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モーゼル・ミリタリーについて質問します。この銃は大量に生産され、また輸出もされたようです。中国軍も使用したと聞いています。そして、その中国軍と対戦した日本軍兵士が、それを奪い取り元の持ち主に撃ち返したこともある聞いています。 では、そのように捕獲したモーゼル・ミリタリーは規則に則って正式に戦利品となったのでしょうか。それとも半ば黙認される形で兵士のいわば私物として扱われたのでしょうか。 また、銃ですから、弾丸がないと用をなしませんが、その弾丸はどのように入手したのでしょうか。これも相手から奪ったものを使用するだけだったのでしょうか。 二一斎 |
- まずは呼び水程度・・・
戦場で敵兵器を鹵獲した場合は、それを使って戦闘を継続することは普通にあります。
例えば、ベトナム戦時のM16の信頼性や小口径跳弾のため、AK47を使っていた米兵等です。
モーゼル・ミリタリーの場合、正規軍以外に所謂【満州馬賊】の定番拳銃だったので、
戦利品として持ち帰られた数は多いでしょう。例えば、現大阪城公園の天守閣前の古井戸
から、終戦時に投棄された武器類が井戸さらい発見されたと言う展示の中に、当該の
拳銃が複数あったのを記憶しています。もう20年くらい前のことですが。
あのボトルネックの7.62ミリ弾は、南部式の8ミリ弾のルーツになったようですし、中国
だけでなく、日本にも大量に(銃本体と共に)輸入されていたようです。鹵獲弾薬のみでなく、
国内に既にあった弾薬が使われたこともあったのではないでしょうか。
(参考:日本の軍用銃と装具 須川薫雄著 P175)
TOSHI!!
- ここでかなり昔にこの件を何度か書いたかと思いますが要約します。
本来正規の国軍であればいずれの国でも滷獲品は戦場掃除に於いて、主計将校の立ち会いのもと現場部隊で正確な台帳を作り師団まではその内容を報告し、野戦兵器廠なりの適当な兵器廠へ送り保管され国家財産となります。
必要があれば増加兵器の申請を部隊からだし上級司令部の許可が下りれば所管の兵器廠から交付されます。
上記は建前、しかし戦場掃除等の業務は使役される兵の負担も多く、逆襲等が予想される場合は現場指揮官の裁量で廃棄などの処断が許されてもいました。
このため実際は、員数外で部隊兵器係が保管し面倒な増加兵器申請を省いたり、兵への恩賞的に私物化される事もかなりあったようです。
これについて、下士官兵の復員時に違法な私物拳銃を国内へ持ち込まないようにという布達が日支事変以降頻繁に出されています。
マウザーC96に関しては、帝国陸軍では準制式拳銃に制定されており、その出所は、支那戦線での滷獲とドイツからの正規購入(三国同盟のご祝儀発注、イ式小銃と同じ経緯)により、同時に実包も準制式が制定されておりますが、これはそれ以前から国内の工廠に製造背景があったようです。
以上ご参考まで。
退役老少佐
- >2.
明快な回答をありがとうございます。
実は、当該拳銃が準制式だった、ということは記憶にはあったのですが、手元の資料に裏付けがとれませんでした。
上掲の参考文献にも、輸入拳銃として使われていたものを含めて数頁の記述があるのですが、浜田式自動拳銃等まで
あっても、当該拳銃の記述がないため、上記のような書き方になりました。
>下士官兵の復員時に違法な私物拳銃を国内へ持ち込まないようにという布達が日支事変以降頻繁に出されています。
ということは、逆にいえば、持ち込みがあった、と解釈しても良いのでしょうか? もしお差支えがなければご教授ください。
TOSHI!!
- モーゼル・ミリタリー(民間用はC96)は、WWI戦前後より 陸、海軍 或いは 市井の銃砲店により
いくらかづつ日本に輸入されております。
1.準制式の件
アジ暦に 昭和14年11月の 「モ」式大型拳銃準制式制定にかかる資料が閲覧できますね。
レファレンスコード C01001850200
「本拳銃は満州及び支那両事変に於いて多数押収したるを以って現制式の代用として使用する」
2.>2.ドイツからの正規購入(三国同盟のご祝儀発注
又、同じくアジ暦にて 昭和14年10月6日 在独大使館付武官宛
「兵器購入に関する件」 C01004701500
以下の物を積んで ロッテルダム港より早く船出しろ という内容です。
1.モーゼルポケット拳銃 一千挺 モーゼルポケット実包 二十万発。
2.モーゼル大型拳銃 五百挺 モーゼル大型実包 十万発。
3.ブルノ軽機関銃 百五十挺 ブルノ軽機実包 九十万発。
4.モーゼル小銃 一万挺 モーゼル実包 百万発。
しかしながら、ドイツ本国モーゼル社は MAUSER C96 (シュネルファイヤー含む)を
1937年末にて生産中止していますので、本当にこれだけの数500丁が日本に届いたものか確証したいところです。
尚、ドイツ本国にて、1940年ドイツ空軍及びSS部隊にシュネルファイヤー 数千丁が配備された件は
日独伊三国同盟による支那向け出荷停止品ストックを当てたものです。
よって一部の銃には 漢字で”独国製”と刻印されていたそうです。
3.欧州拳銃用実包国産の件
輸入拳銃用実包は 25ACP, 32ACP, 7.63MAUSER の3種類が 東京第一陸軍造兵廠 及び 第二 〜 で
国産されています。
これらは、当時の国産軍用実包の例に同じく実包本体に識別刻印(所謂ヘッドスタンプ等)が無く、
逆に欧州拳銃用弾薬なのに刻印が無い為 日本製の物だと直ぐわかる事になりました。
以上 諸氏の解説に補足
軌跡の発動機?誉
- >4.
ありがとうございます。なんかつっかえが取れた気がいたしました。
>輸入拳銃用実包は 25ACP, 32ACP, 7.63MAUSER の3種類が 東京第一
>陸軍造兵廠 及び 第二 〜 で国産されています
確かに、上掲書のP190にある、浜田式・稲垣式・杉浦式の各国産拳銃は、
みな0.32ACPで、「0.32ACP弾は、7.65mmのモーゼル式拳銃弾として、日本
の工廠で製造されていた」との記述があります。
また、P192には、日本軍将校が購入した外国拳銃が列挙されていますが、
「それらの多くは、.32ACP(7.65mm)か、.25ACP(6.35mm)の実包を
使う自動拳銃であった」とも。スッキリしました。御礼申し上げます。
TOSHI!!
- TOSHI!!様、退役老少佐様、軌跡の発動機?誉様、懇切なご回答有難う御座います。状況がつかめました。しかし、軌跡の発動機?誉様のご回答の中の「本拳銃は満州及び支那両事変に於いて多数押収したるを以って現制式の代用として使用する」には驚きました。そんなに多数押収したとは。
また、退役老少佐には「戦場掃除」をお教えいただき大変助かりました。そういう作業があったのですね。
二一斎
- 大変失礼いたしました。「また、退役老少佐には「戦場掃除」をお教えいただき・・・」は。「また、退役老少佐様には「戦場掃除」をお教えいただき・・・」の誤りです。訂正して、お詫びします。
二一斎