186  1845年4月3日おこなわれたスクリュー艦とパドル艦の綱引き競争で有名なHMSラトラーとHMSアレクトについてお伺い致します。
 両艦の公称馬力(nhp=nominal horsepower)はいずれも200馬力のようですが、両艦の蒸気機関の実際の出力、当時のいい方でいえば図示馬力(ihp=indicated horsepower)はどの程度だったのでしょうか。
 こちらの調べた範囲では以下の通りなのですが、ihpはほとんど一致していません。綱引き競争当時のihpがわかりましたらご教授願います。

幕末の蒸気船物語(本綱教道著)によれば、
ラトラー360図示馬力(200公称馬力) アレクト280図示馬力(200公称馬力)

The Story of the Paddle Steamer(Bernard Dumpleton著)によれば、
ラトラー300 ihp(200 nhp) アレクト141 ihp (200 nhp) 

A Short History of Naval and Marine Engineering 
によればラトラーは437ihp

http://www.bibliobase.com/history/readerscomp/ships/html/sh_075100_hmsrattler.htm
http://www.bibliobase.com/history/readerscomp/ships/html/sh_003200_hmsalecto.htm
によれば、ラトラー519ihp、アレクト280ihp

Warships of the world to 1900(Lincoln P. Paine著)によれば、
ラトラーは519ihp

また、これも綱引き競争をおこなった、HMSニガーとHMSバシリスクのihpおよびnhpがわかりましたらご教授下さい。
カンタニャック

  1. H.M.S."Niger"とH.M.S."Basilisk"の公称馬力は「Catalogue of Ship Models and Marine Engineering in the South Kensington Museum(South Kensington Museum著)」によれば、両艦とも400hp。
    H.M.S."Basilisk"の図示馬力は、ttp://www.pbenyon.plus.com/18-1900/B/00479.htmlによれば、1033hp。
    H.M.S."Niger"の図示馬力については、コチラの手札では不明です。



  2. 伸さん、ありがとうございます。
    Science Museumに模型があったんですか。恐竜とDifference Engine しか記憶にない。今度いったらゆっくり捜してみます。
    カンタニャック

  3. あ、「百年前にはあった」なのかあ。
    カンタニャック

  4. 公称馬力の算出法にも幾つかありますケド、英国で代表的なのは「気筒32サーキュラーインチ当たり1公称馬力」です(1サーキュラーインチは直径1インチの円の面積)
    ラットラーの機関は単式膨張シャム双生児型4気筒ですから、1気筒当たり50公称馬力=1600サーキュラーインチ、気筒直径40インチとなります
    つまりボア・ストロークが一定範囲内、かつ使用圧・回転数とも低めで一定していた発達初期の簡便的な能力指標に過ぎません
    一方の指示(図示)馬力は気筒内平均有効圧・ピストン面積・ピストン速度の関数ですんで、同一機関でも必ずしも一定しません
    ご提示の
    >ラトラー360図示馬力(200公称馬力) アレクト280図示馬力(200公称馬力)
    >ラトラー300 ihp(200 nhp) アレクト141 ihp (200 nhp) 
    などは指示馬力と公称馬力との換算式(これも数種類有り、それぞれ1.8倍、1.4倍、1.5倍、1/√2倍)によるモノと思われます
    また437ihpと519ihpは実際に指圧線図を採取したモノと思われますケド、
    綱引き当日に両艦の指圧線図を同時に採取したかは大いに疑問です
    駄レス国務長官

  5. >駄レス国務長官さん
     ihp自体が実際の計測ではなく概算法によるものである可能性があるというご指摘、ありがとうございます。大変勉強になります。

     本来質問者である私が書くのは変則ですが、私の鳥町に伸さんから下記の書籍の存在の指摘がございました(伸さんに感謝しつつ「こっちにも書いてね」と書いておこう)。

    http://books.google.co.jp/books?id=bfMOAAAAYAAJ&printsec=frontcover&dq=A+treatise+on+the+screw+propeller&source=bl&ots=CcGHAifjgl&sig=Q5foBE7B0lzsEfbUhNrpEgTH86M#v=onepage&q&f=true

     この本の114頁以下のラトラーとアレクトの比較競争の記事によれば、蒸気機関のみによる速度競争(First Trial)では、ラトラーの速度は9.2ノット、アレクトは8.8ノット、indicatorによる馬力はラトラー334.6馬力、アレクト281.2馬力となっています。
     綱引き競争(Ninth Trial)では、ラトラーのテスト時の実馬力(power actually exerted by engines of the “Rattler” during this trial)は299.8馬力、アレクトは140.7馬力となっています。
     300馬力と141馬力が、200馬力×1.5と200馬力×1/√2というのは極めて説得力があるのですが、この本を信頼するなら、実測値の299.8馬力と140.7馬力を四捨五入した、300馬力と141馬力が、たまたま1.5倍と1/√2という形式的な図示馬力の計算方法とほぼ完全に一致したと考えるべきかと思えます。
    カンタニャック


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