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マグナス効果について質問させて下さい。 進行方向(空気の流れ)と同じ方向に回転する物体にマグナス効果が現れるのはよくわかります。野球のカーブやBB弾のホップなどですね。しかし、進行方向に対して直角の向きに回転する物体(銃砲弾)にも効果が出るのが理解できません。左右への回転で物体付近に空気流が発生して、とか?でもそれなら、物体上下左右に一様に力が加わりそうだし(重力の影響でインバランスが生じる?) と、こんな感じでどうにもなんのコトやらな感じです……。 どなたか詳細ご教示いただけませんでしょうか。 よろしくお願いいたします。 satoski |
- マグナス効果は、「進行方向に対して直角の向きに回転する物体」には働かないと思います。
では何故砲弾にマグナス効果が働くとの記述があるかを考えますと、
曲射の場合では、砲弾の進行方向と回転軸方向が一致しないからではないかとの推測に行き着きました。
あくまで推測ですが、ご参考までに。
太助
- ここ ↓ の「3.砲外弾道」中の「(4)砲外弾道の結論」をご覧いただくのがよろしいでしょう。
http://navgunschl.sakura.ne.jp/koudou/riron/shokyu/dandou/dandou_frame.html
艦船ファン
- >2.艦砲屋さんの秀逸なページを補足
近代以降の長形銃砲弾の通常射撃においては、マグナス効果の影響はあまり考慮する必要はありません。
物理学上 右旋転弾においてはジャイロ効果による力は右へ、マグナス効果は左へ弾道偏心させる力となりますが、
マグナス効果は弾丸の迎角(弾丸離軸角)即ち進行方向に対する角度が大きい因子であります。粗く言えば砲仰角。
小火器や地上カノン砲の通常射撃 せいぜい0〜20度の砲仰角=低伸弾道の場合、ジャイロ効果の方が
著しく大きく、マグナス効果は無視出来ます。
現実とし 7.62mmNATO弾 右ライフリングで射撃した場合、距離1000m前後の位置での弾着は
射線 右 約0.4m位に着弾します。 これを "右への定偏0.4m"と言います。
迫撃砲や臼砲 等の特異な射撃 射角70度近辺より、マグナス効果の影響が現れ、射角80度を超えたあたりから
ジャイロ効果よりマグナス効果が上回り、右旋転弾でも弾道は射線より左へそれると言われております。
陸戦の場合の参考まで。
軌跡の発動機?誉
- >3.
補足いただきありがとうございます。 ただ、そのままではちょっと誤解を生じますので、再補足を。
>近代以降の長形銃砲弾の通常射撃においては
それ以前の射撃でも全く考慮する必要はありません。 ご紹介したサイトでも書かれているとおり、特に“近代以降の長形銃砲弾”でなくともポアソン効果及びマグナス効果がプレセッション効果に対して遥かに小さいことが判っていますので、通常は前者2つの影響は無視して取り扱います。
ただし、理論的にこれら3つの総合効果上でどの程度のものになるかは明らかではありませんから、結果的に、定偏は実射による実験式によって求めることになります。
>せいぜい0〜20度の砲仰角=低伸弾道の場合
>ジャイロ効果の方が著しく大きく、マグナス効果は無視出来ます。
陸戦では20度以上になるとマグナス効果を考慮するんですか、始めて知りました。 海ではどのような仰角であろうと、それを単独で取り扱うことはありません。
>”右への定偏0.4m”と言います。
陸戦ではわざわざ“右への”と言うんですか、これも始めて知りました。 旋転弾に作用する3つの効果の総合は、右旋転弾では次ぎにご説明する特殊な高仰角の平射の場合(しかも実際にこれを行うことはありませんが)を除き右偏しかしませんので、海では余程の初心者への教育でない限りわざわざ“右への”などということはありません。
(左転弾と区別する必要があるなら別でしょうが、昨今左転砲などまずありませんし、右転砲なら右偏、左転砲なら左偏は言わずもがなですので。)
そしてこれが最も肝心な点ですが、
>射角80度を超えたあたりからジャイロ効果よりマグナス効果が上回り、
高仰角射撃においては70度付近を越えた辺りから、弾道の頂点付近において急速に昇弧から降弧となるときに、ジャイロ効果による姿勢維持特性のため弾軸が弾道に追従できなくなり、極めて不安定な状態となります。
このため、通常の火砲の平射においては、仰角が大きくなるにつれて右旋転弾の右偏定偏は徐々に大きくなりますが、その不安定状態の領域に入った後はこの右偏定偏の増加はほとんどなくなり、そして約80度付近において急激に左偏定偏に変わります。
これは「マグナス効果がジャイロ効果を上回る」からではなく、弾軸が上を向いたまま降下する、即ち“尻もち”状態となり、結果として左転弾と同じになってプレセッション効果による影響により左偏するためです。
もちろんこの現象が現れる限界点は、火砲や弾の種類、風などの条件によってそれぞれ異なることは言うまでもありませんが。
艦砲射撃の場合の参考まで。
艦船ファン
- >4.艦砲専門家の方からのレス有り難う御座います。 右転、左転についてのみ返信します。
現代の銃砲のほとんどは右回転ライフリングでありますし、当然 現極東某国陸戦隊の所有する火砲・小火器は
すべて右でありますね。 しかしながら小火器においては 今昔世界を見渡せば反逆精神は有るもので、
コルトのほとんどが左回転なのは周知であります。
(但し 米軍用サービスライフルとして製造したM16系はちゃんと右回転であります。)
他に、WWII戦までの英軍基幹小銃である リーエンフィールド小銃、ルイス機銃、仏軍小火器のほとんど、
我が帝国陸軍99式軽機、97式車載重機銃 等 左回転も探せば そりなりに存在しますので
ライフリング・旋転・定偏の方向は確実に表記しておかねば間違いが出る場合も!!
という事です。
〜?誉
- >5.
陸戦は種類が多いので大変ですね。 もっとも艦載砲でも左転砲が無いわけではありませんが。
それはともかく、私の方がちょっと舌足らずでした。 申し上げたかったのは、
>これを ”右への定偏0.4m”と言います。(>3.)
とありましたので、「右(左)への」と必ず付けた“ ”でくくった極まり文句的な言い方、つまり「右(左)への定偏」という用語としての言い方をするのですね、ということです。 これは海にはありませんので。
海の場合は、定偏がいくらというような具体的な話しをする時には、特定の砲を前提としますので間違えることはありませんし、また定偏の一般論として右左を示す必要がある時には、「したがって、定偏は右(に)0.4mとなる」というように説明文的にしか言いません。
また、もしかして反論をいただけるかと思っておりました、
>陸戦では20度以上になるとマグナス効果を考慮するんですか(>4.)
ですが、
>マグナス効果は弾丸の迎角(弾丸離軸角)即ち進行方向に対する角度が大きい因子であります。粗く言えば砲仰角。(>3.)
弾道の曲率が大きくなると離軸角が大きくなり、これによりマグナス効果は大きくなりますが、これはプレセッション効果についても同じことで、むしろ後者の方がその結果は大きく出ます。 つまり、砲仰角はマグナス効果とプレセッション効果との影響度を左右するものでは無いと言うことです。 したがって、海では高仰角になってもマグナス効果を単独で採り上げて問題にすることはありません。
艦船ファン
- >4.艦船ファンさん−−陸戦では20度以上になるとマグナス効果を考慮するんですか
陸、海に拘らず大砲の射撃(特にINDIIRECT FIRE)というものは 現場サイドで何々効果を考慮するというより
射表に基づく射撃になることは同じではないでしようか。(何々効果をまとめて定偏として1つ括り)
又、戦車砲で初弾から何発かはダレを考えて撃つという行為がありますが、本件質問と本質の違うものですね。
さて、小火器においても構造・ハード面ではほとんど定偏は考慮されません。
スナイパー等の精密射撃を行う時は、横風、向かい風影響を含む定偏を、射手の経験で調整しますね。
現代ではポケットに収まる専用電卓みたいなものもあります。
但し、過去には小銃の照準機に、長距離射撃時に定偏を考慮した物が付いていたレアな物もあります。
米陸軍制式小銃 SPRINGFIELD M1903A1
ここの#16
ttp://www.warriortalk.com/showthread.php?p=993496
こちらも↓
ttp://www.surplusrifle.com/1903/operations.asp
起倒式照準器を立てていますが、一見斜めに見えるのは、写真撮影の時に傾いて撮ったわけではなく、
製造時より照準器が斜めに銃に組み付いています。
然るに照準器を起すと斜めに立ち、目標距離に合うドリフトを考慮した照準になります。
しかしながら、射手にとって(人間生活の中で)斜めの道具は違和感がおきるのでしょう!?
これに似た照準器を持つ銃が過去に数例ある様ですが主流にはなれないで終わっています。
以上 脱線話は終わりにします。
〜?誉
- >7.
言葉というものは難しいもので、それぞれが思うようにはなかなか相手に伝わらないものですね。
>現場サイドで何々効果を考慮するというより
>何々効果をまとめて定偏として1つ括り
プレセッション、マグナス、ポアソンの3つの効果の総合を「定偏」とすることは当然のことで、そもそもそれが定偏といわれるものですから。 そして“砲仰角に関わらず”後者2つを無視して考えることが出来るほどプレセッション効果が強く表れることも既知の事実です。
だからこそ、
>小火器や地上カノン砲の通常射撃 せいぜい0〜20度の砲仰角=低伸弾道の場合、ジャイロ効果の方が著しく大きく、マグナス効果は無視出来ます。(>3.)
とわざわざ補足された理由が陸戦においては何かあるのでしょうか? とお尋ねしたわけです。
ついでに、海の脱線話も。
>横風、向かい風影響を含む定偏を
陸戦の精密射撃はそうなんですか、始めて知りました。 海では風の影響などを「定偏」に含めることはありませんので。 定偏苗頭、風苗頭、的苗頭、自苗頭など、それぞれの要素の修正値を算出し、それらを射撃諸元としての「苗頭」として合計します。
また、射線に平行な風の分力、即ち向かい風、追い風による射距離の変化分は定偏苗頭では無視します。 それによる定偏の変化量は小さいので。 そして、向かい風や追い風が射距離以外では定偏そのものに直接影響することはありません、というより更に極小ですから全く無視できます。
>但し、過去には小銃の照準機に、長距離射撃時に定偏を考慮した物が付いていたレアな物も
>照準器が斜めに銃に組み付いて
艦載砲では、方位盤などの射撃指揮装置が誕生する以前の砲側照準時代には、その照準器の「縦尺」、即ち距離尺は基準距離に対する定偏に応じた角度で傾けられているのが通常でした。 例えば、12インチ砲では基準距離を8千mとし1.5度です。 これは旧海軍でも昭和期に至るまで残っているものがあります。
そしてこの定偏苗頭以外の苗頭修正については「横尺」と呼ばれる苗頭尺に調定します。
当然ながら、射距離による定偏の変化は直線にはなりませんから、砲戦距離が延伸し、また方位盤射撃が行われるようになるにつれて、射撃の際は時々刻々の射距離に対する定偏の値を苗頭計算に使うようになりました。
本来のご質問内容から外れてきましたので、当方もここまでと言うことで。
艦船ファン
- 皆さんご回答ありがとうございました。
長年の疑問が氷解致しました!
satoski