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零戦三二型の生産が17年末に始まっていますが、 なぜ三二型の主翼ではなく二一型と同じ長い主翼なのでしょうか。 二二型はガダルカナル航空戦での三二型の滞空時間問題のため 急遽開発されたという事ですが、 それなら三二型の生産ラインを活かして外翼にタンク増設 する方が早く生産に入れる気がします。 改良による重量増加が理由かとも考えましたが、、 二二型の生産開始後数カ月で五二型に切り替わるのであれば それが理由ではないとも思えます。 翼面荷重を減らすのであれば、 より大重量の五二丙型や六二型こそ広い主翼が必要だと思います。 ヘイミー |
- 零戦二二型が計画された直接の原因はガダルカナル島航空戦に三二型が参加できなかった「二号零戦問題」にあります。この問題の暫定解決型が二二型です。
翼内増槽装備による重量増加で翼面荷重の増大を避けるために翼端折畳部を復活させた理由もガ島航空戦が絡みます。
ラバウル、ガ島間は落下増槽内の燃料で巡航すれば到達できますが、空戦、帰還用の燃料は機内搭載燃料だけを利用するため、ガ島上空に達した段階で増槽を投棄すると機内燃料満載の重く鈍重な状態で空戦に入ることになります。これはいかに軽快な零戦であっても不利な状況です。
機内燃料満載で空戦に入る不利を少しでも挽回するために翼端折畳部は復活しているので、ラバウル、ガ島間に中間基地が確立されてから生産に入った零戦五二型とは事情が異なります。
また、零戦二二型は非公式に「二二型改」(内令兵にある「五二型の旧名称」とは別です。)と呼ばれていますが「改」のつかない「二二型」とはA6M3の初期の切り落とし翼端ではなかった時期の機体を指しています。量産された二二型はこのA6M3初期生産機が持っていた、空力特性がよく把握されている主翼に暫定的に戻した機体なのです。
切り落とし翼端に翼内増槽を装備した改造機が造られているにも拘らず、翼端折畳部を復活させた機体が二二型として量産に入ったのはこうした事情です。
翼内増槽装備機は切り落とし翼端と翼端折畳部を復活させた二つの主翼を比較検討して仕様を決定しているのです。
また、この時期の零戦は流れ作業で生産されていませんので「生産ライン」といったものはありません。
戦闘機の要目を比較するときは、要目表にある数字を比べるだけでなく、その戦闘機がどう使われる構想だったのかを確かめて行くと理解が深まることと思います。
BUN
- ありがとうございます。
重量増加は離着陸の悪影響で考えていました。
落下タンクを落としたての状態は、機内燃料がまるまる残っているから、確かに飛行性能が悪化しそうです。
三二型と二二型が同じA6M3なのはどちらも12m翼が出発点だからで、
一時11m翼にしてみたものの角形翼端に空力問題を残し、翼内増槽追加にあわせて、手慣れた12m翼に復活。
次のA6M5で翼端を丸く整形して空力課題を解決、改めて11mに主翼を短縮したという事でしょうか。
ヘイミー
- 翼端は切り落としタイプから零戦五二型タイプへとすぐに変更されるはずでした。二号零戦問題が巻き起こった昭和十七年九月には既に承認図が出る段階になっていたのです。これが遅れたのは二二型を12m幅の折畳翼端としたからで、零戦五二型のようなA6M3はもっと早く登場するはずだったんです。
12m幅の主翼は「手慣れた」のではなくて、まだ実機で飛行実験の済んでいない五二型タイプの主翼よりも空力的にデータが揃っていたということです。
それから「落下タンク」は陸軍のタンクの呼称です。
海軍では使いません。
BUN
- ありがとうございます。落下タンクも勉強になりました。
ヘイミー