919 イタリアの戦艦が使用したtc鋼というのが第二次大戦で最高の表面硬化鋼と聞いたのですが、これはどの様な物だったのですか?
また、これについて書かれた資料や書籍等はありますか?
Mk.63 GFCS

  1.  tc鋼というのはTerni Cemented armorの略だろうと思っております。この鋼については、ネット上では、一部でこの時代の最高の装甲という評価が書かれたものもありますが、真偽は存じません。ざっと検索した限りでは、テルニ社(後のOTO))の開発したニッケル鋼のようですが、専門外ですので、"Terni Cemented armor"等でお調べ下さい。
     
    hush

  2. わかりました。
    もう少し調べてみます。
    Mk.63 GFCS

  3. ネットの情報から推察すると、種類としては、炭和・表面硬化甲板(cemented)(hardened)で、表面の炭和層(網)の組成が優秀で、非常に硬かった様ですね。
    因みに、ご存知かとは思いますが、戦艦大和のVH甲板は非炭和・表面硬化甲板(non cemented)(hardened)で、これは410mm厚の装甲を作るに至って、炭和層は不要とされた為です。

    炭和=浸炭によってセメンタイトを形成すること
    Luna

  4. ところで、表面硬化鋼の表面硬化がどこの部分を指すのか曖昧な文章がネット上を問わず多いようです・・・。浸炭によって出来た炭和=セメンタイト層(網)を言うのか、表面焼入れによって出来たマルテンサイト層を言う(含む)のか・・・曖昧で分かり辛いです。
    ウィキペディア(日本語)のクルップ鋼の解説では、テルニ鋼(*1)はニッケルとクロムを含むクルップ鋼のライセンス版だそうですので、クロムカーバイドの析出したセメンタイトの超硬化層を最表層に、マルテンサイト組成の硬化層を表層として、裏層は硬化層を裏打ちする為に充分な厚みを持った靭性の高いソルバイト層になっていたと思います。
    一方、浸炭を行わないVH甲鈑はシンプルにマルテンサイト層が表面硬化層です。410mm甲鈑では、135mmがマルテンサイト層でした。最表面数ミリ(*2)の硬さでは浸炭された戦艦長門のVC甲鈑の方が硬い訳ですが、戦艦大和のVH甲鈑135mmのマルテンサイト層は隔絶したものでした。
    この表面硬化作業にはちょっと面白い話があって、VH甲鈑製造以前までは、表面焼入れ作業に際して、甲鈑を加熱炉から取り出す時期をただ一人の熟練者以外は決定できなかったそうで、その人が病気の時は操業を中止していたそうです。VH甲鈑製造以降は論理的学術的手法に変更されたそうですが、まるで刀工か何かみたいですね。テルニにもそんな職工が沢山居たのかも・・・。

    【*1】テルニはイタリアの都市、製鋼所の名前でテルニ鋼はテルニ式塩基性平炉で製鋼
    【*2】佐々川清「装甲鈑製造についての回顧録」によると浸炭深さ約7ないし10mm
    Luna


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