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ご指導により、自分で質問させてください。現代の空母が着艦作業をしている際には、風上に向かって直進していることをよく存じております。また、空母には自動操縦装置などは全く装備されておらず、操艦担当者(COまたはOOD?)が操舵員に命じて動かしていることもよく理解しております。その上で: 飛行作業中の空母の操艦は、どの程度機械的(これは自動操縦と言う意味ではなく、「きかい‐てき【機械的】 [形動]3 機械が動くように、意思をもたずに決まった動作を行うさま。『―にページをめくる』」との意味で使用)に直進させているのかを教えてください。 単に愚直に空母を直進させるだけならば、なぜもっと正確なはずのコンピューターなりに操舵をまかせないのか、不思議でなりません。私の知るシーストーリーをよむかぎりでは、荒海での飛行作業中の操艦担当者は、可能な限り艦の動揺を少なくするよう努力をしているように感じられました。肥厚作業を行っている空母の操艦担当者は、全く艦の動揺を少なくしようと考えは、全く頭に入っていないのでしょうか? 豪腕少年タイフーン |
- 初めまして。この度、ROMから脱却しようかと思いまして、参加させていただきます。
空母の操艦についてはお答えできませんが、ヘリの発着艦作業についてで宜しければ参考にしていただければと。
航空機はご存知の通りできる限り風に向かってというのが飛行条件となっています。荒海といっても当然、ロール・ピッチが制限というのがありましてその範囲内であれば基本的には風へ向かっての針路を取ります。波も当然風を受けて発生しますので、風上方向に針路を取れば自然に動揺も減少していきます。飛行作業を実施するにあたり当直士官又は航海指揮官は、風向風速そしてその針路での動揺も加味した上での針路を考慮しています。
操舵関係にコンピューターに任せない理由としては、推測ですがコストパフォーマンスが悪い。状況次第でその針路を保針する時間が極めて限られているとか、気象条件またはその周囲の状況(民間船がいるとかいないとか)という要素が絡んでくるからだと思います。
何だか答えになっていなくて申しわけありません。
プラハの春
- >1.
プラハの春さん
>基本的には風へ向かっての針路を
HSの発着艦の場合、正確に言うならば“風に向かって”の針路ではありません。
HSは基本的に右席が機長ですから、具体的な要領・手順は省略しますがそれに伴う発着艦法の特性があります。 そして空母のような全通飛行甲板型以外では格納庫や煙突・艦橋などの構造物の問題があります。
これらのこともあって、発着艦針路は一般的には相対風を左10〜15度程度で受ける針路(F/L及びT/Lの場合)とします。 勿論これは厳密なものではなくあくまでも目安ですが、少なくとも真正面(艦首)より右からは受けないようにすることが原則です。 したがって、当然ながら風向は常に変動しますので、計測平均風向を真艦首に受けるように針路を取ることはしません。 (相対風向と風速による規定制限値以内なら、物理的には発着艦は可能ですが。)
その他HSに限らず、波うねりと風、そして動揺との一般的な操艦上の問題は、既に下の275番の13及び14でご説明したとおりです。
>推測ですがコストパフォーマンスが悪い。
というより必要性の有無の問題です。 如何にコンピューター制御であろうと、その制御を実際に行うものは舵です。 巨大な水圧に対抗して船の大きなモーメントを管制しますので、船体が左右に振れるのを「ゼロ」には絶対にできません。 これは自動制御というものの宿命でもあります。
(もしHS搭載艦のことをご存じでしたら、フィンスタビライザーがあっても何故ローリングが「ゼロ」にならないかをお考えになれば一目瞭然かと。)
そして、商船などのように基本的に単独でただ単に真っ直ぐ走ればよいものとは異なり、陣形・戦術運動などの微妙な操艦や緊急時への対応などが必要で、かつ頻繁な変針変速をその本能とする軍艦にとっては、メリットは少ないといえます。 現時点ではまだまだ熟練の操舵員の方が自動制御よりははるかに上手く、かつ柔軟対応が効きますから。 それに舵機系統故障の監視を含め常に人の配置は必要なることを考えると、その必要性は極めて薄いことになります。
艦船ファン
- 艦船ファンさん
>HSは基本的に右席が機長ですから、具体的な要領・手順は省略しますがそれに伴う発着艦法の特性があります。 そして空母のような全通飛行甲板型以外では格納庫や煙突・艦橋などの構造物の問題があります。
それは承知しております。説明不足で申しわけありません。私の経験上、非行作業では艦首から受けるのを第一に操艦し、状況によってはなるべく右(風向風速の制限値は各艦毎に違う)からは受けないような針路を取るというところでした。
>これらのこともあって、発着艦針路は一般的には相対風を左10〜15度程度で受ける針路(F/L及びT/Lの場合)とします。 勿論これは厳密なものではなくあくまでも目安ですが、少なくとも真正面(艦首)より右からは受けないようにすることが原則です。 したがって、当然ながら風向は常に変動しますので、計測平均風向を真艦首に受けるように針路を取ることはしません。 (相対風向と風速による規定制限値以内なら、物理的には発着艦は可能ですが。)
私が勤務してきた(護衛艦8隻)ところでは、テールロータの関係で艦首から左がOKで右はなるべく避けるというのが実情でしたが。当然のところ昼間と夜間でも制限値が大きく変ってきます。ただ、艦上ホイストを実施するならば制限値が左舷からという風にはなっています。
自動操舵装置については、現時点必要性はあまり感じられないというのは同意します。そこのシステム開発に時間と人を投入するくらいなら、例えば射撃指揮装置の改修していく方が有意義ですしね。
プラハの春
- >3.
プラハの春さん
ご理解いただいていたようで安心しました。
>テールロータの関係で艦首から左がOKで右はなるべく避ける
はい、相対風の右分力が強くなると「テールローターインスタビリティ」発生の問題も出てくるからですね。
艦船ファン