960 松型駆逐艦のWikipediaには
・ 巡航タービンは前部機械室(左舷用タービン)にのみ置かれていた。   
とあり、確かに海軍造船技術概要や昭和造船史には同内容のポンチ絵が記載されていますが、これは事実でしょうか?(鴻型水雷艇のポンチ絵も同様。)

以上の内容は把握はしていましたが、以前は
・巡航タービンは両舷軸に置かれていて、書籍の内容は記載ミスだろう。
と考えていました、なんとなく。

ところが見落しがありました。

これまたWikipediaですが、橘型駆逐艦の項で、
・機関関係では中圧タービンと巡航タービンが省略された。  
との記載ありです。(ちなみに昭和造船史ではHIL-Tと記されています。I:intermediate。)

この巡航タービンの記載も事実でしょうか?


橘型駆逐艦の巡航タービン不採用が事実とすれば、また、松型駆逐艦と橘型駆逐艦で航続距離がそれほど違わないとすれば、松型駆逐艦は基準速力時に巡航タービンを使っていなかった事になります。逆に(普通に考えて)基準速力時に巡航タービンを使っていたと考えると、橘型駆逐艦にも巡航タービンはついていた事になるかと思います。

以上を纏めますと、
→ A) 松型駆逐艦・橘型駆逐艦ともに巡航タービンがあった。
  A-1) 書籍の通り松型駆逐艦には片舷軸にだけ巡航タービンがあったが、片舷軸は巡航タービンで、もう一方の片舷軸は主タービンを使って航海していた。
   A-1') 書籍の通り松型駆逐艦には片舷軸にだけ巡航タービンがあったが、巡航時はまさかの片舷軸運転だった。
   A-2) Wikipediaとは全く異なり、松型駆逐艦・橘型駆逐艦ともに両舷軸とも巡航タービンがあった。
   B) 松型駆逐艦・橘型駆逐艦、また鴻型水雷艇にも巡航タービンがなかった。
   C) 松型駆逐艦には巡航タービンがあったが、橘型駆逐艦には巡航タービンはなかった。
    C-1) Wikipediaの通り松型駆逐艦には片舷軸にだけ巡航タービンがあった。しかし巡航時に使われていなかった。
     C-2) 書籍と異なり松型駆逐艦には両舷軸に巡航タービンがあったが、巡航時に使われていなかった。
   D) その他

...疑問の組み合わせで魔方陣のようになり、上手く纏まっていませんが、ご意見よろしくお願いします。(個人的にはA-2、B、C-2のように両舷軸で同じだろうとは考えていますが、思い込みの可能性もあります。両舷軸で違う機関の艦、日本艦もあるよという場合は是非ともご教授下さい。)

太助

  1. AとA-1以外全部×ですね
    鴻型と松型は左舷機のみ巡航タービンを備え巡航時は巡航タービン排気を右舷機高圧タービン排気室に導入し中圧タービン以下を運転しました
    某記事のように高中低圧三胴タービンの中圧のみ省略とゆうコトはそこでの熱落差(蒸気の膨張)を高・低圧両タービンに割り振らねばなりませんので基本設計からやり直しとなります
    駄レス国務長官

  2. 早速の回答ありがとうございます。

    A-1)が正解ですか。
    4軸艦の外舷軸・内舷軸でその方式が採用されるのはすっきりするのですが、2軸艦で採用した場合、左右軸の発生馬力・回転数の比率は各負荷帯で適切に管理できるものなのでしょうか?まあ舵があるので結果的には問題なしなのかもしれませんが、若干気持ち悪いです。

    何か確認できる資料・書籍があればご紹介頂きたいです。防研に線図なぞがあれば嬉しいんですが。


    橘型駆逐艦の中圧タービンと巡航タービン省略の件は、出所は多分ここですね。
    アジア歴史資料センターにて
    「建造中水上艦艇主要々目及特徴一覧表」
    で検索をかけると資料が出てきますが、橘の摘要(特徴)欄に
    「中圧及巡航タービン撤去」との記述ありです。

    仰られる通り、戦時急造量産艦に(実績のない)新規タービンを載せるのは考え難いと小生も思いますが、ご参考まで。

    太助

  3. ガバナでしょうか?

    太助

  4. 鴻型の巡航減速装置要目によると17.5ノット/1800馬力では左右とも240rpmなのですが、
    巡航超過全力20ノット3,000馬力では左舷軸が1300馬力270rpm、右舷が1700馬力292rpmと排気を主タービン
    に導入する側のほうが出力が高くなってしまっていますね。

    同じ条件と思われますが、松型も3000馬力で左舷が218rpm、右舷が238rpmです。


    左右の不均衡については以下の画像資料で合計軸馬力が3000なのに対し、巡航タービン単体は1210となっており、
    排気導入側のほうが高出力となっているのが確認できるかと思います。

    旧海軍資料、臨機調 報告第21号(鴻型主「タルビン」ニ対スル分)画像7
    http://www.lib.kobe-u.ac.jp/kichosyo/shibuya/17-033/index.html

    生産技術協会編『蒸気タービン設計法』あたりが一番手っ取り早いと思いますが、鴻しか載っていなかったような…

    kimurada

  5. >>4
    回答ありがとうございます。
    ご紹介の資料の画像2でも、巡航タービン周りの状況が確認できました。

    ところで、船って左右軸の回転数が異なるのは普通なんですか?
    質問ばかりで申し訳ありませんが、判る範囲でお願いします。

    P.S.
    ご推薦頂いた『船用蒸気タービン設計法』はまだ内容を確認しておりません。古書店にもなさそうなので、国会図書館あたりで閲覧して来ようと思います。

    太助

  6. 2軸推進艦艇でこういった跛行運転を前提としている機関というと、神風型、
    睦月型
    に昭和7年頃から新設された誘導タービンがよく似た例として思いつきますね。

    巡航タービンをもたない旧型駆逐艦の航続距離延伸のため主タービンは片側のみの
    減軸運転とし、他方を補助排気、もしくは補助蒸気で小型のタービンを「抵抗にも
    推進力にもならぬ程度に」回してやり、遊転する推進器の抵抗低減を狙ったものです。

    昭和造船史にも妙高・高雄型で言及されていますが、上記駆逐艦以外にも5500トン型で
    巡航タービンを持たない鬼怒・神通、大改装時にタービンを更新しなかった長門型にも装備されており、
    神風で250馬力、長門で16ノット時350馬力2基とほんの小さなモノだったようです。


    kimurada

  7. 『蒸気タービン設計法』『船体及び機関関係特殊資料』によると鴻の
    巡航タービン要目は以下のようなものです。

    巡航全力
    1800SHP/240RPM
    巡航超過全力
    3000SHP/281RPM
    巡航許容全力
    6000SHP/355RPM
    装備位置
    左舷中圧タービン艦首側
    排気導入先
    右舷高圧タービン排気室


    kimurada

  8. >7.で
     巡航超過全力 3000SHP/281RPM
    ってコトは左舷軸1300shp/270rpm、右舷軸1700shp/292rpmの和と平均を取ったんでしょうけど
     巡航全力
     巡航許容全力
    もプロポーショナルと見ていいんでしょうか?
    駄レス国務長官

  9. 巡航減速装置要目(原勝洋氏『巨大戦艦「大和」全軌跡』所載資料と同様のもの)によると
    巡航全力
    17.5kt
    両240rpm
    巡航タービン単体980shp

    巡航許容全力
    24.4kt
    両354※(なぜ1少ないのか…)
    巡航タービン単体980shp

    となっており、備考として「巡航最大速力(原文ママ)は巡航タービン操縦弁を閉鎖しつつ左右両舷HPに送気す」
    とあるので巡航超過全力1300shpより単体の出力は低下しているようです。
    kimurada

  10. 失礼しました、巡航許容全力時の単体出力は970shpです
    kimurada


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