910 1990年代以降、セミアクティブレーダー誘導(SARH)の空対空ミサイルに代わってアクティブレーダー誘導(ARH)方式のAAMが急速に普及しましたが、それと比較して艦対空ミサイルのARH化はスローペースに見えます。
SM-6とかアスター30とか、その手のミサイルが無い訳ではないですが、我が国の艦隊空ミサイルも現状SARHです。

一体、何故なのでしょうか。

例えば日本にはAAM-4の開発実績がありますし、シーカーが作れないなどという訳ではないと思います。
また、開発に成功すれば高性能な防空システム艦でなくても同時交戦能力が飛躍的に高まるメリットがあるように思います。
既にこうしたミサイルが大々的に普及していても良さそうに感じるのですが・・・。
みいつ

  1.  アクティヴ誘導の場合、シーカーが必要な分、嵩張りますし、価格も高くなります。しかも、シーカーを小型化する必要がありますが、ずっと大きなレーダーである艦艇用のそれと比べると、性能はどうなのでしょうか。むしろ、同時に多数の照準、誘導を行えるイージス・システムのほうが効率がよいのではないでしょうか。
     空対空ミサイルにおいてアクティヴ方式が優勢なのは、Fire-and-forget、いわゆる撃ち放し能力が必要だからです。しかし、艦対空ミサイルの場合は絶対ではありません。航空機の場合は、照射し続ける間、危険にさらされるからで、それは、艦艇においても一緒ですが、脅威に対応する時間の余裕があります。
     スタンド・オフ攻撃を仕掛ける場合はアクティヴ方式のほうが有利かもしれません。しかし、セミ・アクティヴ方式であっても、間に中継機を置けば問題はないのですから、アクティヴ方式が絶対に有利なわけではありません。
     もしかすると、シーカーの小型化、高性能化が進んで、価格が下がってきたら分かりませんが、現時点では、SAMの場合、セミ・アクティヴ方式のほうに軍配が上がりそうに思います。
     
    hush

  2. ご回答ありがとうぞざいます。

    確かに、空対空ミサイルの場合は発射後に回避運動を取るか、ミサイル誘導(水平直線飛行)を取るかの選択を迫られる点で艦対空ミサイルとは状況が違い、それが戦闘結果に与える影響は大きいですね。

    この質問の原点には、艦対空ミサイルを中間指令誘導&終末アクティブレーダー誘導にすれば、イルミネーター数などに制限されず同時交戦能力を高められ、高価なイージス艦でなくてもそれに匹敵する対空戦闘能力を得られるのではないか、既存の艦艇に改修を施すことで比較的容易に戦闘力を高められるのではないかという考えがありました。

    hush様が仰るように、ミサイル自体の大型化やコスト増とのバランスが大切ですね。
    みいつ

  3. >1 セミ・アクティヴ方式であっても、間に中継機を置けば問題はない

    中期誘導用のコマンドリンクであれば、中継機を使う手が使えますが、
    セミアクティブの場合、艦上のイルミネータで直接目標を照射する
    必要があります。
    (上空に中継機を置くというのは、イルミネータを空中に置くのと同義)
    なので、アクティブ方式以前のSAMは見通し外射撃はできません。

    つまりアクティブ方式SAMの最大のメリットは見通し外攻撃能力で
    SM-6はE2Dなどのデータを元に見通し外への射撃が可能と言われています。


    taka

  4. >3
     御教示多謝。
     あまり専門外に手を出すものではありませんね。
     
    hush

  5. 同じ誘導弾でも狙う対象が若干異なるのも要因かと思います。

    空対空誘導弾は主には航空機が目標で、>>1で言及されているようなFire-and-forgetが可能なのがARHの魅力でしょう。巡航ミサイルを目標とする場合はSARHでもさほど問題ありませんが、同時多目標となるとARHですかね。

    一方で艦対空誘導弾は(空対空誘導弾が攻撃一辺倒なのに対して)防御的な側面が強く、大型対艦ミサイルからESSMクラスの小型ミサイル、SM-6では弾道ミサイルまでが目標になります。これら多様な目標に対して、(同時期のものを比較的すると)SARHが誘導精度が高い可能性があります。SM-6もARHとSARHの両方に対応しています。

    https://www.raytheon.com/capabilities/products/sm-6

    有人機は攻撃を諦める可能性がありますが、ミサイルはそれがないため、艦対空誘導弾はより確実性が求められる傾向があるように感じられます。自衛隊が調達しているSM-2 Block IIIB なんかもSARH+IRの複合シーカのようですし。

    太助

  6. 複数あるいは多数の目標を艦艇がARHで迎撃する場合には、目標が相互に近い位置あるいは方向に存在すれば、各ミサイルの振分けが困難となる恐れがある、極端な場合全ての迎撃ミサイルが同じ目標に向かってしまう恐れが生じるという記事を読んだことがあります(30年以上昔)。
    UK

  7. かつて、AAM-4をベースにしたARH艦対空誘導弾、XRIM-4の開発が行われていました。しかし、海自はXRIM-4を採用せず、SARHのESSMを導入しました。そのため、当初XRIM-4とセットで防空能力向上を目指したFCS-3系の防空システムには、ESSM誘導のためにイルミネーターが追加されました。
    XRIM-4はその後、陸自の03式中距離地対空誘導弾(改)の誘導弾に採用されました。現在、この誘導弾にブースターを追加した新型艦対空誘導弾の開発が行われています。
    れん太

  8. 皆様、どうもありがとうございます。
    理解が深まりました。
    みいつ


  9. >7
    XRIM-4って名前はちょくちょく出てるんですが、実際に開発試作が

    行われたという、防衛省(当時は防衛庁?)の発表(政策評価など)を

    見たことがないです。(計画倒れ?)

    信憑性の高い記事があれば教えていただきたく。

    中SAM(改)はXRIM-4の復活とも言えますが、流用というより新規に

    開発が行われたという方が正しいように思えます。
    taka


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