1689 紫電について、特に空戦能力の評価についてお聞きします。
過去ログやネットでは探してみたつもりです。
比島での実戦もありながら、脚の弱さばかりが言われています。
当時の基準で正常な状態の紫電は、言われるようにF6Fに手も足も出ないのでしょうか。
不具合が多いまま外地に投入されたの三式戦も同じと思いますが、紫電が活躍したという話があまりにも見当たりませんので。

発動機が同じで紫電改に、そんなに劣る戦闘機なのでしょうか。
よろしくお願いします。
4式射撃装置

  1. 対F6Fの戦いで「手も足も出ない」との表現はそれほど大袈裟ではありません。
    有利な態勢から格闘戦を避けた戦いをしない限り、勝負にはならなかったでしょう。
    BUN

  2. 紫電は比島戦末期に紫電改と同じベルト式給弾方式となった一一乙型が投入されていますが、この型式は空力的にきわめて有害だった機銃ポッドを廃止したために速度では紫電改に匹敵したと考えられるので、何とも惜しい気持ちになりますが、逆に考えて、大して高速になる訳でもないのに大改造を実施した紫電改はなぜ造られたのかが見えて来ます。それだけ大きな欠陥のある飛行機だったということです。

    紫電一一乙型の生産は当初の計画には無く、この型式は切迫する次期航空決戦に向けて紫電を一機でも多く送り出すことを目的に飛行性能上の欠陥に目をつぶって生産された代用の紫電改です。


    BUN

  3. BUNさま、お答えありがとうございました。
    1.については涙が出そうなお答えです。「格闘戦を避けた戦いをしない限り」!! これにはビックリしました。雷電じゃあるまいしとも思いました。
    不遇な期待の新鋭機という刷り込みがある小生には、インパクトカノンを喰らった感じです。
    2.でより詳しくお答えいただきましたが、無事離陸して発動機も好調な紫電がそんなに欠陥があるとは。
    自動空戦フラップは正常に動作しての評価なのでしょうか。実戦の紫電では問題なしとも取れるような記述もありますが。

    素人にわかりやすい評価として教えていただければと思いますが、
    比島戦の時点で、零戦五二型でグラマンと戦った方が取り組みやすかったのでしょうか。よろしくお願いします。
    4式射撃装置

  4. 台湾沖航空戦ノ経過及ビ概要所見 昭和19年11月4日

    「紫電」ニ対する所見
    性能極メテ優秀(F4F・F4Uニ対シ)
    格闘戦有利
    長期ノ格闘戦不利
    防弾ガラス・・・13粍貫通セズ
    翼タンクノ防弾モ有効
    侵攻用モヨシ

    だそうです。
    零戦52型よりは紫電の方がマシだと思います。


  5. 紫電については最近、紫電改の取扱い説明書が復刻出版されています。
    これに操縦参考書の復刻版も付属しているのですが、
    そこには1編を割いて紫電の持つ欠陥が紫電改でどれだけ改善されたかが説明されています。
    迎え角を大きく取ると失速して水平スピンに入る悪癖が紫電という戦闘機の運用をどれだけ制限していたかが解るでしょう。
    そして紫電改とは高性能化を狙ったのではなく、まさにその悪癖を改善するために典型的な不意自転対策の手法を盛り込んで改設計されたのです。
    九九艦爆から明星、二式戦から四式戦、と不意自転対策で改設計された機体と、紫電から紫電改への改設計はほとんど同じ手法を用いたものです。
    けれども昭和19年の半ばは紫電の量産がようやく軌道に乗りかけた時期ですから、これを計画通りに紫電改に切り換えると昭和19年度後半の量産が大きく妨げられるので、8月から予定されていた紫電改の量産開始を遅らせて、機銃兵装と速度だけは紫電改並みの紫電一一乙型が生産されたという事情があります。
    ですから
    4で挙げられたような報告はこうした当時、自明のことだった欠陥を踏まえた上で読まなければならないものです。
    格闘戦有利とは上昇力が向上しているからだな、
    長期の格闘戦不利と特記されているのは何故なんだろう、
    と考えながら読んで行くと面白いでしょう。

    BUN

  6. 豚さま、一次資料での評価を教えていただきありがとうございます。
    すごく新鋭機ががんばっていると思えるのですが、零戦よりマシという考え方もあるかもしれませんね。
    それでも「性能極めて優秀」にはワクワクします。なのに、なぜ紫電改ばかりがと。
    BUNさま、重ねてのお答えありがとうございます。
    紫電改は高性能化でなくて安定化を狙ったものだったんですね。脚の弱さはよく言われますが、それがちゃんと動いたとしても潜在する欠点が多過ぎたのでしょうか。
    長期の格闘戦不利と特記⇒ 上昇力が向上している、ということは常に位置エネルギーを味方にできますね。それが格闘戦有利の要素でしょうか。
    それが長期は不利というのは、まさか燃料切れじゃありますまいから、格闘戦を続けているうちに、不意自転を起こしかけるのを押さえる場面が生じて、無駄な機の動きを要するかと思いました。

    ところで、元になった強風も不意自転があるのでしょうか。ほとんど戦果もありませんが。
    4式射撃装置

  7. 興味がおありでしたら世傑の入手をお勧めします。

    紫電改の改良点は軽量化や部品点数削減などもあります。

    丸メカも参照しましたが、強風は不意自転の傾向は見当たりませんね。
    不意自転/翼端失速は単葉戦闘機とは切っても切れない関係なので皆無とは思いませんが、おそらく出力と重量がまだ小さい・フロートがついてる関係で不意自転はあまり顕著にならなかったのだと思います。
    超音速

  8. 超音速様 ありがとうございます。
    そうそう軽量化もなされていましたね。これは効きそうです。

    強風のこと。二式水戦もありますが、零観で済ませておけばよかったんではないかと愚考します。
    その設計陣がもったいないです。

    紫電の活躍の一端が分かっただけでもありがたかったです。

    4式射撃装置

  9. 強風に不意自転傾向が無ければ、本来、それが不要であることがメリットだった円断面胴体に中翼形式で取り付けられた主翼の付け根にあの巨大なフィレットが追加される訳が無いですよね。
    強風も十二試二座水偵や瑞雲と同じように深刻な不意自転傾向に悩まされた機体の一つです。
    BUN

  10. それから強風、紫電、紫電改については今月(2021年12月)発売の「丸」に別冊として「戦闘機紫電改と三四三空」が付録で付いていますので、そちらを読んで戴けると解って頂けると思います。
    BUN

  11. 加えて紫電から紫電改への改設計に当たって、菊原技師は脚の短縮などの効果で自重を約100kg減少できた、と述べています。100kgとは本当に脚の短縮と引込機構の単純化で稼ぎ出したものが大半といえるでしょう。この100kgという数値は海軍の性能要目表よりも小さな数値ですが、機体設計者がこれだけ軽量化した、と語る「100kg」は重要です。やっぱり劇的に軽くなったりはしないんだな、ということです。
    BUN

  12. BUN様、いろいろありがとうございます。
    不意自転のこと意外でした。日本機は、そういう場合も手を離せば元に戻るという感じを持っていました。
    また教えてください。
    今年がよい年になりますように。
    4式射撃装置


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