1070  金剛のボイラ送風装置についての質問です。金剛の最初のボイラ(英国製ヤーロー式)本体は、呉の海事博物館に展示されています。このボイラがまだ東京目黒に残っている時見に行った事があります。ボイラ前面あたりに、往復式蒸気機関で駆動される多翼式送風機がありました。この送風機が当初からあったのかどうかはよくわかりませんが、レシプロ駆動ですのでかなり古く、最初からのものと推察します。
 ボイラ送風にはダクトから火格子下部に強制送風するものと、ボイラ室全体の気圧を高めるものと二種類あると読んだ記憶有ります。金剛はどうだったのでしょうか。なおこの送風機は呉の博物館の倉庫に保管されていると推察します。
電気戦艦

  1. 「軍艦機関計画一班」(明治41年増補再版)によると金剛の「缶室強圧通風機械」として
    ・大型(2缶用両面扇)直立単筒7in1/2 × 6in 扇車外径90in 回転数毎分320 風量毎分45,000立方フィート 風圧2in1/2水頭
    ・小型(1缶用片面扇)直立単筒6in3/4 × 5in 扇車外径90in 回転数毎分310 風量毎分22,500立方フィート 風圧2in1/2水頭
    とありました
    駄レス国務長官

  2. >1.
    × 明治41年増補再版
    ○ 大正7年増補三版
    駄レス国務長官

  3. 駄レス国務長官様 どうもありがとうございました。私が見てきたものは、やはり缶室強圧通風機械のようです。撮ってきた写真のシリンダ径からは、両面か片面かはわかりませんでしたが、おそらく片面でしょう。
     この機械で缶室に送風する時、缶室は密閉空間にはなっていないので、「勢い」みたいなものに頼ることになるのでしょうか。文献見ますと、closed stoke hold system (密閉焚火室方式)というものもあります。この場合、石炭投入のため焚き口の蓋を開けた時、火が手前に飛び出すことはありませんか。煙突の吸引力が効いて居るので、その心配はないのでしょうか。 
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  4. えっとですね
    缶の通風には(1)自然通風(2)誘引通風(3)強圧通風の3種が有り艦船には(1)(3)が用いられます
    んで(3)には以下の2種が有り
    3A 缶室密閉式closed stoke hold system  石炭専焼缶および炭油混焼缶用 缶室全体を密閉して送風機で正圧を掛ける
    3B 缶室開放式open stoke hold system  重油専焼缶用 缶室を二分し缶本体のみ密閉して送風機で正圧を掛ける
    金剛は3Aであり缶室の天井に送風機を設置して外気を取り込み缶室内に吐き出す
    ・・・となっておりますので投炭時のバックファイアはありません
    缶室密閉式は室内の気圧増大により缶焚きが疲労し会話もしにくくなるので焚口を開けなくて済む重油専焼缶は缶室開放式を採用します
    駄レス国務長官

  5. 駄レス国務長官様 詳しい説明ありがとうございました。ということは、私の見た送風機は本来ならボイラの上方に定置されるものだったのですね。これでは、博物館のロビーには置けません。
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  6. 駄レス国務長官様 その後調べていましたら、ハウデン式強制通風装置(Howden mechanical (forced) draught system) に出会いました。これも、closed stoke hold system の範疇に属すると考えているよろしいですね。ハウデン式は、タービン駆動軸流送風機を使用するらしいですが、上記金剛の往復式機関駆動のものとの使い分けはどのようになっていたのでしょうか。
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  7. ハウデン式は商船円缶に多用され燃焼空気は送風機で缶前の空気予熱器を経て焚口周辺より缶内に送り込まれるので分類上は缶室(焚火室)開放式に属します
    送風機のレシプロとターボの使い分けは後者が高回転でも振動が少ないことより燃焼空気量の多い重油専焼缶もしくは送風機を小型化したい中小艦艇に用いられます
    駄レス国務長官

  8. 駄レス国務長官様 ありがとうございました。私の理解がまだあやふやでした。牧野茂さんの「日米戦艦比較論」の第4節1.大和主機関決定の経過 の最後部分には「開放式ボイラー室の採用は米海軍より10年早く...」とありますが、この意味は、重油専焼化がアメリカより早かったということになるのでしょうか。 

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  9. 石油を産しない本邦の海軍が産油国の米海軍に先んじて重油専焼艦を造るなんてことはありえませんね
    米海軍の重油専焼化は1908年より起工の駆逐艦ポールディング級が草分けで戦艦では1912年起工のネヴァダが最初
    日本海軍の駆逐艦では1916年起工の江風・谷風が最初で主力艦では八号型巡戦(計画のみ)
    缶室開放通風は1921年起工の神風(2代)が最初だが米艦については調査中
    過渡期には新旧方式が混在するのが普通で一気に切り替わることはむしろ少ない
    あと牧野氏は造船屋なので機関に関しては時々的外れなことを言うから要注意(福井氏とかも)
    駄レス国務長官

  10. 駄レス国務長官様 詳しい情報ありがとうございました。また注意事項もありがとうございました。
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