916 大鳳の爆沈についてお尋ねします。
多くの記述に「突然爆発した」とあるので、上層部(少なくとも小沢中将)は危険を認識していなかったことが示唆され、この意味ではこの事象は人災と言えます。

さて、どの記述を見ても前部エレベーター口を塞いだために、ガソリン蒸気が格納庫に充満して爆発に至ったとあり、定説のようになっていますが、これはどうなんでしょう。
奥宮正武氏の著作を見ると、司令部付として大鳳に乗艦していた塩山技術大佐という人が、この閉塞作業に立ち会い、それが終わって艦橋で報告したのが一四〇〇頃(ちなみに被雷が〇八一〇で爆発は一四三二)とあります。

(1)つまり閉塞作業が終わってから爆発までの時間が短く、作業をやろうがやるまいが結局爆発は起こったのではという疑問が生じます。このあたりの経過に詳しい方がいましたらご教示ください。あと、前部エレベーターが止まった位置はどこでしょう?
(2)ダメージコントロール責任者(運用長?)が不慣れだったとの記述を見たことがありますが、これの真偽のほどは?
(3)爆発の危険を認識し、進言した者はいなかったのでしょうか?
(4)実際問題格納庫の喚気を行う抜本的方法はあったのでしょうか?

以上、ご教示いただければと思います。

とおり

  1. (1)のみ
    ガソリン蒸気は比重3〜4で空気(同1)よか重いので上方に拡散せず低所に停留しますから前部エレベーター口を塞いだこと自体は無関係じゃないでしょうか
    駄レス国務長官

  2. なるほど、駄レス国務長官さんは定説の中の因果関係には否定的なわけですね。

    ちなみに、ガソリンタンクの中身の投棄というのは技術的に困難だったのでしょうか。
    とおり

  3. >2.
    被雷時に亀裂を生じた軽質油タンクは水線下ですから汲み出すにしても時間が掛かりますし艦周囲の海面に広がればまた問題になるかと
    活性炭みたいなのを大量に投下して吸着させるなんてのは如何でしょうか(思いつき)

    駄レス国務長官

  4.  https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E9%B3%B3_(%E7%A9%BA%E6%AF%8D)
     こちらは御覧になられましたでしょうか。Wikipediaですので、正しいのかどうかは存じませんが、(2)以外は大体の回答が出ています。
     なお、藤井非三四著「レアメタル」の太平洋戦争(2013年Gakken)に、大鳳の軽質油管が、物資不足のために、白銅ではなく、鋼製であった可能性を指摘している部分があります。このため、接合部が外れて艦内に燃料が漏れたという考えです。
     また、 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ran/46/0/46_KJ00001929649/_pdf は、興味深いのでご一読をお勧めします(2は1ページ目しか見つかりませんでした)。
     
    hush

  5.  https://www.jstage.jst.go.jp/article/ran/47/0/47_KJ00001930024/_pdf
     こちらが2です。
     
    hush

  6. >3

    給油のために格納庫まで配管が来ていますよね(違います?)。そこから先で何か捨てる手段がなかったのかなと。

    >4, 5

    すみません、なんとWikiを見落としていました(引用文献の「丸」にヒントがありそうですね)。しかし「大爆発1,2」の文献は良いですね。理論的に状況が考察されており、ガソリン漏出とか混合気爆発のイメージが具体的になりました。多謝です。

    ちなみに火気厳禁などの話はあちこちにありますね。そんな状態で戦闘できるはずもないですが、なぜ艦長が一時避退の判断をできなかったのかが疑問です(実態を把握していなかった?or把握していたが、爆発しないと思っていた?or手遅れと思って放置した?)。


    とおり

  7. >6
    >そんな状態で戦闘できるはずもない
     なぜ、そう思われるのですか。爆発の瞬間、艦は着艦を行っています。
    >なぜ艦長が一時避退の判断をできなかったのか
     船体放棄という意味でしょうか。艦は、事態に対応しようとしているのに、放棄しようという艦長がいたら、そちらのほうが問題でしょう。
     
    hush

  8. >6.
    >給油のために格納庫まで配管が来ていますよね(違います?)。そこから先で何か捨てる手段がなかったのかなと。

    引火物を広範囲に撒き散らさず可及的速やかに局所に閉じ込めるべしというのが>3.の主旨です
    駄レス国務長官

  9. >7

    爆発の原因はご紹介いただいた文献2(あるいは巷の定説)によるとガソリンと空気の混合気になんらかの火花etcの着火とありますね。多分着火の元は永久に分からないかと思いますが、文献2にある機体の着艦(前部エレベーター付近での排気炎かブレーキの摩擦etc)だったと仮定しますと、この時は敵機が来ていないので、着艦自体は通常の飛行作業とあまり変わらない状態と思われます。しかし、それが原因で爆発が起こったとすると、これは艦自体が戦闘どころか、通常の作業にも耐えない状態になっていたと結論できます。
    (ちなみに戦闘とは敵の攻撃を受けている状態をイメージしております。おそらく塞いだ前部エレベーター部に銃撃を受けただけでも爆発したのではないでしょうか。つまり、戦闘時には非戦闘時よりも爆発の機会がはるかに多くなることが容易に推察されます)

    では、着火の原因が艦内の火花だったとします。これはさらに性質が悪く、交戦とは関わりなく、通常に、当たり前に艦内で起こっている事象の範囲内で着火・爆発が起こったことになります。従って、この場合も、戦闘どころか通常の作業にも耐えない状態だったということが分かります。
    つまり、結論としては、一四三二の時点では、如何なる手段を取っても手遅れだったということです(奇跡的な幸運が無いかぎり)。

    では、被雷した〇八一〇直後にすでに手遅れになっていたのでしょうか。百パーセントとは言えませんが、よほどヘマをしない限り、爆発の危険は無かったと考えられます。その後も艦内では第二次攻撃の準備をしており、着艦した飛行機もたしかあったと思います(つまり火花も結構出ていたと思われますが、爆発しなかった)。

    従って、手遅れでない状態(〇八一〇)から、手遅れ(一四三二)に至るまで、どこかに分水嶺となるべき時期があったと考えられます。爆発するかどうかは多分に運の要素も絡むと思われますが、その分水嶺時期以前に戦場から避退し、修理に専念していれば、艦の喪失は防げた可能性があるというのが私の結論です。
    もちろん、分水嶺がいつなのかは誰にも分からないでしょうが、少なくとも戦場から避退しなかったゆえに最善の対策は取れていなかったと思います。

    ちなみに、常識的に考えれば、ガソリン漏出個所は前部エレベーター下方付近ですから、混合ガスを格納庫に充満させないためには、後方(たとえば後部エレベーター)から前方に流れる気流を作るべきだったと考えております。多分当時もこれを考えた人はたくさんいたと思われますが、戦場にいては、そんなこと(最低限、艦尾を風上に向ける)ができるはずもなかったということでしょう。

    「文献2」にあるガソリン気化をかなり防げる手段(泡沫消火剤)に当時の人が思いいたらなかったのが残念です。



    とおり

  10.  攻撃する相手を見つけ、搭載機を発艦させ、収容し終わるまでを戦闘と考えておりました。したがって、用語の解釈の違いなのだろうと思いますが、戦闘時でなく、作戦時とすべきでした。失礼しました。
     大鳳の格納庫側面は爆発事故が起きた場合に吹き飛ぶように開口部を鉄板で覆っています。実際、乗員は側壁を破壊していますが、これは、前期の開口部の蓋を外したという意味だろうと思います。さらに、換気装置を最大にしております。また、泡沫消火装置は1921年に日本でも発売されており(これがフォーマイトFormiteという会社のものだったので、泡沫と名付けられたとか)、 http://www.shippai.org/fkd/cf/CB0011023.html によれば、大鳳は泡沫消火装置を採用しています。
     したがって、当時としては考え得る限りの対策を立てており、指導部としては、魚雷1本程度ではこの艦は沈まないと信じていたのだろうと思っています。つまり、実態は把握していたが、作戦行動を停止するほどの状況下になかったということなのでしょう。
     
    hush

  11. >10

    >つまり、実態は把握していたが、作戦行動を停止するほどの状況下になかったということなのでしょう。

    多分、指導部は爆発するとは思っていなかったのでしょう。


    ちなみに泡沫云々は、「大鳳の大爆発1」p64、「2」でも言及があります。
    とおり

  12. >11
    >言及があります
     はい、ありますが、大鳳には装備されていなかったような書き方ですので。
     
    hush

  13. >12

    ご指摘感謝いたします。
    とおり

  14. 前後部エレベーターを両方下げられれば格納庫内の通風をはかれた、ということなのかもしれませんが、そもそも前部エレベーターが上から1mくらいで停まって動かなくなっているのですから、その後にその1mを埋めて上を飛行機が通れるようにした措置とは無関係に「駄目」だったのじゃないかと思います。

    上記見解にたつならばあまり意味のある論議でもないことだとは思いますが、「閉塞作業」というよりは「地ならし」であるわけですから、一四〇〇になって突然塞がったわけでもないのではないかと思います。


  15. >14

    ご指摘ありがとうございます。私もそのようなイメージを抱いています。
    前部エレベーターの止まった位置が飛行甲板艦下1m程度ということなので、甲板の厚さや天井の鉄骨等を考えれば、塞いでなくても通風孔たりえる隙間はもっと狭かったかなと想像しています。

    あとは、格納庫内にある、防火鎧戸なるものの隙間を塞いで、混合気を前方の空間に限局できなかったのかとか、逆に全部開放して、後部エレベーターから、格納庫内を吹き抜ける気流を作れなかったのかとか、いろいろ疑問が生じるわけです。
    (このあたりは、塩山大佐の著作もあるようなので、ある程度情報が得られるかなと考えています)



    とおり


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