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現状核兵器は使えない兵器ですが、高高度核爆発によるEMPを非致死性兵器として使うことは、なぜ国内でも国際社会でも議論されないのでしょうか? 例えば米中戦争や印パ戦争が勃発したとき、都市に核を落とすのは国際世論が許さない、軍事目標でも核のエスカレーションを招くから非常に危険、ではこのとき、高高度核爆発が実施される危険性について、どのような議論がなされているのでしょうか? tan |
- 高高度核爆発を予定通り実施できたとして、それが「失敗して結果的に高高度核爆発になっただけで実は都市に対する核攻撃だったのだ」と敵側が主張する可能性。
高高度核爆発が失敗して大気圏内で核爆発がおきてしまい、意図せず直接核攻撃になってしまう可能性。
不発の核弾頭が敵陣営の手に落ちてしまう可能性。
実施にあたっての準備等さまざまなコスト。
期待できる効果。
味方陣営が受けるEMPの影響。
これらを冷静に考えれば、普通にECMを掛けた方がよっぽどメリットがあるように思えますが、この上どこに議論をする余地があるのでしょうか?
おうる
- 台湾有事の際、中国が日本アルプス上空で高高度核爆発をさせる可能性はどうですか? ここなら味方陣営が受けるEMPの影響は低いですし。
「日本アルプス上空で高高度核爆発させるぞ」と中国が脅迫した場合、なまじ非致死性兵器であるだけに、日本政府はこの脅迫を確度が高いと判断せざるをえません。非常に簡単に日米同盟にくさびを打ち込むことが出来ます。
「不発の核弾頭が敵陣営の手に落ちてしまう可能性」等は、どうでもいいのです。例えばパキスタンの核ミサイルは信頼性に非常に疑問符がつきますが、ちゃんと核保有国として外交上のメリット(とデメリット)を受けています。あくまで核恫喝です。
ECMですが、この議論は戦術的なものではなく、核戦略・外交戦略の手段としての議論を想定しています。言葉足らずで申し訳ありませんでした。
tan
- 日米同盟にくさびを打ち込む効果は全く期待できませんし、むしろ完全に逆効果です。ほぼ確実に国際社会を敵方に回すことになりますし、下手したら日本に積極的対応を選択させる可能性すら出てきます。
核戦力による恫喝という意味では配備状態のまま使わない事、そして積極的には使わない姿勢を表明していることが最良です。
高高度核爆発であっても核兵器の使用には変わりなく、国際的非難は避けえないでしょう。自国領内の無人の原野で行う核実験ですら国際的非難を浴びるのです。外国に影響を及ぼしておいて国際世論が許す…あるいは軽い非難で済むと考えるのは現実に即したものではありません。
純軍事的に考えたとしても、EMP効果は一時的なものでコストに見合うだけの効果があるとは思えません。重要なインフラともなると落雷対策で無停電化も図られていますし、有線通信も光通信化していますから、冷戦当時の頃に比べるとそれほど期待できません。被害地域の経済活動がこうむる被害も軽微でしょう。数十発もの核弾頭を連続投入してEMP効果を持続させるならともかく、そのような使い方自体がそもそも現実的ではありません。それだけの核戦力を投入するなら、いっそ全面核戦争に踏み切った方がマシでしょう。
おうる
- もしマケイン政権になって、”使える核兵器”(地下施設攻撃用など)が配備されたとしたら、アメリカは「戦術核を軍事目標に使っただけだ」と強弁するでしょう。つまり、ブッシュ〜マケインは国際世論の非難を受け入れる覚悟があったからこそ新型戦術核開発に乗り出した(しようとした)んですよね? ということは「ほぼ確実に国際社会を敵方に回すことになりますし」という覚悟もまた、できているわけですよね。(ここまで、間違いがあったら指摘くださると助かります)
さて、純軍事的ということですが、自衛隊へのダメージは考えていません。あくまで非致死性兵器として使用します。そして、この点がおうる様と認識の違いがあるのですが、民生品の落雷対策はEMPにはあまり効果がありません(パルスの立ち上がりがはるかに早いため。ウィキペディアにも記事があります)。「被害地域の経済活動」は壊滅的打撃を受けます。だからこそ、核戦略の一環として高高度核爆発を戦略の1つに加えるのではないか……と考えたのです。
ハワイが停電のみで済んだのは十分な距離があったためで、日本アルプス上空でやられれば、EMPは電子回路を焼き切るので、日本国内の携帯やパソコンは全滅、自動車も動かない、1発だけ高高度核爆発をやれば民生品は全滅します。
また、「EMP効果は一時的なものでコストに見合うだけの効果があるとは思えません」ですが、前述の通りEMPは一時的なものではありません。電子回路を基板ごと交換しなければなりません。日本中の電子機器を、です。
ちなみに、自衛隊の装備の過半は雷対策は取っていてもEMP対策は遅れています(当方、防衛産業に勤めています)
tan
- で、あるならばなおさら単なる「非致死性兵器の使用」では済まないでしょう。世界の経済活動は緊密にリンクしています。
日本の経済活動が壊滅的被害を受けて、影響を受けない先進国はありませんむろん、日本以外の国であっても同じです。いずれかの先進国に対する核攻撃を行えば、直接的な核攻撃であれ、高高度核爆発であれ、無関係な第三国への影響を与えずにはいられないのです。それは間接的被害として受け取られるでしょうし、「核兵器を実戦使用した」という事実は否定のしようが無いのですから、国際的非難は避けえません。
もし避け得るというのなら、中国が自国内で核実験を行いながら、その事実を隠蔽している理由は何でしょうか?
おうる
- 下のサイトによれば、核爆発電磁パルス(NEMP)の場合、パルスの高速な立ち上がり時間(10ns)と短い継続時間(1µs)によって、全てのアンテナが直撃雷を受けたときのような共鳴を起こすという特徴があること。しかし、核爆発の地点からかなり離れた所では直撃雷に比べエネルギー量が非常に小さく、雷撃時のピーク電流(20kA)レベルの大電流を発生させることはない。ただし、NEMPの影響を受ける電源ラインが長い場合は、理論上50kAの電流が発生することもある。雷撃対策の設置技術はNEMP対策にも応用できるとあります。
http://www.comcraft.co.jp/products/polyphaser/poly11.html
それから、こちらのサイトによると、核電磁パルスは長距離の電話線、電力線にダメージを与えますが、小規模の独立したシステムには影響がないとありますね。
http://www.fas.org/nuke/intro/nuke/emp.html
また、1962年のキューバ危機当時、ソ連がABMのテストのため、高度290kmで300キロトンの高高度核爆発実験を行なっていますが、ソ連中央部における長距離の電力線や電話線の幾つかに被害が生じたとあります。それにしても、この実験によってソ連中央部(ソ連国内では比較的人口密度が高く、軍需産業が多数ある地域ですね)の軍用及び民間用の電話線、電力線、更にはこれらと繋がった電子機器類が瞬間的に流れた大電流によって壊滅的被害を受けた、よってソ連の軍事力、経済力が相当な打撃を受けたなんて話は聞いたことがありませんねえ。何故なんでしょ?
http://studycommittee.org/high-altitude-nuclear-tests.html
アリエフ
- 2番目のサイトのリンク先が間違ってました。こちらに訂正。
http://www.fas.org/nuke/intro/nuke/emp.htm
アリエフ
- >おうる様
おうる様の意見ですと、どの国も核兵器を使用できないとなりますが(実際そうですが)、ならば核廃絶は可能となってしまいます。オバマが完全廃絶は無理と言っている以上、中露は核兵器を捨てられませんし、そうなると中露は核戦略の選択肢として高高度核爆発を持つのではないでしょうか。選択肢が「先制不使用と全面核報復」ではあまりに戦略が硬直過ぎです。英仏はそれで構わないでしょうが……。
>アリエフ様
資料提供ありがとうございました。早速仕事中にこっそり読んでみます。
tan
- 核戦力が他の兵器と全く異なる点は、使わない事で発揮できる抑止力が最大になる点につきます。そして、実際に硬直化してしまっているのが核戦略です。使い方や威力の違いを許容するような柔軟性などありません。極限まで硬直化しているからこそ、核戦力の縮小が必要となり、同時に可能となっているとも言えるかもしれません。同時に、完全に廃絶されることもないでしょう。
ただ、米露両国の現在配備されている核兵器に限って言えば、純水爆の実用化後に廃絶される可能性はあるかもしれません。
おうる
- >アリエフ様
> 核爆発の地点からかなり離れた所では直撃雷に比べエネルギー量が非常に小さく
の記述がリンク先になかったのですが、出典はどこでしょうか?
> よってソ連の軍事力、経済力が相当な打撃を受けたなんて話は聞いたことがありませんねえ。何故なんでしょ?
何故なんでしょうか。降参です。できましたらご教示ください。ご存じなければ、新規にトピを立ててみます。
>おうる様
了解しました。ご回答ありがとうございました。
tan