米英日の三大海軍国がたとえば北海を囲んで互いに容易に手の届く範囲に存在していたらそんな考えも生まれるかもしれませんが、現実には米英ともに対日戦は大規模な遠征となります。1920年代の英海軍の極東戦略の悩みどころもまさにその点にありますから、日本海軍に40糎砲戦艦が1戦隊存在する意義は当時の海軍流の発想の限りで言えば大いにあります。突出した性能の艦に対抗するために、補給と整備上の問題に苦しみつつ送り出す所要兵力が増大し、遠征艦隊を確保しづらくなるからです。
英海軍の戦争計画（War　Memorandum（Eastern））をみる限り、陸奥の確保が日本海軍に有利に働いたことは疑えません。

ＢＵＮ

ご回答ありがとうございます。

ご回答を拝読致しまして思ったのですが、｢長門｣一隻では駄目なのでしょうか？
(｢長門｣一隻では、英海軍の負担を増大させる程の脅威とはならないのでしょうか？)
Ranchan

ジュットランド海戦後の砲術はそれまでの最大射程から弾雨を降らせる傾向から離れて、弾薬を浪費しない近距離射撃の再評価、観測による精密射撃、複数艦による単一目標への集中射撃へと動きます。
16インチ砲艦が単艦であった場合、こうした新しい戦術、特に集中射撃戦術が適用しにくくなり、実力を発揮できません。
同型艦が戦隊を組むメリットは大戦中よりも大きくなって来ています。
単艦では高い命中率を得難くそれ程の脅威にならない、ということです。

英海軍は伊勢型、扶桑型をクイーンエリザベスとほぼ同等と評価していますが、それより強力な艦で構成された戦隊が登場すれば、それに対応した兵力を送り出さなければなりません。しかも対抗艦はネルソン、ロドネーの2隻しかなく、これらがいかに優秀であっても船である限り常に第一線にあるとは限りません。

そのような場合、遠征艦隊が戦力的に日本艦隊に優るためにはさらに隻数を増やすしかなく、1920年代前半の試算で１年間の重油消費が６万トンとされる主力艦を増派しなければなりません。
もともと補給、整備面で無理のある英海軍の対日戦争計画でしたが、陸奥の存在はその無理になお一層の無理を強いるものだったと言えます。


ＢＵＮ

ご回答有難うございます。
｢陸奥｣を放棄していれば｢ネルソン｣｢ロドネイ｣｢コロラド(BB-45)｣｢ウェスト・ヴァージニア(BB-48)｣は誕生しなかった訳で、考えようによっては｢陸奥｣一隻が｢ネルソン｣｢ロドネイ｣｢コロラド｣｢ウェスト・ヴァージニア｣の４隻と刺し違える大戦果だったのでは・・・と愚考致しましたため質問させて頂きました。

単に各国の保有戦艦の隻数を見るだけでは本質を見誤るようですね。
Ranchan

その通り。
ドイツ崩壊後の敵対海軍とは日本海軍だけだったことをよく覚えておく必要があります。
そして、それは遠い、極東の地にある、決戦強要しにくい海軍であること。
さらに「ド級戦艦は世界大戦でちっとも役に立たなかった無駄な兵器であった」というネガティブな認識も頭の隅に置いておくと戦間期の戦争計画がより深く読めると思います。
ＢＵＮ

質問者様
戦艦とはがんらい１隻２隻ではなく戦艦艦隊Battle Fleetとして運用されるモノです
米の原案だと日本は長門1・伊勢型2・扶桑型2・金剛型4・摂津1の10隻30万トンですが、摂津は20ノットしか出ませんので艦隊運動についてゆけず、実質9隻で米のコロラド1以下デラウェア級以上の18隻50万トンとあい対するワケで、到底呑めるハナシではないと思いますケド
駄レス国務長官

>6.の訂正
×コロラド1以下
○メリーランド1以下
駄レス国務長官

駄レス国務長官様

しかしそう仰られますと、当時の日本戦艦陣は史実通りでも超高速(長門型・金剛型)と比較的高速(扶桑型・伊勢型)に分かれてしまうわけで、｢摂津｣がいようがいまいが結局纏まった艦隊として運用し難いのでは・・・という気がいたしますが。
(長門型は続く加賀型以降に合わせて速力設定されているので、これは仕方ないですが)
Ranchan

長門型・金剛型はふだんは扶桑型・伊勢型に合わせて随時機動できますケド、全体が摂津に合わせてたら艦隊速力が米戦艦隊よか遅くなっちゃいますからね
駄レス国務長官

(1)｢摂津｣を大改装して最低でも扶桑・伊勢型と同行できる速度性能を付加する
(2)｢摂津｣も追加廃棄し、その代償として米英に更なる軍備縮小を迫る

・・・どちらも無理そうですね。
Ranchan