まさにリフティング・ボディのはしりとも言える機体で、広範囲の速度性能を発揮する はずだった戦闘機。 1937年にヴォート社に入社したジンマーマンは、それ以前から研究していた円形翼機 の開発を推し進め、まず、1938年に特許を取得しました。その後、この形態の実験機 「V−173」の製作契約を1940年5月4日に海軍から受注することに成功し、 1942年11月23日に初飛行させ、200回にも及ぶ飛行試験を行いました。 しかし、次に本格的実用戦闘機としたXF5Uの正式受注が2年近く後の1944年7月 15日となり、実機の完成は大戦終了後の1945年8月20日になってしまいました。 しかも、装着予定の「フラッピング・ブレード」と呼ばれる特殊なプロペラの完成はさらに 遅れて、実機に装着されたのは、なんと1947年になってからでした。このため、ジェット化 の波もあり、ついに進空することなくその生涯を閉じたのでした。 それにしても、個人的にはこの飛行機が飛行しなかったことが航空史上最も残念なことです。 こんな形態の飛行機がどんな飛行特性を示したか大いに興味をそそります。本当に775q/h〜 64q/hの速度を示したとしたら、固定翼・固定推力線の亜音速機としては史上唯一「10倍にも 及ぶ速度域を持った飛行機」という希有な存在になったことは間違いありません。 XF5Uのモックアップ審査を1943年6月に終了しておきながら、正式発注が1年以上も 後になったのは、やはりアメリカ海軍としてもこのような形態の飛行機がモノになるとは考えて いなかったということでしょう。実験機のV−173は非常に良好な安定性とスピン特性を持って いたというはなしですから、もうちょっと真剣に検討してみても良かったのではないかと思われ ます。 |
諸元 | B |
全幅(m) | 11.1 |
全長(m) | 8.55 |
全高(m) | 5.17 |
翼面積(u) | 44.1 |
自重(s) | 5,945 |
全備重量(s) | 7,585 |
エンジン |
P&W R−2000−7 空冷複列星型14気筒×2 1600馬力 |
燃料 | 1,060+1,136リットル |
最大速度 | 775q/h(9,357m) |
巡航速度 | 326q/h |
着陸速度 | 64q/h |
海面上昇率 | 1,094m/分 |
実用上昇限度 | 10,516m |
航続距離 | 1,703q | 武装 | 12.7o×6、または20o×4 |