909 いつもお教え頂きまして有り難うございます。
まだまだ暑い日々が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

大和型戦艦が一部とはいえ居住区に冷暖房設備を持っていたのは有名ですが、
同時期の他国海軍の艦内エアコン事情はどうだったのでしょうか?
また、日本海軍で居住区に冷暖房設備を持っていたのは大和型戦艦だけだったのでしょうか?

宜しくお願いいたします。
Ranchan

  1.  896に書いたように、旧日本海軍の潜水艦には冷房設備があります。ないと、行動に支障が生じるからで、他の艦種には基本的にありません(大淀にあったという記述はありますが)。大和級にしても、火薬庫の冷却を行わない時に限って、御存知のように、居住区では、士官用と、煙路のある中甲板中央部の兵員室のみ実施されています。
     アメリカでは1925年に戦艦アーカンソーの機関室に冷房が設けられています。また、1934竣工のカトルフィッシュが冷房を設置した最初の潜水艦だそうです。ただ、アメリカ艦艇に空調が標準装備になったのは戦後のようで、戦艦ノース・カロライナを見学した人の話では、戦時中、空調はほとんどなく、乗員は甲板で寝たがったとあります。
     択捉級では、暖房用の補助缶が廃止されていますが、ほとんどの艦艇に蒸気管を用いた暖房が設置されています。これは、どこの国の海軍でも一緒だったろうと思います。
     
    hush

  2. ご回答有り難うございます。
    大和型戦艦の同期(マル3、マル4計画艦)の大艦、翔鶴型航空母艦、「大鳳」、阿賀野型軽巡、大淀型軽巡などなら艦内居住区にエアコンを導入していたのではないか、その割には艦内エアコンの話を聞かない・・・と思いましたので質問させて頂きました。
    また、外国海軍なら居住区エアコンは案外通常装備となっていたのではないかと思っていましたので、米国艦でも居住区エアコンはほとんどなかったとは意外でした。

    ということは、潜水艦や特殊な艦を除き、当時は世界でも「大和」「武蔵」(ひょっとしたら「大淀」)しか居住区エアコンを導入していた軍艦はなかったかもしれない・・・となる訳で、「ホテル大和」「武蔵旅館」と言われてしまうほど贅沢な艦だった、というのも頷ける話だと思いました。
    Ranchan

  3. 歴史群像No.66号(2004年8月号)の「ラプラタ沖海戦」では、「弾火薬庫冷却装置に不具合が発生していたことからラングスドルフ艦長は艦内(弾火薬庫の誤記か)温度上昇を避けるため南緯5度以南を作戦行動海域と定め」と記されています。従って、ドイツのポケット戦艦では、弾火薬庫の冷却に採用していたようです。
    UK

  4. >2
     鄭重な御礼ありがとうございます。
     ついでにイギリスの例を調べてみたところ、空調が採用されたのは、戦後完成のヴァンガードではないかと考えています。
     今日でも、イギリスで売買されている車には冷房がついていないものが多いぐらいで、同国では必需品ではありません。海流の関係で比較的温暖ですが、緯度が51度と樺太中部と同程度と高いせいであろうと思われます。
     このため、2次大戦で使用されたS型潜水艦でも冷房はないぐらいでしたので、水上艦艇も装備しておらず、インド洋、太平洋での行動時には、大変だったようです。ヴァンガードでの採用は、その反省の上にあるものではないかと思っております。
     これに対し、戦後も戦後、もはや戦後ではないと言われた後にクーラー(当時はエアコンではありませんでした)が普及した日本で、そのような早い時期に、部分的にしろ居住空間での冷房が水上艦艇に採用されたのは、内南洋の実質的領有とアメリカとの関係悪化が大きかったのではないかと愚考しております。
     実際、大阪金属(後のダイキン)が冷房機の試作に成功したのは1934年であり、36年には南海電車に使用されていますが、これは、アメリカがフロンを冷媒とするエアコンを開発し、潜水艦に採用されたと聞いて、顧問だった太田十三男(機11)少将が開発を進言したことに由来するそうです。
     しかし、1902年という早い時期に工場での電気式空調を開始したアメリカが、水上艦艇の居室冷房を行っていないというのは、私にとっても、実は驚きでして、調べる機会を与えられて嬉しく思っています。
    >3
     御指摘ありがとうございます。
     ただ、弾火薬庫の冷却はかなり早い時期から行われていたと思われます。というのは、蒸発を使用する冷却技術は18世紀からあり、1820年にはファラデーがアンモニアを用いた冷房の可能性を指摘しています。また、可燃性、有毒性のある物質を用いた冷却ならば20世紀初頭にはあります。したがって、ドイツに限らず、どこの国でもそれは行っていたはずです。
     
    hush

  5. ふと思い出しまして蔵書を探していました。

    マレー沖海戦を主題とした「戦艦」(早川書房)という本を持っておりますが、それによりますと「プリンス・オヴ・ウェールズ」がケープタウン('41.11/18発)〜コロンボ(11/28着)を航海した時に各所の室温記録をしたそうです。

    その時の記録では

    機関室 :105〜122°F
    工作室  :おおむね100°F以上
    兵員居住区:95°F
    士官個室 :75〜80°F

    となったそうで、兵員用と士官用では室温に差異が認められます。

    ひょっとして、英海軍では士官個室には何らかの冷却手段があったのかな・・・という気もいたします。
    Ranchan

  6. >5
     あの本にそのようなことが書いてありましたか。あまりに遠い昔に読んだので、全然覚えておりませんでしたし、どこへ置いたのかも覚えておりません。
     兵員居住区で95度、士官個室で75〜80度あるということですが、これは華氏ですので、摂氏に直すと35度と24〜27度となります。したがって、華氏では最大20度の違いですが、摂氏だと11度の差となります。
     ところで、11月のケープタウン平均最高気温は23.5度、コロンボのそれは30.3度です。そして、コロンボの11月の最高気温記録は34度ですから、兵員居住区の室温は、それより高かったことになり、士官個室のそれは、平均よりも低いとなります。
     したがって、「何らかの冷却手段があったのかな」という御指摘は正しいように思えるのですが、私は居住区の位置と通風の差であると思っています。というのは、KGV級の士官室は後部上構部後端上甲板部にありますが、乗員居住区は船体内にあると思うからです。そこへ、千数百人に及ぶ兵員が生活するのですから、熱がこもって、多少の通風装置では追いつかなかったと思っています。
     また、湿度が低いと、日陰はかなり涼しいものです。したがって、通風のきちんとした室内であれば、それほどの高温にはならないと思いますが、たくさんの人が生活し、通風がしにくい空間では、耐え難いまでに温度が上昇すると思います。
     
    hush


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