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1937年5月に開催されましたジョージ6世戴冠記念観艦式に、日本からは重巡洋艦「足柄」が派遣されておりますが、なぜ戦艦ではなく重巡洋艦、その中でも「足柄」が選ばれたのでしょうか? よろしくお願いいたします。 Ranchan |
- 戴冠記念観艦式への参加は儀礼的な任務であると同時に日本海軍にとって大型艦を長距離航海に出す実験の場でもあったらしいことが第四艦隊司令官小林宗之助少将の報告から読み取れます。
「足柄今次の行動は所要日数3ヵ月余り、総航程約2万2千600浬余りに達し酷暑の熱帯地方を含む広区域の海面にわたり・・」
「なお足柄型巡洋艦の比較的高速力を以って致しまする熱帯海面の長期行動は今回を以って嚆矢と致しまするに鑑み、航海中各種の実験研究を実施致しまして有益なる資料を得、又艦隊から分派せられましたる一艦として単艦訓練も相当施行致したのであります。」
足柄の派遣には比較的新鋭の高速巡洋艦で長距離航海を行い経験を積むという意味もあり、旧式戦艦では軍事技術的にも政治外交的にもいろいろな意味で適任とは言えなかった様子が想像されます。
余談ですが、足柄が「狼」に喩えられたのは観艦式の場ではなく、シンガポール停泊中にふくよかな艦容の空母イーグルと並んだ時に英国側から「イーグルは女性を思わせるが、足柄は狼(ウルフと振り仮名)のようだ」と評されたという回想を帰国後の小林少将が日本外交協会調査局のインタビューに答えて語った内容が広まったようです。
またこの評を小林少将はまんざらでもなく思った様子でこんな発言をしています。
「そう言われて振り返って見るとなるほど我が足柄は艦首は尖り上甲板は波を打って細く長く、重い武装を持って居って狼のようにも思われる。」
BUN
- 親善目的の遠隔地への派遣は巡洋艦の主要な任務ですので、重巡が選ばれることは不思議ではないでしょう。
なぜ足柄か、気になってちょっと検索をかけたら下記の文章が出てきました。
選定理由の一部はこの中から読み取れます。
防衛庁、防衛研究所、戦史研究年報 第12号 "軍艦「足柄」の英国観艦式派遣及びドイツ訪問について"
http://www.nids.go.jp/publication/senshi/pdf/200903/04.pdf
れん太
- 訂正 「第四戦隊」でした。失礼致しました。
>2 各国の参列艦は巡洋艦かというと、そうでもないようで面白いですね。
1の引用部分は上の論考の材料ともなっている公文備考昭和12年儀制 巻1の4からですが、機密第776番電「英国武官の陸奥見学取止の件」にファイルされています。
BUN
- 戦艦は図体が大きく重油を沢山消費するし乗組員も多いので経費が嵩むからではないでしょうか
あと昭和12年ちゅうと比叡以外は近代化改装が終わってるので英米には間近で見せたくないとか
駄レス国務長官
- 上の776番電ですが、大阪で英国武官に陸奥を見せる予定だったようです。
BUN
- 時期的に見てコロネーションレビューで秩父宮以下日本代表のみが英旗艦クィーンエリザベスに搭乗を許されたことへの返礼的かつ特定少数に対する特例措置だったのではないでしょうか
駄レス国務長官
- 皆様ご解答有難うございます。
重巡が1国の代表として国際儀礼の場に派遣されるのは特に不思議ではないのです。
ただ、ジョージ6世戴冠記念観艦式ではフランスは「ダンケルク」、ドイツは「アドミラル・グラーフ・シュペー」と当時の両国にとって最新・最強の主力艦を出していますし、旧式戦艦を派遣したソ連とアルゼンチンでも「ニュー・ヨーク」を派遣したアメリカを除きそれしか戦艦を持っていない国、日本で言えば「長門」「陸奥」のようなその国の海軍を代表する艦ばかりで、当時戦艦を保持していたのに派遣していないのは日本とトルコくらいです。
そのような場において当時9+1隻の戦艦を保持していた日本が重巡洋艦程度しか派遣していないのは、艦の格が他国と釣り合わないのではないか、そのような意見は当時なかったのだろうか・・・と思いましたので質問させて頂きました。
確かに長距離航海に関する実験及び経験の取得と位置付けるなら、また経費を考えるなら戦艦では大仰に過ぎたのかもしれません。
Ranchan