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5086 九七戦は隼が充分配備された段階で、軽戦に格下げ(もしくは区分)されたのでしょうが、隼のほうはいつごろ軽戦に区分されたと考えればいいのでしょうか。軽火力だったので初めから軽戦と区分すべきか、終戦まで主力だったので、結局うやむやになったのでしょうか。
K.M

  1. 九七戦は軍需審議会で採否を審議された時点で、最新の兵器研究方針に照らして採用が決められており、九七戦の仮制式制定時には兵器研究方針にある軽戦闘機(の初期構想)として合格であるという文書が添えられています。旧方針下で試作された機体が新方針によって審議されているということですが、このあたりが当時の陸軍の兵器研究方針と海軍の性能標準との運用の違いです。九七戦と隼は同じ兵器研究方針の下で、一方は審議され、一方は要求性能が決定されていますから、どちらも初期の軽戦闘機の概念を体現した存在なのです。
    BUN

  2. 九七戦は、小翼面積の第一案と大翼面積の第二案が比較検討されたり、13ミリ砲装備、対機関砲耐弾能力についての照会が参本から来ていたり、採用前には重戦化の模索も行われています。
    ある意味なし崩し的に大翼面積型で制式化された理由が日中戦争勃発の影響による急速整備の必要性だったことを、航空本部自身があげています。


  3. 隼は陸軍上層部のイメージしていた、その後開発されるはずの高速重武装の万能戦闘機の補助的役割を担う戦闘機として開発されていたことになりますね。キー44は高速重武装のソ連戦闘機に対抗すべく、ヨーロッパ基準で開発された特別な戦闘機(高翼面荷重、高速、重武装の)と理解しているので、主力戦闘機としては疾風と同じ程度のエンジン性能の長距離侵攻できる戦闘機をイメージしていたのですね。
    K.M

  4. 重戦闘機の航続力が大きな数値で要求されるようになるのは、キ44開発着手よりも後の時点のことです。後から現れた基準から逆算してキ44の開発意図を量ろうとすると、ちょっとズレるかもしれません。


  5. キ43、キ44が計画された頃の兵器研究方針にある銃装備の戦闘機と砲装備の戦闘機がそのまま両者の試作に繋がるのですが、ここで言う砲装備とは対爆撃機用の重武装の他に戦闘機の高速化に伴う遠距離射撃への対応というもうひとつの理由がありますから重武装の砲装備戦闘機が高速機であるのは特別なことではなく、むしろ当然の結果でもあります。またキ44は燃料搭載量が零戦とほぼ同等で、搭載量相応の航続力を持つ機体であることも忘れてはならないでしょう。
    BUN

  6. すみませんでした。開発を採用と書くべきでしたね。キ44も重戦として開発されていたのでしょうが、米英との戦争が現実味をおびてきた時点で、長い本土と広大な支配地域をカバーするためには航続力も重要なファクターになり、タイムラグがあったことは認めます。ただ、このサイトでは重戦の定義が高速,強火力の主力戦闘機とされているので、キ44については特別に採用されたと私が思い込んでいるだけで公式にはどんな扱いなのかはわかりません。
    K.M

  7. 「このサイト」などではなく、何よりも「陸軍がどのように定義していたか」が大事です。
    その定義そのものである「陸軍航空兵器研究方針」は、学研「日本陸軍軍用機パーフェクトガイド」に採録されていますので、まずそこから攻めて見られてはいかがでしょうか。


  8. >6
    残念ながら戦闘機の航続距離延伸は対米戦争とは無関係です。
    支那事変勃発以来、現場、中央を問わず盛んに要求が出されているからです。
    兵器研究方針が改正を重ねるたびに戦闘機の航続距離が伸びて行くのは対米戦の準備ではなくて支那事変の戦訓を反映してのことなのです。
    「このサイトでは」という物言いもどうかと思いますが、その前に安価で容易に原文が読める資料はできるだけ読んでおいた方が後々きっと役に立つと思います。

    BUN

  9. 重戦,軽戦という言葉の誤用が我慢できないのはよくわかりました。ただ1960年代に航空情報を見ていた私のような人間は、重戦の代表的な戦闘機としてBf109やI−16であるというふうに刷り込まれているので、当時、健在でおられた土井技師などが(設計者の方々は私にとってはヒーローなのです。)飛燕は中戦として設計したという表現もすんなり言葉どうりに受け取っています。実質的にはキ44とキ60にしかあてはめてはいけない重戦という言葉とバッティングしないなにかいい表現言葉はないものでしょうか。
    K.M

  10. >9
     そりゃ砲搭載の高性能主力戦闘機であるBf109やI-16が、日本的に分類すれば重戦闘機に相当するものになるのは当然かと、何も間違いではないでしょう。
     日本で言うところの重戦闘機の定義を理解して用いるならば、それはそれで良いのではないかと。
    SUDO

  11. 重単座戦闘機と軽単座戦闘機という用語を生み出した陸軍がそれぞれの定義を明確に述べて、年度を追うごとにその概念をより具体的に示すようになっている、という事実があるのみです。
    Bf109を重戦闘機と見ていたのは本当のことですし、スピットファイアも重戦です。「キ44とキ60のにしか当て嵌めてはいけない」等という事はなく、重戦闘機として発注された機体は全て重戦闘機なのです。ある特徴を備えた(と思い込まれている)機体が重戦闘機ではなく、重戦闘機として試作された機体が重戦闘機であり、その定義は各機に該当する兵器研究方針にある、という大変単純な話なのです。

    また、土井武夫氏が用いた「中戦」という言葉も土井氏が考案したものではないかもしれません。恐らく開戦前の航技研あたりで既に生まれていた用語ではないかと考えられるのです。このように正しい事もあれば曖昧であったり過剰であったりもするのが回想というもので、戦後という時代まで考えに入れながら眺める必要もあるように思います。

    「キ44とキ60」との御説の中で最後の重戦闘機キ84が抜けていますが、この機体については公文書の他にも「キ44IIIをキ84とす」(この機体が紛れも無い重戦闘機であるということ)とした木村昇少佐のメモが残っています。土井氏の回想が素直に耳に入るのであれば土井氏と同じく同じく戦時中に活躍し、戦後の雑誌等にも回想を載せていた木村昇氏の戦時中の言葉も素直に耳に入ることでしょう。

    何か独自の基準で批評でもなさるのでも無い限り、定義が公文書上で明確という極めて幸運な用語を自己流に弄る必要はないと思います。私達は「誤用が我慢できない」のではありません。
    BUN

  12. 陸軍自らが重戦のカテゴリーに含めたものとして他にキ61IIもあります。
    また、プランとしてのキ63もあります。

    18年以降では、陸軍戦闘機は「近戦」「高戦」「夜戦」「遠戦」に分類されなおされています。キ87やキ94のことを重戦といわないのも、陸軍自身の定義付に従うからなのです。


  13. キ44−3につきましては「全備重量2886kgの3型が多少作られ
    た。」という記述を見つけましたが、それ以上はわかりません。疾風のキ84は発注当時、軽戦、重戦という区分をやめていたと、このサイトで見ていましたのでいれませんでした。
    K.M

  14. 重戦に属するものとして、もうひとつ忘れてました。キ64です。

    すでに触れましたが、陸軍による機種の定義付は「陸軍航空兵器研究方針」という文書で行われています。これこれの機種をこのように定義するから、それに沿って開発研究を行うこと、といった内容のものです。
    これは昭和12年、13年(翌年若干改訂)、15年、18年度版が出ています。
    重戦・重単座戦闘機という機種がカテゴライズされているのは15年版まで、18年度から内容が一新されます。キ84の試作指示は17年5月ですから、15年版研究方針がまだ形の上では生きている頃です。しかし、この時期にはむしろキ43一機種鹿現れなかった軽戦の存在の方がかなり危うくなっており、重戦化を促されつつあったき61を除いて軽戦の新規開発も行われておらず、そういう意味で重戦/軽戦の区別が実質的に失われつつあったのです。重戦は生きており、軽戦が死にかかっていたのです。



  15. お騒がせいたしております。子供の頃なじんだ軽戦とは翼面荷重の小さい旋回性能の高い戦闘機で、重戦とは翼面荷重を高くして、高速で一撃離脱戦法を得意とする戦闘機である、という一種の尺度で世界中のプロペラ戦闘機の
    空力性能をおおまかに比較するのが好きなのです。キ43とキ44はこのときの格好のスケールになるのです。もしキ44をドイツに持っていったらどの程度戦えたのかとか、Fw190と同じエンジンに換装したらどうだったろうかとか、モランソルニエやバッファローがBf109に善戦したのはなぜかといった、どうでもいいことを考えたりしたいのです。ところが軽戦、重戦が旧陸軍専用用語のため、零戦は重戦か軽戦かといったことまでチェックがはいります。ですから、日本陸軍機以外にも適用できる、このサイト専用でもいいので、なにか的確な言葉はないものでしょうか。ついでに「主力戦闘機」という部分は(主力戦闘機となることを期待して発注)という意味を含んでいるんですね。
    K.M

  16. いろいろ思い浮かべて考えるのは楽しいことですけれども、その前提は果たして事実なのかどうか、を見直す視点も大切ではないでしょうか。「モランソルニエやバッファローがBf109に善戦したのはなぜか」の前に「それはどこまで本当なのか」を問う、といった具合にです。でなければ前提からして怪しい、まさにどうでもいい話になりかねません。
    また「主力戦闘機」とは重戦の役割を表現するひとつの喩えですから当時の陸軍が「主力戦闘機」という概念を持っていた訳ではありません。
    当時の陸海軍はメッサーシュミットやスピットファイア等、欧米の新型戦闘機をひとまとめに「高速機」「高速戦闘機」と呼んでいましたが、新しい言葉を創造するまでもなく、それで十分なのではないでしょうか。
    BUN

  17. バッファローvsBf109はソ連機の間違いでしたね。おわびいたします。
    K.M


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