971  イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦は軽量化のために燃料タンクを小さくしていますが、これはどのくらいの効果があったのでしょうか?
 他の条約型戦艦では重量削減のために燃料タンクの大きさに気を払っている記述を見かけていないので気になっています。
ナマケモノ

  1. 逆に質問させて下さい。「軽量化のために燃料タンクを小さくした」とは初めて聞き(読み)ました。出典は、何でしょうか。
    私は、行動予定海域が地中海であるため、航続距離が短いという説明を信じていました。
    UK

  2.  Wikipediaのヴィットリオ・ヴェネト級戦艦の項には、たしかに「設計段階で燃料タンク自体の大きさを小さくして浮いた重量を武装や防御に回した結果であった」と記されているのですが、これは英語版、イタリア語版の同項には記載がありませんし、菅見の限りでは他に見当たらない記述です。その上、その出典も記されていないのですが、基準排水量は満載排水量から燃料と予備水を除いたものですから、それでワシントン条約における制限から逃れる何らかのメリットがあると思えないのです。どなたが書いたのか知りませんが、私にはよく分からない記述です。
     
    hush

  3.  調べなおしてみたところ、ベルッゾー式タービンという軽量だが巡航時の燃費が良くない機関のせいで航続距離が短くなったという記述をみつけました。
     出典がよりにもよって艦これwikiですが、ジュゼッペ・ベッルッツォが設計したタービンがヴィットリオ・ヴェネト級に使用されたという記述がイタリア版wikipediaにありましたし、アメリカ合衆国特許第1,865,551号がベルッゾー式タービンらしき記述なので、燃料タンクが小さいという記述よりは信憑性があると思います。
    ナマケモノ

  4.  Ermingo Bagnasco著"The Littorio Class: Italy's Last and Largest Battleships"に"It was also determined that the dry weight of the entire propulsion machinery would be 2,200 tons and that the minimum weight of the liquids (lubricants, water for the boilers, etc.) contained in them would be about 155 tons."とあり、同級の機関重量は合計で2350tとなります。これは大和級の4000tはもちろん、金剛級の2700tよりも小さいのに、13万馬力を発生させています。
     Wikipediaの記述は、軽量高出力の機関を採用することにより浮いた重量を武装や防御に回したが、機関の特性により、航続力が犠牲になったが正しいのかもしれません。
     
    hush

  5.  なるほど、ヴィットリオ・ヴェネト級の航続距離か短い原因は燃料タンクではなく、機関にあるということで間違いないようですね。
     ご回答ありがとうございました。
    ナマケモノ

  6. 4>挙げられた文献は読んでいませんが、世界の艦船No,394号の牧野茂(旧海軍造船官)著「日米戦艦比較論」によると、大和の機関重量は電気関係を含めて約6400トン、含めないと5300トンです。なお、米国のNC型とSD型(蒸気条件は、約450℃、40気圧)は電気を含めて3499トン、3637トンです。なお、伊戦艦の蒸気条件は、世界の艦船654号によると、大和と同じです。何等かの誤りがないでしょうか。
    5> 丸スペシャル115号によると、計画段階の大和の試案であるA−140F3(Dが6万HP、Tが7,5万HP)では、航続距離が16ノット4900海里で艦の長さは246m、航試排水量は61000トンであり、航続距離が7200海里のなったF4では248m、62545トンとなっています。
     さらに、前記世界の艦船654号によると、英国のヴァンガードは、12ノットで5500海里です。伊戦艦は16ノットで4580海里です。
     従って、5のようなことは考えられません。
    2> 伊戦艦は、海軍大臣の判断で、対外的には3,5万トンとするが、最初から4万トンを超える設計です。なお、米国の戦艦が4万トン以下なのは、6インチ副砲を廃止し、両用砲の防御装甲は廃止し、高温高圧のタービンを採用し、速力を抑えたことによります。
    UK

  7. >6.
    伊ヴェネト級の機関の重量対出力は130,000/2,405=54(shp/t)で仏リシリュー級の150,000/2,865=52(shp/t)や米アイオワ級の212,000/4,797=44(shp/t)を抜いて列国最高です(世艦753号 ド級戦艦のメカニズム「機関」参照)
    半面ヴェネト級のベルッツオ式タービンは巡航タービンを持たないので巡航燃費は列国最悪です
    従って>4.の見解はおおむね妥当と言えるでしょう

    また計画段階の大和試案の計画値を持ち出していますが実際に建造された各級の実測値と比べる意味が判りません
    あと英戦艦は軒並み航続力が小さくヴァンガードはKGV級よりもむしろ劣る程度です
    駄レス国務長官

  8. >7
     フォロー多謝。
     しかし、専門の方の仰ることは重みがありますね。
     
    hush

  9. 機関部の重量は、牧野氏と伊、仏戦艦とでは、区分(定義)が相違するからと思われます。
    大型艦の場合、航続距離を多少変えてもボイラ等は実質同じなので、基準排水量はそう変化しません。勿論、公試排水量は、燃料分は変化しますが。
    伊戦艦は、地中海での作戦を考えている為、そう航続力が短いとはいえないと思います。
    本来の質問への回答になりますが、戦艦に限らず、兵器の開発に当たっては、条約、予算等の制約の下で可能な限り使用者(軍人)の要求を満たすべく種々の案が検討されます。伊戦艦も、全ての要求を満たすと4万トンを超え、3.5万トンの制約に収めることは困難なため、最終的には海軍大臣の判断で対外的には3.5万トンで押し通すことになったそうです。しかし、あまり超えるのは問題となります。その結果、航続距離を含めて種々の妥協がなされたと思います。其の辺の話に、脚色がなされたのではないでしょうか。
    UK

  10. >9.
    >区分(定義)が相違するからと思われます。
    区分は「船体・機関・兵装・防御・燃料と水」なので大きな相違は無いと考えます
    同一尺度による>7.の文献では米ノースカ級121,000/3,286=37(shp/t)大和型150,000/5,083=30(shp/t)ですから伊ヴェネト級が重量対出力最高という結論は変わりません

    >ボイラ等は実質同じなので、
    単に蒸気性状が同じだから機関重量も同等と言うワケでは無く方式や構成で著しく変わります

    >本来の質問への回答になりますが、
    本来の質問はそこではありませんね
    駄レス国務長官

  11. 本来の質問は、燃料タンクを小さくした効果です。
    もうこれだけにしましょう。
    UK

  12.  イタリア語版WikipediaにV.V級の燃料搭載量はビスマルク級の7,700tより3,700少ない4,000tという記述がありました。両艦とも基準排水量が41,000tぐらいですから、V.V級が燃料タンクの小さい戦艦というのはそれほど間違った記述でもないようです。
     ところでイタリアの戦艦はプリエーゼ式水雷防御というものを搭載しているのですが、図を見ると他国の戦艦が採用している液層防御よりも燃料が入る場所が少ないような感じがしなくもないのですが、もしかしてこれのせいで燃料搭載量が少なくなっているのではないのでしょうか?
    ナマケモノ

  13. >10.
    燃料搭載量は作戦上の要求によって決まり伊ヴェネト級は地中海全域往復+戦闘分で4,000トンの計画ですから防禦その他によってそれ以上削られたワケではないと思いますけど
    駄レス国務長官

  14. >12
     リットリオ級は案外と小ぶりなんですよね。 http://www.kbismarck.com/genedata.html こちらの表が分かりやすいと思うのですが、ビスマルクはもとより、リシュリューよりも全長がかなり短い。幅もそうですが、吃水はあまり変わらない。排水量はかなりあるのですが、装甲は厚いのに総重量はかなり軽いし機関重量もそうです。不思議な艦形だと思うのですが、この結果として燃料タンクが小さいというのはあり得るでしょう。
     もっとも、日本を含む欧米列強のうちで、イタリヤだけは航続距離をあまり気にしなくてよいので、燃料タンクが小さいというのは優先順位が低いというだけで、武装や装甲のために小さくしたとまではいえないと思います。
     なお、プリエーゼ・システムPugliese systemについては、たしかに嵩張るのかもしれませんが、外筒部分に液体を入れることになっており、燃料をいれることも可能だと思っています。ただ、"The Littorio Class: Italy's Last and Largest Battleships"に掲載されている燃料タンク(ここには常備3700満載4228tとあります)の位置を見ていますと、どうやら、ここは燃料タンクとしては使っていなかったようです。
     

    hush

  15.  すいません、かぶりました。

    hush

  16.  なお、"The Littorio Class: Italy's Last and Largest Battleships"はGoogleで書籍検索を行いますと読めます。リットリオ(ヴィットリオ・ヴェネト)級を調査されるのでしたら、有意義かと思いますので、いらぬことかと思いますが、紹介させていただきます。
     
    hush


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