48  いつもお世話になっております。

 「艦長たちの太平洋戦争」15ページにて、戦艦「扶桑」艦長鶴岡信道少将が、「扶桑の舷側装甲は30.5センチもありましたから、魚雷に関する恐怖感はありませんでしたね。ところが水平甲板は薄かった。上甲板は34ミリ、下甲板は30ミリの防御甲板を張っただけでしたから(中略)250キロ爆弾に対しては無力でしたね」と証言する場面があります。

1)舷側装甲が厚いと、魚雷を防げることがあるのでしょうか

2)改装前の扶桑型は「日本の戦艦パーフェクトガイド」では、水平装甲28.575ミリ〜63.5ミリ、改装後は82.55〜152.4ミリとされています。34+30で64ミリとはどうも改装前の値のようですが、このインタビュー対象は、14ページの戦闘運転で26ノットという証言もあり、改装後のようです。
 仮にも艦長職にある将官が、乗艦の要目を知らされていないということは、あり得るのでしょうか(栗田長官が大和の主砲口径を知らなかった、などという証言もあるようですし)。戦闘指揮に影響すると思うのですが。

3)2枚合計64ミリでも250キロ爆弾には無力なのでしょうか。日本海軍は500キロ通常爆弾での急降下爆撃に70ミリ装甲で耐えられると実験で把握し、米海軍も38ミリで225キロ爆弾が防げるとしていたようです。普通に考えると、上甲板を貫通したあと、防御甲板で止まるような(その間の区画はぐしゃですが)。

 鶴岡少将の証言や著者の佐藤和正氏を疑う意図ではありませんが、どの程度妥当性がある記述なのかを、知りたいと思い、質問させて頂きました。

 ご多忙のところ、お手数をおかけ致しますが、よろしくお願い致します。
高村 駿明

  1. (1)ビスマルクの例が示す様に、厚い舷側装甲に直接当たった魚雷が艦側に殆ど被害をもたらさないことは充分にあり得ることです。
    (2)若い時に見た改装前の「扶桑」のデータを思い出したとか、改装後でも主要区画外の数値を覚えていたとか、単なる記憶違いとか色々考えられますので、これだけでは何とも言えないでしょう。
    (3)30mm+34mmは一枚板換算で50mm前後の装甲厚になります。シャルンホルストが227s通常爆弾の水平爆撃で50mm厚の最上甲板を貫徹され、主装甲甲板(80mm)まで達した後に炸裂した例もありますから、「無力」と考えられるのも無理も無い面はある様に思います。
    大塚好古

  2. (1)追記。真珠湾攻撃の際、ウェストバージニアには米側曰く魚雷七本が命中していますが、うち六本が「過潜航走魚雷」で水線装甲帯に命中したため、これらの魚雷は艦に大きな被害を与えなかった、と損害調査報告にあります。
    大塚好古

  3. ↑修正。「過潜航走魚雷」→「過浅航走魚雷」でした。
    大塚好古

  4.  大塚先生、ウェストバージニアも含めて、どうもありがとうございます。
     私も装甲は記憶違いだと思うのですが、フッドの行動が示す通り、戦闘指揮に影響を与えることであり、こうしたことで影響があった例もあったのだろうな、と考えさせられました(軍事に限ったことではありませんが)。
    高村 駿明


Back