327 三菱の金星系のカムについての質問です。
昭和10年頃に「各国の発動機について、その形式ならびに部品の最もすぐれたものを選び出し、これを統合した発動機」というコンセプトで作られた金星、その当時で2600〜2700rpmに耐えられるカムというのは優れたものであったと思います。

この昭和10年当時、3000rpmの高回転に耐える「量産が容易な」カムって、世界のどこにも例がなく、更に数年後に出現した高回転エンジンのカムは、当時の三菱の技術では量産不可能だった、ということなのでしょうか?
だとすれば、終戦までの約10年間、金星・火星・瑞星が2700rpm以上廻せず、故にピストンスピードの限界が低くなり、馬力向上の限度が結構低かった、ということも理解できる次第です。
猿人

  1.  栄や誉でやってるような手立ては、金星にレトロフィットすることが難しいなんてことは全くありません。
    SUDO

  2.  ちなみに、ちょっと調べるだけでも、パーシュースのように、金星以上に回ってる同時代以前の星型量産エンジンがあります。
     そして金星が回らないのは、直接的にはカムではなく、バルブスプリングとリターンスプリングに答えを求められるというか、当時の三菱が取りあえずの解決策として目をつけたのはそこらです。
     そしてバルブスプリングはわが国のバネ技術的にあれ以上の強化は難しいとして断念しましたが、リターンスプリングの追加はエンジンの外形が変わってしまうことで断念してます。
     言い換えれば、最初からリターンスプリングを備えるつもりでデザインすれば対処は可能ですし、外形(径)の変化を許容するならいつでも出来たことです。
     そしてカム形状の変更なんていつでもできることです。栄なんか21/31型後期で誉と同プロフィールのものに変えてます。つまり昭和10年の技術のカムを使い続けなくてはならない理由はありません。そして栄というか中島発動機でやったようなカムプロフィールを三菱が後追いで行えない理由もとくには無いはずです。
     もちろんカムプロフィールを変えたからと言って回転数上限が引きあがるかどうかは不明瞭ですし、元々ストロークの大きい火星なんか、もとよりピストン速度は高いのですから、回転数上限が引きあがったかどうかはわかりません。瑞星なら回転数は大幅に引き上げられたでしょうけど。
     またスプリングの絶対的な強さが上げられずとも、共振周波数を変えることでも対処できる場合も有りますから、この場合は日本でも物理的には難しい話ではないでしょう(解析して適切な結果を導くのは難しいと思いますが)
     また場合によってはバルブの大きさや形状、材質の変更等でも対処は出来ますし、それらが三菱で出来ないという理由もとくにはないでしょう(軽くするだけなら簡単です。小さくすれば良いんですから。ただし出力稼げなければ無意味ですが)

     そして、瑞星を別にすれば、三菱の発動機のピストン速度は大戦中盤時までは普通の数字で特別に劣るものでは有りません。
     回転数の上限を物理的に引っ張り上げたところで、燃焼が上手く行かなければ出力にはならないわけですから、高オクタン燃料の使用等が視野に入るまでは、金星系の回転数上限は発動機出力を縛ってなかったのです。
     つまり昭和12〜14年ごろの三菱で色々弄って意味があるものは瑞星だけなんです。
     仮に零戦の発動機が瑞星になってたら、三菱も開発リソースを投じたかもしれませんし、その場合は高回転化への各種処置も行われたかもしれません。しかし、瑞星の出力強化は金星や栄に換装という形で行われてしまったので、わざわざ高回転化への努力をする必然が無かったことが、高回転化させられなかった最大の理由ではないでしょうか。
    SUDO


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