考えてもいいのでは?
(瞬間的に積める数というのであれば話は別ですが)
もう一つ、>4でご指摘されたイラストリアスについては、装甲化による重量増加を相殺するために、格納庫を2層から1層に減らし、その結果搭載機数が大幅に減ったはずです。ただし同じイラストリアス級とは言われながらも、インドミダブルなどは2層の格納庫を復活させて搭載機を増やしていますが、それでも同程度のサイズの日米空母に比べれば少ないですね。
英国空母での露天繋止運用が、実際はどうであったのかにつきましては、あまりよく知らないのですが、確かに太平洋やインド洋では、定数を大きく上回る搭載機を運用していますね。
当然、露天繋止での運用をしていたわけです。そのあたりは、運用方針をアメリカに倣って変えた、いわば戦時運用ということでしょう。(この時期、搭載機もほとんどアメリカ製ですし)。
それでも最大60機には満たず、エセックス級はおろか翔鶴にも及ばないわけですが。
PAN
- >5
飛行甲板の幅にこだわっておられるようですが、幅は関係ありません。露天繋止の場合、問題となるのは長さです。
発艦する際に、露天繋止機を飛行甲板の後方に移して、その状態で発艦機を整列させ、滑走距離をどれくらいとれるのかによって、露天繋止可能な機数が左右されます。もちろん露天繋止機を発艦機に加えてしまうことも可能でしょう。
片
- >片様
幅と書いたのは飛行甲板の面積に余裕が必要という意味からです。
最終的にはいかに滑走距離を確保するかですが、幅もある程度ないと多くの機体を載せられませんから。
日本の空母より、米空母のほうが飛行甲板の幅が広いのは、そのスペースを確保するためだと思っておりましたので。
もっとも、信濃ほどの大きさというか幅に余裕があれば、現代のアングルドデッキのように、艦橋前後にある程度の機体を並べたまま、発艦も可能かと夢想しましたが。(さすがに着艦は、機体を前方に移さないと危なくて無理でしょうけど)
PAN
- >スペック上の搭載機数+10機程度は可能
3で私はリンクを貼っただけなので、別に上記のように主張しているわけではないです。ただ、
>日本と英国は、基本的に全搭載機を格納庫の中に収容することを基本としています。
という1の記述が疑問だっただけなのです。標準搭載機数は既に露天繋止が前提だということはリンク先を読んでいただければわかります。したがって
>スペック上の搭載機数=実用の最大搭載数
には異を唱えてはいません。ただし搭載機のうち戦闘機の割合を増やすことで搭載数は微増しますし、露天繋止以外にも、過去ログhttp://www.warbirds.jp/ansq/21/B2001125.htmlによれば日本海軍は天井吊り下げ、横押し車による移動などで少しでも搭載数を増やそうとしていたらしいのですが。
ちなみに英国インディファティガブルは24機の露天繋止を行なっておりますが、これはカタパルトがあるからできるので、飛行甲板が同じぐらいの広さだとしても日本海軍は真似できません。RATOを使えば別ですが。
超音速
- >7
>幅もある程度ないと多くの機体を載せられませんから。
別に「多くの機体」と考えなくて良いのではないですか?
片
- 仮想的な話として、運用上の条件は何も含めずに物理的な搭載可能数の限界として考えるなら、「格納庫内満載」+「飛行甲板上に一回の攻撃隊を整列させるのと同数程度搭載」ということになるのかもしれません。
飛龍の場合で考えるなら、「格納庫内63」+「飛行甲板上26」くらいまでは載せれば載せ得るのでしょう。
しかしながら、実際には飛行甲板上の露天繋止は艦爆8機くらいに抑えられていて、けれど、これを零戦に置き換えれば12機くらいは露天繋止で載るのじゃないかな? というのが、「昭和17年4月18日中型空母以上零戦搭載余力」という表に書かれていることのはずです。
飛行甲板が今のままでも艦戦艦攻とりまぜて26機は載るところに、艦戦だけ12機程度を載せる、という話なのです。特段、幅を増やすことまで考える必要はないのではないでしょうか。
片
- >10
>飛龍の場合で考えるなら、「格納庫内63」+「飛行甲板上26」くらいまでは載せれば載せ得るのでしょう。
http://www.warbirds.jp/truth/ijn_cv.htmlの常識その2の表をみると、飛龍/蒼龍のところでは、艦戦18+2、艦爆16+3、艦攻18+1に加え、露天繋止が艦爆11となっており、合計で63+6機で運用されているとあります。
これは、詰め込めば格納庫内に63+6機が入ったが、実際の運用上では艦爆11機を露天繋止にしていたと読むべきでしょうか?
それとも新型機になり大型化したため、格納庫内には52+6機しか積めず、残りは露天繋止前提で積んで、定数を満たしていたと解釈すべきでしょうか?
そのあたりの判断が付きません。ぜひご教授ください。
PAN
- >11
例えば真珠湾攻撃で赤城は艦爆18機を飛ばしています。
「昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査」に照らすなら、格納庫内艦爆9だけではこれには足らず、甲板上艦爆9を足した数であると考えなくてはなりません。
同じときの飛龍の艦爆も、格納庫内艦爆16よりも多い18機が飛んでいます。
そもそもでいうならば「昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査」は実態の調査なのであって、正規には「昭和16年度後期以降空母搭載機数標準案」の数が定数というべきものです。
飛龍の場合、
艦戦 搭載機数標準案12+3 → 格納状況調査18+2
艦爆 搭載機数標準案27+3 → 格納状況調査27+3
艦攻 搭載機数標準案18+1 → 格納状況調査18+1
と、零戦を6機多く載せようとしたためやりくりする計算であったことがわかります。
片
- >12 片様
ご回答ありがとうございます。
「昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査」はあくまでも現場運用を調査したデータだということですね。
日本海軍の中型以上の空母の場合、任務によっては露天繋止を併用して多めに搭載することはあったものの、基本は定数(格納庫内に格納可能な数)と考えてかまわないということでいいようですね。
元々の質問は
1>格納内には最大で何機程度搭載できるのでしょうか。
2>また、格納庫に最大限搭載したうえでの甲板上搭載余力を含めた最大搭載機数はどの程度なのでしょうか。
の2点でした。
1の方は、零戦/九九艦爆/九七艦攻のトリオの場合、補用機を減らすことで、常用機数は元の定数を確保しているということ。
また2の方は中型以上の空母の場合、短期的には露天繋止で10機程度増やした編成の運用が可能、というのが、質問者さんへの回答でしょうか?
PAN
- 元質問への答としては、>3で過不足なく十分、ということでよいのではないでしょうか。
片
- といいますのは、ひとつには「短期的には露天繋止で10機程度増やした編成の運用が可能」というのは、日本の空母飛行隊は作戦航海の都度、陸上基地にいた飛行機隊を収容搭載し、航海終了後にはまた基地に戻していたわけであり、常に短期的にしか搭載しないのが常態であったからなのですが。
片
- 考え方がちょっと違いますね。
昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査 で述べられているのは蒼龍、飛龍に零戦1隊半(12機+6機)、艦爆1隊半(18機+9機)、艦攻1隊(18機)を積むという計画で、それを実施すると艦爆11機を飛行甲板上に繋止することになる、という内容です。
すなわち、11機というのは飛行甲板上の繋止機数の限界を意味していません。
飛行甲板上に何機繋止するかは片さんがおっしゃる通り、配列先頭機が発艦できる範囲から、まったく繋止機を置かない場合までの運用の難易が機数に応じて段々と変わる、というだけのことです。
そしてみなさんが定数という言葉で表している搭載機種と機数は母艦の搭載能力とにらみ合わせてはいますが、何を何隊(機種により単位が異なり、時期でも異なります)という形で定められますから、格納庫事情から導き出された数字という訳でもないのです。
「うちの艦は何機格納できる」といった各艦長からの報告を元に編制上の都合から何機種を何隊積む、と計画しているということです。
そして格納庫の収容機数は表の通りです。
BUN
- >BUN様
わざわざのご降臨、ありがとうございます。
ご説明により、これまで自分がどこを勘違いしていたのか、よくわかりました。
そこで質問というか確認ですが、赤城や加賀、飛龍、蒼龍などの大戦前に設計運用された空母では、建造もしくは改装当初、九六艦戦、九六艦爆、九七艦攻の時代には、全機を格納庫に収容することが可能であったということでいいでしょうか?
また新型機(零戦、九九艦爆、九七艦攻)の時代になって機体の大型化に伴い、補用機を減らしただけでは収まらず、必要な機数を積むために露天繋止を行ったという解釈で間違いありませんか?
さらに質問者さんの疑問である「格納庫に最大限搭載したうえでの甲板上搭載余力を含めた最大搭載機数はどの程度なのでしょうか」の答えとしては、そこを突き詰めた公式データは存在しないということですね?
あえて割り出すなら、各空母の飛行甲板の大きさと搭載機が必要な滑走距離から余剰スペースを割り出し、そこに繋止可能な機数を導きだして、昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査にある格納庫収容機数に加えれば推測できるということでしょうか?
せっかくなのでご教授いただければ、スッキリいたします。
よろしくお願いいたします。
PAN
- 「機体の大型化に伴い、補用機を減らしただけでは収まらず、必要な機数を積むために露天繋止を行った」というのが余分なのではないでしょうか。
「昭和16年度後期以降空母搭載機数標準案」を見れば、九六・九七式当時から新搭載機になって補用機は減っていますが、別段その後補用機の数を元のように多くすることは行われていません。
また飛龍の例ですが、印度洋作戦では「戦14、爆17、攻19(いずれも補用機なし)」です。
必要に応じて多く載せることも出来るし、そんなに載せないときだってある。
元質問者の方が「混乱してしまった」とおっしゃるのも、色んな場合があるすぎるからだと思うのですが。
片
- 「昭和16年度後期以降空母搭載機数標準案」を初期設定とみなすとして、
それに対して、甲板上に艦爆を上げた「昭和16年度以降空母搭載機格納状況調査」の方が搭載機数が多い。
それよりも甲板上零戦搭載余力を織り込んだ「昭和17年4月18日中型空母以上零戦搭載余力」表の方がさらに搭載機数が多い。
単純に、数を多く載せたいから飛行甲板も使っているだけなのだと思いますよ。
片
- この「数を多く載せたい」というのは戦前からすでに存在していた傾向なのでして、例えば、戦前の戦時搭載標準に、
「格納庫に搭載不能の常用機は甲板繋止とす」
「搭載機は特記するものの他九六式艦戦、九六式艦爆(十一試艦爆)、九七式艦攻とす」
とあります。
零戦などの新型機に置換された結果ではないのです。
片