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フィクションで申し訳ございませんが、百田尚樹氏の「永遠の0」の第二章で:「艦首に一番近い制止策に引っかけて制動板ぎりぎりに飛行機をとめました。これは理想的な着艦でした。」との文章がありますが、このような事実はあったのでしょうか? かなり時代が下がりますが、米国海軍の艦上ジェット機に着艦事故が頻発したために、Naval Aviation News 1952年2月号の13ページ(Naval History & Heritage Commandのサイトで読めます)に、:「IT NEVER PAYS TO LAND A PLANE LONG」との記事が載っており、バリヤーに突っ込んだパンサーの悲惨な写真が多く示されておりました。 しかし逆に考えると、もしかしたら米海軍でも、レシプロ機の時代には、「遠点着陸」が意図的に容易に可能なパイロットに一目置かれていたために、わざわざこのような記事を掲載して、警鐘をならしたのかとも思ってしまいます。 もちろん、レシプロ機でもジェット機でも、「近点着陸」には「ランプ・ストライク」などの危険が伴いますので、良いことは(今のアングルド・デッキの空母でも)なにもないとされていますが、直線式飛行甲板の時代のレシプロ機では、日英米海軍の艦上航空機運用において、真ん中よりも艦首に近い「遠点着陸」に価値が認められたことがあったのでしょうか? どこの国でも、遠点着陸を理想的な着艦と規定した「用法」は無かったと思いますが、本当に故意に「艦首に一番近い制止策に引っかけて制動板ぎりぎりに飛行機をとめました。」着艦を容易に行うことができるパイロットが賞賛されていたのでしょうか?近いよりは遠い方が、少しは安全だとは思いますが、何卒宜しくご教授の程お願い申し上げます。 本来なら、百田尚樹氏ご本人に出典をお伺いするのがスジだと思いますが、なにせ著者は海軍航空には素人だとの立場のフィクション作家ですので、著作のコンテンツの出典を明らかにしろと詰問される責任はないと考えますので、こちらでお伺いした次第です。 豪腕少年タイフーン |
- 以前に艦上戦闘機の操縦者だった方に聞いた話ですが、
・一番手前に引っ掛けるとズルズルと制動距離が伸びてしまって宜しくない
・逆に艦首側に近づけば近づくほど急制動が掛かるのでこれまた宜しくない
・おおむね艦尾側から3〜4番目が理想的
とのことでした。
制動策の位置によって張力が違ったと仰っておられました。
薩摩
- まずそれはないでしょう。
着艦指揮灯を見ながら進入すれば、飛行甲板に書かれた白円のところで着艦するように誘導されますから。
また、着艦制動索をキャッチできず進んでいけば、中央エレベーター後方及び艦橋前にある滑走制止装置(クラッシュバリアー)が自動的に起き上がり、強制的に着艦機を制止しますので、それ以上前で着艦制動索をキャッチする事は物理的に不可能でしょう。まぁ、滑走制止装置を作動させないように出来るのであれば、その限りではないでしょうが。
ちなみに、艦橋より前にある着艦制動索は逆着艦用と読んだ事があるのですが、その真相は不明ですが。
GO
- 瑞鳳に乗艦経験のある有名パイロットの戦記にある話です。
瑞鳳は制動索が4本あり、どれで止まるかで搭乗員同志で賭けをしたそうです。
一番後ろは艦尾から2mぐらいのところにあり、そこで止まった人はビールをただで飲めるそうです(結構きわどいため?)。一方、一番前の索に引っかけた人はビールを3本おごらねばならなかったそうです。
素人の私にはどちらにも解釈できる話なのですが、一番前で止まると急速収容の際に前部リフトまでの移動が短くて済むというのが良いのでしょうか。
とおり
- 多くのご回答を頂き、誠に有難うございました。
ちなみに米海軍空母の着艦事故で突き破ってしまうのは、バリヤーではなく、バリケードでした。恥ずかしながら、帝国海軍の空母の着艦時の安全装置が、米海軍の如くバリヤーと起倒式のバリケードの二重構造だったのかどうかすら、全く存じませんでした。何かで、バリケードに相当する装置がずっと張られていたと読んだ記憶があるのですが、機力による自動起倒式だったのか、人力により起倒させていたのかも、全く存じておりません。真面目に調べもしないで質問したことをお詫び申し上げます。また静止策→静止索でした。
当該小説には「艦首に一番近い索に引っかけてとめると、整備員が飛行機の移動をしやすく、時間をあけずに後続の飛行機の着艦ができるのです。」と記載されておりました。このことは、米英の空母でも同様だったと想像できますが、木と布の複葉機の時代ならともかく、千馬力以上の金属製の艦上機になっても、バリケードに突っ込む危険性よりも、急速収容を是とする風習があったとは、とても考えられません。エレベーターの能力で制限されるはずですので、前部の駐機位置までの移動時間など、バリケードの起倒の手間に比べれば、大した違いはなさそうだと想像しております。もう少し、帝国海軍の空母のメカニズムについて、勉強させていただきます。
もしも、詳しいサイトや文献などをご存じでしたら、ご教授いただければ幸いに存じます。何卒宜しくお願い申し上げます。
豪腕少年タイフーン
- 着艦作業時、飛行甲板は着艦エリアと駐機エリアに分けられます。
滑走制止装置(クラッシュバリアー)から前が駐機エリアになります。赤城では艦橋から前になります。
着艦した機体からエレベーターで格納庫へ下ろせば効率はいいでしょうが、着艦のペースに果たして間に合うかどうか。
真珠湾攻撃から帰ってきた攻撃隊の、着艦シーンの写真が何枚かありますが、上空から撮された赤城には、前から着艦機が並べられています。
軍艦メカニズム図鑑 日本の空母
歴史群像太平洋戦史シリーズ14空母機動部隊
歴史群像太平洋戦史シリーズ 航空母艦パーフェクトガイド
などはいかがでしょうか?
GO
- 「艦首に一番近い制動索」というのが、
・逆着艦用と思われる艦橋付近から前方、すなわち駐機エリア内のものである場合と、
・滑走制止装置より後方の着艦エリア内だけの中で、
と、二種類の考え方があってしまう、ということですね。
この辺は分けて考えた方が良いのかもしれません。
赤城なんかでも、艦首の横索は実際には張られていませんし。
片
- GOさま、片さま、レスをいただき、ありがとうございました。
軍艦メカニズム図鑑をやっとひっぱり出してきて、確認させていただきました。
1)まず、米海軍空母のように、着艦制動索引っかけ損ねた不良着艦機に対しての制止装置は、何組かの滑走制止索だけだったようで、米海軍空母のバリヤーに相当する制止装置は、他には無かったように理解しました。
2)帝国海軍の滑走制止装置は、すでに着艦した飛行機を前部の駐機位置に移動させるときには倒していたはずですが、着艦時にも、倒していたのか、常に上げていたのかは、明記されていなかったようです。米海軍空母では、LSOが、普段は倒されているバリケードを、不良着艦機に対して瞬時に起こす責任者ですが、帝国海軍の滑走制止索は、もしも機力による瞬間的に起動させるのならば、誰がその責任者なのか、はっきりしませんでした。着艦時には、あらかじめ全部の滑走制止索を立てていた可能性が高いように感じました。
3)多くの正規空母で、艦首直後の、前部エレベーターや制動索や遮風柵の前方にも、滑走制止索が装備されているようでした。この滑走制止索がいつ、どのような事態に使用されるのかは、全くわかりませんでした。これが米英の空母ならば、なにかトラブルを起こした飛行機を着艦させるために、まず飛行甲板をクリーンにして、その後に飛行甲板の全長をつかって着艦させるための設備かと思いますが、帝国海軍の空母の艦首直後の滑走制止索は、何のために装備されていたのか疑問が残りました。
4)帝国海軍の空母の特徴は、起倒式の遮風柵ですが、これは発艦作業中に、発艦を指揮する将校が管理していたのでしょうか?着艦作業中には、常に倒しておかないと、邪魔なだけのように思いました。
5)当該小説での艦首に一番近い着艦制動索とは、前部エレベーターや中央部の滑走制止索群より後部のものをさしていて、それより前部(逆着艦用?)の制動索とは無関係だと思っております。
豪腕少年タイフーン
- もう少し詳しく読んでみました。
2)最後に「急速収容の場合には…全部エレベーター後方の滑走制止索を着艦のつど、立てたり倒したりする。」と明記されておりました。不良着陸機が発生しないかぎり、1基しかないバリケードを倒しっぱなしにしておく米海軍空母よりも、着艦のたびに複数の滑走制止索群を立てたり倒したりしていた帝国海軍は、たとえそれが機力による作動であっても、米海軍空母方式よりも、急速収容に余分な時間がかかったのではと想像します。
1)多数の低いバリヤー群と、1基しかない機力により急速展開させるバリケードの二本立ての安全装置を装備していた米海軍。着艦時には、多数の常に展開しっぱなしの滑走制止索だけに頼っていた帝国海軍。比較すると考えさせられます。
3)米海軍方式のように、何もなければ常に倒したままにしておくバリケードと異なり、急速収容の際には、着陸のたびに展開したり、下したりしていた滑走制止索ですので、艦首直後にある滑走制止索は、既に着艦した飛行機の邪魔になるだけで、通常の着艦作業では、全く活躍することはできないことになります。さて、いつ、どのような状況で活躍するのでしょうか?
豪腕少年タイフーン
- 3)急速収容ではなく、着艦するたびに機体を前部エレベーターで格納庫に収容して、制動索の前がクリアーな状態なら、中央部の複数の滑走制止索を展開しておく必要はなく、もしも不良着陸ならば、艦首から落ちないように、艦首後部の滑走制止索を常に展開しておくだけで良いことになりますね。これでナゾが解けたと思います。しかしながら(1)雲竜や大鵬や信濃にも、艦首直後に滑走制止索が装備されていますが、そのころにそんな悠長な着艦作業をやっている余裕があったのでしょうか?(2)艦首直後に常に展開しておく滑走制止索を装備するようなすばらしいアイデアを持ちながら、そんなものをとっぱらって、そのまま艦首から再発艦させるボルターをどうして採用しなかったのでしょうか?前方が常にクリーンなら、わざわざアングルド・デッキなどは不必要になりますよね。
豪腕少年タイフーン
- 日本空母の着艦方式は昭和10年代前半に変化しています。
1機ずつ昇降機で格納庫へ下す方式から、飛行甲板前方へ着艦機を溜めるアメリカ式の着艦が行われるようになります。
そして、戦争後期には搭乗員の錬度低下から着艦収容区域を昇降機より前方まで広げるため、着艦時には昇降機を使用しなくなります。
つまり、「前方の制動索に引っ掛けるのは錬度の低い搭乗員」ということです。
また飛行甲板前方の制動索は飛行甲板損傷時に想定されていた逆着艦用ですので、実用に適さないために移設されたり、装備されなかったりします。
また赤城の第一横索は昇降機との位置関係から拘束鉤で掴みにくいために移設が命じられていますが、ミッドウェー海戦前にそれが実施されたかどうかはわかりません。
しかし問題視されていたのは事実ですからここに引っ掛けることが理想とされていたとはとても考えられません。
そして、着艦制止装置ですが、太平洋戦争時の空母では制止装置はあまり使用されません。
この制止装置は事実上、夜間着艦作業中に昇降機が下りた穴に飛行機が落ちないために用いられるのが主だったので、段々と使われなくなるのです。
BUN
- BUN御大までレスをいただき、真に恐縮致しております。
前半部分はよく納得でき、私の考えていたとおりだと存じます。
しかしながら「着艦制止装置ですが、太平洋戦争時の空母では制止装置はあまり使用されません。」以降は、よく理解できません。文字通り、もし着艦機がどの制動索も全部つかみ損ねてしまったら上に、滑走静止索も展開されていなかったのなら、そのまま前方に駐機している既に着艦を終わらせた飛行機の列に突っ込むしかなかったということでしょうか?
着艦フックを制動索に引っ掛け損ねた米海軍艦上機には、着艦事故防止のための二重の安全装置が護ってくれていましたが、太平洋戦争中の帝国海軍機は、着艦フックを制動索に引っ掛けるのに失敗するたびに、当該不良着艦機のみならず、既に着艦を済ませた列機を道ずれにした大着艦事故を毎回引き起こしていたのでしょうか?
素人にはとても信じられませんので、わかりやすくご解説を賜れば幸いに存じます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
豪腕少年タイフーン
- 母艦は高速で風上に進んでいますし着艦機にはブレーキもありますから。
第二次大戦中のレシプロ機は拘束鉤無しで着艦することもできます。
日本海軍でも赤城クラスの大型空母では複葉機時代には拘束鉤と制動装置を使わないで着艦しています。
着艦制動装置は無いとまったく着艦できないというわけではありません。
着艦制止装置のワイヤー壁がなくても良いのか、と感じるかもしれませんが、実際に「あれは普段は使っていないので不要である」という報告があるのです。
BUN
- BUNさま、何度もお返事を賜り、誠に有難うございます。
実際に一次資料に、滑走制止索を使っていなかっただけではなく、不要であるとの報告があるのなら、当時の帝国海軍の空母運用の責任者達がそう判断したのは間違いないと存じます。しかしながら、せっかく開発してわざわざ装備した着艦制止索を「不要」と判断したのか、その理由が知りたいです。
米海軍では、ほとんど使わずに倒しっぱなしになっているバリケードが故障していると、そのままでは着艦が許可されず、移動式クレーンで代用してまで事故防止に努めたのは、映画などでよく知られています。帝国海軍は、着艦時の安全性よりも、急速収容の時間短縮を重視したとしか思えません。
もしも、急速収容の時間短縮を最優先にしていたのなら、駐機位置への移動距離を少しでも短くするために、熟練パイロットには、遠点着陸を求めたとしても不思議ではないようにおもわれます。
ただ、急速収容するのにに滑走制止索をいちいち展開させておくと邪魔になって、収容速度が低下するのなら、米海軍のように、急速収容に邪魔にならない着艦制止装置を開発するのが定石で、邪魔だから普段から使わずに不要であるとするのは、邪道ではないかと考えます。
無線工学の技術力を発達させる代わりに、ろくに役に立たない機載無線機など「不要だ」と取り外してしまったのと、どこか似ているように感じました。
本当にあの時代に、テレフンケンやマルコーニーやコリンズの国々と同じ総力戦をよくやったものだと、あらためて考え込んでしまいました。
豪腕少年タイフーン
- 発動機が回っていれば自走できますから遠点も近点もないんです。
自分の感想をなぞるように理屈を組み立てて行くのはどうかと思いますよ。
BUN
- さて、みなさんが一顧だにもされない搭乗員の手記からです。
「艦橋横、すなわち飛行甲板の長さの三分の二前方の位置に、太いワイヤーを三本張ったバリケードが立っている。着艦機が六本のうちどれかの制止索にかかると、自動的にバリケードが倒れ、着艦機が素早くフックを外し前へ出て、バリケードを越えると、次の機がもう着艦間際の状態であり、バリケードが立つが早いか、着艦するのである。連続収容の場合は・・・(中略)・・このように各機十秒間隔で着艦収容できるので、二十数機収容するのもあっというまに終わってしまうのである。」
戦争後半の練度の低い頃の話ではなく、16年前半の蒼龍での話です。
とおり
- >15
昭和18年に損傷修理後の翔鶴で行われた着艦試験の写真が残っていますが、一枚は制動装置の横索を拘束鉤が捉える前、もう一枚は拘束鉤が制動装置の横索を捉えた後にシャッターが切られていますが、どちらも「着艦制止装置」は起きていません。
着艦実験なので後方から2本目の横索をつかんだ理想的な着艦ですが、それでも制止装置は起きていないのです。
BUN
- 蛇足ですが、5.の瑞鳳の制動装置の横索は「4本」ではなく第一から第七までの7本です。そして一番後ろの第七横索は艦尾から2mどころか、30m以上前方にあります。
BUN
- 昭和12年の蒼龍の着艦公試(九二艦攻使用)の写真でも、着艦制止装置は倒されたままですね。
公試だから艦首側に滞留機がいないからじゃないか、と言われてしまいそうですが、作戦中の赤城の写真でもやはり起きてません。
片
- >17
確かにそうですね。著者の「艦尾」は漠然とした概念なのかもしれないと思慮しました。とりあえず原文を尊重します。
>17,19
搭乗員の手記から推測しますが、訓練等にもいろいろな状況があるのでしょう。それこそ「用法」の引用が必要では?
とおり
- フィクションにもかかわらず、多くのレスを頂き、誠に有難うございます。
>14:BUNさま、私が4でカキコしたように、着艦した後は自走しようが、甲板作業員が移動しようが、少々の機体の離の差異は、滑走制止索の起倒に要する時間に比べれば、無視できる程度にしかならないと思います。所詮、素人の書いた処女作の小説にすぎず、公表してある参考資料も驚愕するほどではありませんので、笑って無視しても良かったのです。たまたま最近、私は朝鮮戦争の特に米英の海軍航空について調べておりましたので、まだコルセアが一番活躍していた時代に、遠点着陸が「NEVER PAYS」だとの公式な警告がなされておりました。ひょっとしたら米海軍にも、遠点着陸が何か「PAYS(利益を与える?)」とされていた可能性はないかとお尋ねした次第です。
翔鶴で行われた着艦試験は、飛行甲板をクリーンにして施行されたものと思いますが、艦首直後の滑走制止索は起こされていたのでしょうか?もしもその写真を拝見する方法をご教授頂ければ幸いに存じます。
米海軍空母でも、着艦試験の写真が数多く公表されております。バリケードは倒したままですので、もしも着艦フックを引っかけるのに失敗しても、飛行甲板前部がクリーンな状況では、バリヤーで止めるか、バリケードで確保するか、バリケードを倒したままでボルタ―をさせるかの、LSOには3段階の着艦事故防止方法が託されております。飛行甲板前部に多数の既着艦機が駐機していたとしても、バリヤーとバリケードの展開と、倒したままでのウェーブ・オフの3種類の安全策を持っております。
帝国海軍空母の艦首直後の滑走制止索は、飛行甲板がクリーンでも着陸復航の邪魔になるだけで、燃料切れなど特殊な場合しか役に立たないように思ってしまいます。私は日米で理系の研究職に長年携わっておりましたので、自分に都合の良い理屈を組み立てるのを厳しく戒められておりました。それよりも、想像もしない可能性を考えて、その適否を思考実験も含めて十分に吟味するように訓練されております。
いやしくも帝国海軍が、苦労して開発して制式化した滑走制止索を、なぜ「普段使っていないので不要である」とされたのか、全く理解できません。もし制式化後になにか不具合が生じたのなら、拘束鉤が制動索を捉える前から滑走制止索を起こしておかず、米海軍式に常に倒しておいて、着艦フックが制動索を捉えそこなって、かつクラッシュ・バリヤーも役に立たなかった場合にのみ、最後の安全装置として、瞬間的に起立する滑走制止索を開発しなかったのか、不思議で仕方がありません。
現在でも各国の空母パイロットにとって、CarQualは最大の関門になっております。帝国海軍の操縦員は、自機の拘束鉤とブレーキのみに頼って、既に着艦を済ませて揺れ動く飛行甲板前部に駐機している列機に向かって、ジャイロ安定もされていない着艦指導灯のみに頼って、何の安全装置もなく初着艦に臨んだのでしょうか?新人はもちろんのこと、いくら陸上基地でのベテラン操縦員だとしても、とんでもない勇気と技量だと感嘆せざるを得ません。
米海軍では、陸上基地での猛訓練にも関わらず、初着艦でのトラブルや毎回のCarQualに合格する困難さについての手記が目立ちますが、帝国海軍には、着艦時の重大事故すれすれの経験談や、LSOとのきわどいやり取りなど、米英の当事者の手記にくらべて、とても少ないように私は感じております。
帝国海軍の空母では、もしウェーブ・オフが必要とされても、緊急に機上の操縦員へ伝える手段がなければ、バリケードを起こさずに列機に突っ込んだとか、ウェーブ・オフを試みた際に起き上がったバリケードが邪魔をして事故になったとか等のトラブルは、起こりようがありませんよね。
制式化した滑走制止索を、なぜ「普段使っていないので不要である」とされたのか、ぜひ素人にもわかりやすく教えていただければ幸いです。機載は重量軽減のためにおろされたのは理解できますが、急速収容時間を短縮することと、ウェーブ・オフの邪魔になる以外に、なにか滑走制止索を展開しておくと生じる問題をご教授頂きたくお願い申し上げます。また、それを解決する努力がなされたのかどうかもご教授ください。
そもそも、拘束鉤と機上ブレーキで十分にことが足りるのなら、なぜわざわざ滑走制止索を開発して制式化して、全部の空母に装備したのかも教えていただければ幸いに存じます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
豪腕少年タイフーン
- ↑いっぱい誤字があって、ゴメンナサイ。
「離」→「移動距離」
「機載」→「機載のトランシーバー(無線電話機)」でした。
豪腕少年タイフーン
- 着艦制動装置と着艦制止装置とはペアで生まれたものではありません。
前者が後から生まれ、後者が先に考案されたものです。
そうした経緯を踏まえて、それらがセットで必須だったという先入観を捨てればその先を調べる気持ちになるんじゃないでしょうか。
BUN
- >20
まず、「艦首直後の滑走制止索」というものが、計画図に描かれているがゆえに最近の出版物での作図や模型の上で再現されているとしても、実際に装備されていたのかどうか調べて見られてはどうでしょうか。
多くの艦を対象に写真を精査しても、艦首側の制動索は飛行甲板上に基部だけは残されていても横索が張られていないことが発見できるはずであり、その付近の制止索に関してもその姿は見出せません。
何故か、ということはすでに書かれていることですが、艦横並びに装備を計画されていつつ、各艦横並びに使われなくなっているものがある、というひとつの例がそこに存在しています。
片
- 最後のセンテンスだけこちらで。
横索については何故か、ということはすでに書かれていることですが、各艦横並びに装備を計画されていつつ、各艦横並びに使われなくなっているものがある、という例がそこに存在しています。
片
- >豪腕少年タイフーンさん
あなたの疑問に関する質問にみなさんは親切に解答をなされてます。
自説にこだわり納得できないようならばそれに対する説を補完する資料を自身で見つけて反証することが良いかと思われますよ。
マルヤ
- あれ、レスが一つなくなっている。消えたレスに従って、この主題とは関係のない帝国海軍航空母艦の航空偽装について、別にスレッドを上げさせていただきました。なにとぞご容赦のほど、お願い申し上げます。
本スレッドの私の疑問は「海軍航空黎明期にも、本当に遠点着陸を是とした可能性はないのか?」だけです。私がアクセスできた資料では、すべて「少なくとも大戦後期には、遠点着陸を推奨するどころか、厳しく戒めている」です。
ただ、米海軍の公式サイトに「IT NEVER PAYS TO LAND A PLANE LONG」なる警鐘がなされたのかと、アレスティング・ワイヤーが4本の空母では、2本目ではなく、3本目のワイヤーをフックでとらえるのが理想とされていますので「わずかだが近いよりは遠い方が少しは安全かも」と気になった次第です。
今はもうアレスティング・ワイヤーも3本になりましたので、今は、真ん中に着艦するのが理想であると結論付けざるを得ないと考えております。
ひょっとして、海軍航空黎明期の各国での事情をご存知の方がおられましたら、ご教授いただきたく、お願い申し上げます。
豪腕少年タイフーン
- >本スレッドの私の疑問は「海軍航空黎明期にも、本当に遠点着陸を是とした可能性はないのか?」だけです。
あなた様のその疑問は、客観的に考えれば直ぐに解消されると思います。即ち、そのような可能性は無かったのです。多くのレス、特にレス「2」やレス「15」を熟読されることをお勧めいたします。あなた様の求めに応じてせっかく頂いたレスですので、appreciationは義務だと存じます。
着艦点は、空母に対するファイナルアプローチのパスの位置とフレアをかける位置できまります。パスの位置は、着艦誘導灯の位置で決まり、固定です。日本の海軍では、フレアをかけるタイミングを艦尾をかわった時としてました。「(一番前方の索への)遠点着陸を是」とすることは、「着艦誘導灯が示すパスを無視することを是」とすることです。遊びの場じゃないんですから、緊急時以外は、それは有り得ないと思います。母艦への着艦は難しい作業です。さらに、1歩間違えば機材と人命が無駄になりますから、よほど熟練した搭乗員でも一番前方のアレスティング・ワイヤーを引っ掛けるようなことは意図的にはしないと思います。(一番前方なら、パス自体をかなり前方に平行移動しないといけないでしょうし、フレアも高度の目測で行わないといけないでしょうし。)
掲記の本を読んではいないですが、「階級の表記に誤りがある」とコメントされているのをネットで読んだ事があります。まあ、完璧じゃ無いということでしょう。
一般的に「何本目のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けた」かは単なる付随的な結果であって、航空母艦のどの位置に着艦したかの方が大事だと思います。正規の着艦点に対してアレスティング・ワイヤーを前後に何本配置するかで、正規の着艦を行った場合の拘束ワイヤーが決まります。正規の着艦点を中心に前後に2本ずつ合計4本配置した場合は艦尾側から3本目(艦首から2本目)ということになるでしょう。その配置で最艦尾側がほとんど使われず、それを撤去して3本で運用するとなると、艦尾側から2本目(艦首から2本目)ということになるでしょう。(:米空母の記述に対して。)
ちょん太
- 映画を見てまいりましたが、当該シーンは変更されていて、真ん中(少し艦尾より?)にきれいに着艦したように変更されていました。滑走制止索が上がっていたように見えましたが、はっきり確認できませんでした。
かなりそうそうたるメンバーが監修しているようですので、百田氏の処女小説中の誤りを、映画の監修者が正したのだと思います。これで一件落着とさせていただきます。多数の貴重なご助言ご教授を賜り、誠に有難うございました。今後ともなにとぞ宜しくお願い申し上げます。
豪腕少年タイフーン
- ↑え〜と、つまり映画の監修者が正しいと確定したわけではなく、原作者の百田尚樹氏が、原作中のかなり重要な(読者に主人公が熟練した操縦員だと示唆)場面にも関わらず、誤りだと変更を受け入れた事に注目しただけです。百田氏自身も誤りだと認めた証拠だとするのは、あれだけのベストセラーにも関わらず、数多くの映画化のオファーを断ってきた原作者ですから、同意もなしには映画化できません。
豪腕少年タイフーン