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日本製潜水艦映画「真夏のオリオン」を見てきました。疑問が2つあります。 その1 冒頭部分で、敵潜水艦から2本の魚雷が発射されました。ソナー員が「魚雷2本、、、まっすぐやってきます!! 距離○○○○(忘れました)!!!」と叫びます。すると士官がストップウォッチを押して、「本艦、到達まで40秒。」といいました。艦内には緊迫した空気が流れていました。(役者さんの表情から、わかります。) 結局、待避行動をして無事だったのですが、ここで、疑問。 到達まで、40秒もあれば、余裕で回避できると思うのですが。戦艦や空母ならともかく、小さな潜水艦なので、右でも左でも、さらに上でも下でも。 そんな考えは甘いですか。 その2 艦長が水雷長や機関長に対して、丁寧語を使っていました。これは、海軍のしきたりとかではなく、単に艦長個人の性格だと理解しておけばいいですね。 よろしくお願いします。 21/7/1 見習士官 |
- 「真夏のオリオン」は時代考証を無視した「擬似戦争映画」のようですので、ご質問のようなことは気にしない人でなければ楽しめません。
質問者さんがこの映画を機会に潜水艦について興味を持たれたのでしたら、
光人社NF文庫から出ている
「本当の潜水艦の戦い方」(著) 中村秀樹
「これが潜水艦だ」(著) 中村秀樹
「鉄の棺―最後の日本潜水艦」(著) 斎藤 寛
の3冊、及び絶版書ですが
「伊6潜サラトガ雷撃す 海底十一万浬」学研M文庫 (著)稲葉通宗
「海底十一万浬」朝日ソノラマ (著)稲葉通宗
※ 同じ本です。手に入りやすい方を入手してください。
などをお読み下さい。
「真夏のオリオン」がいかに荒唐無稽で時代考証を無視した作品かお分かりになるでしょう。
ベアベア
- 後者の「丁寧語」に関する質問に関しましては、
映画の広報サイトに「代表的な質問」として
企画・プロデューサー名での回答が掲載されています。
そこでは「映画でもそうですが、命令を下す場合は別」と答えつつ、
TVインタビューや映画作成上の乗員取材などを根拠に上げ、
「潜水艦部隊においては少し事情が違いました。」として、
「艦長及び士官が部下に対して丁寧語で話しかけていた」
手記などがあると回答しています。
他にも、髪型・服装・階級と年齢などについて、
一部考証資料「1944年の映画・轟沈など」付きで回答が載っていますので、
参照されてはどうでしょうか。
なお、映画上の演出なのか、証言などに基づく設定なのかを見分けるのが、
これら娯楽映画の視聴目的ではありませんから
(現行兵器に対する、情報部による他国宣伝映像の分析などでは無い)、
あくまで基本的には史実を舞台装置に借りたフィクションだと思って見る方が、
製作意図には沿う事になるでしょう。
Teru
- 丁寧語の問題はケースバイケースでいろいろなシチュエーションがあり得ると思われます。例えば海軍のパイロットの場合、若手の中隊長が老練な少尉に丁寧語で話すのはまれなことではないかもしれません。
質問者の「海軍のしきたりではなく艦長個人の性格」というのは当たっていると思います。
とおり
- 3人のみなさん、ありがとうございました。回答をヒントに検索等をしていきます。 21/7/7
見習士官
- この映画の致命的におかしな所は「帝国海軍の潜水艦にあり得ない人事」をしていることです。
伊号潜水艦の士官は
1) 艦長 (呂号潜水艦での艦長経験を経るのが通常) 兵科の中佐または少佐
2) 水雷長 (先任将校。潜水学校高等科を卒業していることを要する。伊号潜水艦の先任将校を経た後、呂号潜水艦長に進むのが通常) 兵科の大尉
3) 航海長 (この配置を経てから潜水学校高等科に進む) 兵科の中尉または大尉
4) 砲術長 兼 通信長 (兵科将校の最初の配置) 兵科の中尉または少尉
5) 機関長 機関科の大尉
6) 機関長付 機関科の中尉または少尉
7) 軍医長 軍医大尉または軍医中尉
このうち、最年長であるのは通常なら艦長です。伊号潜水艦の艦長になる資格を持つのは
「伊号潜水艦の先任将校、呂号潜水艦の艦長を経た兵科の中佐または少佐」
ですから自然にそうなります。
なお、潜水艦乗組士官は、兵科・機関科とも現役将校が当てられます。
(高等商船学校卒業の予備士官から現役士官に任用された者を含むが、兵学校・機関学校を卒業した者と年齢はほぼ同じ)
また、水雷長はどの潜水艦でも「艦長の次に先任の兵科将校」が補任され、自動的に先任将校となりました。潜水艦の先任将校は潜航指揮官であり、艦内のことを一手に引き受けます。
ところが、くだんの「真夏のオリオン」では、
艦長:兵科の少佐
は良いとして、
水雷長:特務士官たる兵科の大尉
航海長:同上
砲術長 兼 通信長:(空席?)
機関長;特務士官たる機関科の大尉
機関長付:(空席?)
軍医長:軍医中尉
となっており、何故か
「艦長より年長の、特務士官たる大尉が水雷長・航海長・機関長に補されている」
という無茶苦茶なことになっています。
この状況ですと、兵科将校は艦長だけとなりますし、特務士官たる海軍大尉は潜水学校高等科に入れませんので「先任将校不在」となります。
もちろん、このような潜水艦は帝国海軍には存在しませんでした。
このような無茶苦茶な設定の結果「艦長が年長の部下に丁寧語を使う」という無茶苦茶なシチュエーションが生じるわけです。
「矛盾が矛盾を呼ぶ」ということでしょうか。
ベアベア