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よく、レーダーに対して電子妨害やチャフとかで対抗しますが では妨害や欺瞞にめげずにレーダー側の出力を上げ続けたら最終的にはどうなってしまうのでしょうか (レーダー側が壊れるというのは無しにして) どんなに出力を上げても(たとえ十億倍にしても)妨害は突破できないのか あるいは妨害方法によって突破できるかできないのか変わるのでしょうか? ルイス |
- チャフには、レーダーの出力を上げても効果がないと思います(周波数変更は効果があると思います)。
電気的妨害に対しては、被妨害側が送信出力を上げ、妨害側の受信回路を焼き切る(バーン・スルーと言います)手段を取ることの出来るレーダーがあります。しかし、出力を上げるにも限度がありますので、最終的にバーン・スルーが出来るかどうかは、妨害側受信機の許容量と被妨害側送信機との距離によります。
73式
- >1.
>妨害側の受信回路を焼き切る(バーン・スルーと言います)
いくら何でもそんな無茶苦茶な。
http://www.army-technology.com/glossary/burn-through-range.html
艦船ファン
- 艦船ファン様
ご指摘、ありがとうございます。しかし、自分も含め一般の隊員(電子戦課程とかにいった隊員は別にして)には、自分が1.でしたような説明がされますので、そのように回答しました。
73式
- >3.
陸上自衛隊さんがそのような教育をしているとはちょっと信じられませんが・・・・
それはともかく、レーダー方程式をお考えいただけば明らかなように、レーダー側においては、目標からのレーダー反射波の受信電力は距離の4乗に反比例して減少(要するに往復)しますが、妨害波の電力は距離の2乗に反比例する(要するに片道)だけです。 したがって、妨害側の方が有利、つまりレーダーより遥かに小さな電力で妨害することができます。
これに対して、レーダーの受信部においては妨害対信号比(Jamming/Signal)が1以内、つまり受信した目標からの反射波の電力の方が妨害波の電力よりも大となれば目標を検出することができますから、目標の距離が近くなるか、あるいは送信電力を大きくすることによってこれが可能となります。
この妨害状況(環境)の中から目標を検出可能となることを「バーンスルー(burn-through)」と言い、その時の最大距離を「バーンスルー・レンジ(burnth-rough range)」と言います。 バーンスルー・レンジは日本では今までは一般的に「最少妨害距離」と言う場合が多かったです。
レーダーによっては、妨害を受けたときにこのバーンスルー・レンジを伸ばすために、送信電力を高め、かつ送信パルス幅を短くして尖頭出力を大きくする「バーンスルー・モード(burn-through mode)」と言うものを備えているものもあります。
艦船ファン
- >5.
タイプ・ミスをしました。
burnth-rough range → burn-through range です。
艦船ファン
- >4、5
> 陸上自衛隊さんがそのような教育をしているとはちょっと信じられませんが・・・・
陸上じゃなく、航空なんですが。しかも初級、中級の警戒管制員に対するものです(もっと深刻か)。
おっしゃる通り、burn-through-modeは被妨害側の探知環境改善のものです。これを1.のように、ごく簡単に、そして物凄く乱暴に説明しているのが、空自の現状です。レーダー方程式なんて「こんなのがあるから」程度の教育しかありませんでしたから(今から10年以上前なんで、現在は改善されているかも知れませんが)。
73式
- >6.
>陸上じゃなく、航空なんですが
おっと、それは失礼しました。 陸自さんならさもありなんと思いますが、空自さんでそんな教育をしてる(た?)とは想像もつかなかったので。 なにせ、4. の説明でさえもごく初歩中の初歩ですから。
もっとも、空自さんそのものが前々から電子戦能力が極めて低いことは有名な話しなので、まともな教育もしていないと言われれば、そうかと納得です。
艦船ファン
- >73式 様
航空自衛隊内の教育機関における教育(特に貴方が卒業されている
学校ですが)はおざなりであり、卒業してすぐの新人の教育には、
多大の労力を要しています。
電子戦に関する教育も、一部の人間には重点的に実施をされますが、
教育を受けた人間の知識となり、周囲に普及していないのが現状です。
大体、基本的な軍事知識を得ようと、その手の本を読んでいるだけで、
ミリタリーマニア扱いをする組織ですから・・・
>艦船ファン 様
装備品の能力はそれなりにあるのですが、それを操作する人間の能力
を軽視しているというのが現状です。大体、装備品を納入している業者
さんの方がその能力の理解は深いという状況です。
航空自衛隊ではなく、航空機自衛隊ですから・・・
B20001
- まあ、パソコンやゲーム機使う人が半導体やプログラミングの知識や原理を理解している必要は無いわけですしね。
SUDO
- >9.
残念ながらその例えはちと合っていませんね。 レーダー機器や電子戦機器を扱う者は、なぜそれが効くのか、効かないのかを知らなければ使えませんからね。 何もそれは回路そのものだけではありません。 だから先日の某質問での議論のように、回路や電子工学の理論だけでものを言っていると、電子戦について何も判らなくなるので。
艦船ファン
- >9.
>パソコンやゲーム機使う人
もう少しご説明しておきますね。 例えば、ゲーム機の得意な人にレーダーや電子戦機の操作法を教えたからと言って、それだけでは彼らは優秀なレーダー員や電子戦員にはなれません。 逆に電子機器のエンジニアも同様です。 車の優秀なメカニック=優秀なドライバー、では(必ずしも)ないのと同じです。 何故でしょう?
パソコンやゲーム機は、早い話が “それだけのもの” であって、基本的にそれだけで完結するシステムだからです。 “他に対して何かをする”わけではありません。 ネットにしても、単に決められた方法でデータをやり取りする機能でしかありません。 また、その内容が置かれる環境で左右されるものでもありません。 例えば、ゲーム機を自分の部屋でやろうが、電車の中でやろうが、ゲーム機自体には何の影響もありません。 ネット対戦であっても、早い話、それはパソコンやゲーム機のデータをどうするかの違いだけのことで、本来機能・内容には何の変わりもありません。 パソコンやゲーム機は、本来ただそれだけのものだからです。
電子戦の場合、自己の機器・装備、置かれた環境(environment of battlefield、あるいは battlefield environment)、そして相手の機器・装備が複雑に関係します。 もちろん相互の戦術も。 これらの全てについて、その理論も含めて充分な知識と技能が無ければ (そして素質・才能も) 優秀なレーダー員や電子戦員にはなれません。
この違いがお判りになるでしょうか? 電子戦の実際を少しでもご覧になったことがないと、ちょっと感覚的に理解できないことかも知れませんが。
艦船ファン
- >10-11
ええ、よくわかります。
であるからこそ、専門の方以外には高度な教育を与えてないのでは?
SUDO
- >12.
「専門の方」や「高度な教育」ではどの範囲・程度までを含めるかが問題となりますので、敢えて言うなら「必要のない者には(まともな)教育をしていない」でしょう。
艦船ファン
- >8
自衛隊ではミリタリーな本を読んでいる人間は「マニア」などとネガティブなイメージを持たれてしまうということですか? ちと驚きますね。
とおり
- >13 >必要のない者には(まともな)教育をしていない
税金で職務の一環としての教育訓練を行うのだから、職務上、必要性がない、薄いことまで教育訓練のカリキュラムに含めないのはごく当然のことではないかと。上級の資格取得等のためにより専門的なこと知りたかったら、余暇を活用して独学しろということでは?
アリエフ
- >15.
段階的教育が行われるのは当たり前のこと。 誰でもが初めから「専門家」ではありませんから、徐々に必要な教育が施されます。 ですから、12.の表現では適切ではないと申し上げたまでです。 もちろん、調理員や経理員に電子戦の教育をしても仕方がないのは言うまでもないことで。
艦船ファン
- ルイスさんが知識があった場合にほんとうは何を知りたいかにより回答は変わるのでしょう。今回の質問だけであれば
問1 どんなに出力を上げても(たとえ十億倍にしても)妨害は突破できないのか
艦船ファンさんの言うとおりです。バーンスルーの説明も正しいです。
ただし、妨害する側は我(艦船、航空機)だけでなく電波妨害用RPV等を使用することも可能な時代となっており、このようなRPVを使用するとRPVがレーダーに接近できるので少ない電力でも妨害効果が増大(=バーンスルーレンジが短くなります。)します。しかも、現実の戦闘ではバーンスルーする前にレーダーは破壊されてしまいす。
問2 あるいは妨害方法によって突破できるかできないのか変わるのでしょうか?
欺瞞があります、たとえば擬似信号を連続的に発射されると沢山のエコーがレーダー画面に現れ、その中から本物の目標を選別しなければなりません(これは一例です。)。欺瞞は、レーダーエコーの受信電力相当の電磁波をレーダー受信機にとどければよいので、レーダー側に比べそう多くの電力は必要ありませんので装備する上で有利となります。
また、レーダー波を反射するまたは増幅輻射するようなデコイを敷設/射出する方法もあります。
つっち
- >17.
>バーンスルーの説明も正しいです。
わざわざご確認いただき恐縮です。
>電波妨害用RPV等
“IF話し”に関わるつもりはありませんが・・・・RVPを活用できるのはEWであれRECであれ、スタンドオフの場合です。 それが元々の遠隔操縦の限界だからです。 しかも、EWのように大電力かつ複雑・高度な機器を搭載するとなるとRVPはサイズが大きくなり、益々小回りが効かず目標近傍に突っ込んで飛行するなどできません。 EA−6にしろEF−18にしろ、あれだけの機体で済んでいるのは電子戦員が載っている有人機だからです。 ですから、例えばX−45にしろXー47にしろ、将来的に考えられているのはまず単純な攻撃機としてです。
しかも、どの様な妨害波の使用をお考えか判りませんが、今ここで議論中の単純なNoise Jammerの様なものなら、そんなものを出してノコノコ飛んでたら、簡単に対抗策をとられてしまいます。
>現実の戦闘ではバーンスルーする前にレーダーは破壊されて
その前にいとも簡単にPRVが落とされてしまうでしょう。 別にARMなどを使わなくても、普通のSAMで充分です。 それにイージスやAPARなどのシステムなら、普段の訓練よりも簡単なことです。 そんな妨害など全く効かないからです。
>たとえば擬似信号を連続的に発射されると沢山のエコーがレーダー画面に現れ
そんな古いレーダーを使っていれば、の話しですね。 現在では捜索用レーダーでさえ、その様な単純なRepeater Jammerは効きません。 ちょっと前の在来型のものでさえ、例えばSLCやSLBがあるのが普通ですから。 Repeaterに分類される妨害は現在ではもっと複雑で高度なものです。
何れにしましても、妨害の基礎のご説明として“こんなものもありますよ”としては意味がありますが、古典的な初歩の手法で、現在ではほとんど見られません。 もちろん、ざっと数えただけでも軽く100の台となる現代の妨害手法の中の一つとしてリストアップはされていますが。
元に戻って、質問の問1も問2も、その答えは実に簡単です。
つまりレーダーの出力はNoise Jammerに対してだけを頭において決めるのではない(そんな要素は極めて小さい)、ということと、妨害(が効くかどうか)は単にパワーだけの問題ではない、という基本中の基本、基礎中の基礎のことです。
したがって、妨害に対抗するためにレーダーの出力を際限なく増大することなどあり得ない話しですが、もしそれを棚に上げての単なる仮想の話なら結論は簡単で、相手の妨害側の出力も同じように増大し、果てしないシーソーゲームが続くというだけのことです。
艦船ファン
- >18.
タイプミス失礼。
RVP,RPV → RPV
艦船ファン