53 |
旧日本帝国軍で勲章より感状の方が多かった理由は何でしょうか? 私が考える理由としては以下のものがあります。 1.勲章は天皇陛下が下賜する形を取っていた為手続きが大変だった。 2.勲章に付随する恩賞等による人件費の増加が嫌われた。 3.日本人的に勲章よりも文章に残る感状の方が好まれた。 それ以外にもあるのでしょうか。 安井 賢一 |
- 金鵄勲章は日露戦争時に約11万人、第二次世界大戦時に約62万人が受勲しています。感状の総数は調べられませんでしたが、おそらく数だけで考えれば勲章のほうが多かったのではと推測いたします。
ただし安井さんがあげられた勲章と感状との相違点はおっしゃる通りだと思います。
>1 手続きが大変だった。
感状は軍司令官(陸軍)あるいは司令長官(海軍)などの大本営に直属する団隊長が授与できる(陸海軍感状授与規定第一条)ので、機動的な運用ができます。戦死者への金鵄勲章授与などでも手続きに一定の時間がかかることは確かで、感状のほうが即応性が高いでしょう。
>2 勲章に付随する恩賞等による人件費の増加が嫌われた。
金鵄勲章には年金がつくので、日中戦争による受給者の増大により、1940年に年金が一時金に変更され、戦没者者以外への金鵄勲章授与が一時停止されています。(ただしそれ以前の勲功に対する生存者への勲章授与は1942年までおこなわれていますが。)
また、第二次世界大戦時についていえば、生存者に対する金鵄勲章授与が停止されていたため、それに代わるものとして感状が与えられたという側面もあると思います。(また陸軍は陸軍武功章を制定しました。)
>3 日本人的に勲章よりも文章に残る感状の方が好まれた。
これもある程度あるかと思います。日本ではモノとしての勲章そのものよりも勲記(勲章授与の書面)が重視される傾向があります。(勲章そのものを飾ってる人はあまり見かけませんが、勲記を額に入れて飾ってる人は時々いますよね。)
また、感状は戦国時代の武将感状を始め長い伝統がありますが、勲章は明治以降の西洋文化の移入としての性格が強いという違いもあるかも知れません。
加えて、勲章は基本的に個人が対象ですが、感状は部隊や艦艇も対象になることが(陸海軍感状授与規定第二条)、集団主義的な日本人に向いているという点もあるかと思います。
参照 「人事局 陸海軍感状授与規程」
アジ歴レファレンスコードC08070656300
カンタニャック