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雷電の評判が日米軍であまりに食い違うのはどういう理由があるのでしょうか。 特に機体の振動もあまり問題視されなかった、というのが気にかかります。 米軍機が日本軍機より振動が発生しているから、米軍パイロットが振動に慣れていた、という理由では鹵獲機に振動が大きいという日本パイロットの回想からなさそうですし。 チャカ |
- 振動問題どころか、飛行機のこともよく知らない素人ですが、アメリカ人ってマッチョが好きだからではないでしょうか。でかい機体に、大きなエンジンです。しかも、雷電は海軍の単発戦闘機の中では一番B29を撃墜していますから余計でしょう。
しかも、たまたま雷を意味するThunderboltという愛称を持つP47は、雷電よりも一回り大きいですが、大馬力、大火力という点では共通しています。と同時に、小回りの効く機体ではないということも共通しています。
そういう機体に乗りなれた人が操縦すれば、まぁ、悪くはないねとなると思います。そして、多少の振動ぐらい、彼らの膂力からすれば問題なしとなるのではないでしょうか。
そのようなことを思ったのは、雷電に対するイギリス側の評価が、アメリカとは異なるからです。もっとも、彼等は日本人操縦士に試験飛行をさせており、自らは乗っていないようで、そこからも関心が薄かったのは感じられます。
やはり、イギリス人の好みは速度と敏捷性にあり、最新型のスピットファイヤーより遅い雷電に関心を持つことは難しかったと思います。そして、日本人の好みもイギリスのそれと同様ですので、このあたりが日米間の評価の差異に繋がったのではないかと愚考致しております。
hush
- あまりに食い違うという事は、日本側においては失敗作だったという事なのでしょうか。迎撃機としては一番だったのかと思いますが。
上昇力、速度、火力。これらを考えるとそう思います。
末期には振動問題も解消されていたかと思います。
米軍評価には、1の記載の通り操縦席が広かったのも好印象の背景かと。
英軍はまったく興味を持たなかったとの記述も見ますね。
閑人
- 後、このテストがどうだったかは忘れましたが、米軍のテストと日本軍のテストを一緒にしては駄目です。例えば四式戦。米軍テスト時は確か140オクタンの燃料と米製プラグを使っていたと思います。
日本軍は92オクタンの燃料を使っています。
記録が伸びる訳です。
また、試験時の重量も違っていた様な。
閑人
- 振動問題解決の経緯はこちらを
http://www.warbirds.jp/ansq/11/A2001597.html
日本側で不評なのは振動よりも飛行中の故障が多いからです。
とくに動力系統と電気系統の故障が目立ちました。
初期で問題となった振動とは別に、水メタを使うと振動が起きたり黒煙を吹いたりする問題もありました。
比島で米軍がテストした雷電については世傑に記述があり、「飛行特性はおおむね好評だが、離陸時の視界にはいささかクレームがついた。」だそうです。
性能計測にはハイオク燃料を使用し最大速度671q/h(5060m)、高度6100mまでの上昇は5分6秒、実用上昇限度も400m向上した(約12000m?)という数値です。
水メタを使わず存分に高ブーストをかけられたわけです。
燃料のほか無線機も米国製に交換されたそうですので、電気系統もかなり米軍の資材を使って整備されたんじゃないかと思います。
大前提の話をしますと、作戦機の場合は多くの機材を整備しなければなりませんが、テスト機の場合は一機を時間をかけて整備できるわけで、評価の背景が違ってくる気がします。
米軍が比島で雷電をテストしたのはまだ戦時中です。つまり本土でB29迎撃に使われていたのを知っててテストしたのです。
対して英軍がシンガポールで雷電をテストしたのは終戦後です。温度差が出た理由はここかなと考えます。
超音速
- なるほど。皆さんありがとうございます。
英軍からの視点は確かに考えないといけませんね。
チャカ
- 渡部洋二氏の著作によると「(雷電は)零戦ほど手軽に乗りこなせないし、(仕様上当たり前ですが)
運動性では及ばず、視界も劣る。大場力、高翼面荷重から来る癖の強さは経験の浅い搭乗員には乗りこなせないし
零戦になれたベテランに嫌われた例も少なくなかった」「延長軸を用いた動力系や工作精度不十分な電気系統の
故障に泣かされた」とありますが、これは「汎用機では無く、迎撃に向けた結果である」としています。
評判の悪さに関しては、零戦と同じような機体と採っていた運用側と迎撃機として開発した
開発側の差異が有ったのでは?と思いますが、どんなものなのでしょうか。
米側の評判に関しては、大凡上記された方々の書き込みが正解と思われます。
あと余談ですが上記されている閑人様の書き込み、「140オクタンの燃料」ですが、これは100オクタン価で
試験を行っております。130ですとか140オクタン価の表記(昔の書籍に多かったのですが)は
100/130PN(若しくは115/145PN)の勘違いだと思われます。
これはイソオクタン1ガロン(3.785リットル)に四エチル鉛1.28ccを添加したもので、
この時の出力比率が1:1.3となることから上記表記になっているようですね(パフォーマンスナンバー)。
陸奥屋
- TAICのフィリピンの試験では、エンジントラブルのために最大速度の計測は行わなかったことが明記されていますので、レポートの数字は推算値でしょう。
TAICの評価は、よく読むと日本軍側と大きく違いません。下がレポートの結論ですが、機械的信頼性の低さが指摘されており、これは日本側で発生した問題の主因です。
好ましい特徴
1 良好な安定性
2 良好な失速特性
3 快適性
4 良好な離着陸性能
5 良好な性能
6 空戦フラップ
劣っている点
1 ブレーキと方向舵のブレーキアクション
2 重い補助翼と高速での運動性低下
3 機械的信頼性の低さ
4 短い航続距離
ケンジ
- フィリピンのクラーク基地での鹵獲機が映った映像では試験されたと
言われる雷電二一型初期生産型S-12は1945年5月21日以前に廃棄処分に
なっています。
マニラ制圧が3月ですから、その間(短期間)に試験が行われた事に
なるんですがTAIU Manualを見ると日本側データと米軍の想定データの
合成っぽく見えるのですが実際どうなんでしょうね、
陸奥屋
- http://www.wwiiaircraftperformance.org/japan/Jack-11-105A.pdf
TAIC Manualってこれのことですか?
これは比島でテストした21型のデータではなく11型のもので、情報の出どころも鹵獲した日本軍文書からとされるものですよね。
http://www.warbirds.jp/ansqn/logs-prev/A001/A0004699.html
超音速
- 雷電は、実測値が計測されていませんから、エンジンの馬力などから推算した数字でしょう。
昭和19年夏の時点で雷電21型の最大速度は、300ノットに届かなくなっていますので、実測出来ていれば、TAICの評価ももう少し厳しくなっていたかもしれません。ただし、TAICの評価は、飛行機として良く出来ているという内容ですので、その部分は変わらないはずです。
ケンジ
- 素人で申し訳御座いませんが、失速に入る時の挙動が分かり辛いとか、回復不能なスピンに入るとかの記述も見た様な気がするのですが。
暇人
- >9
いえ、それではなく21型のほうですね(私の言ってるTAIC Manual該当記事は)。
頁でいえばManualの105Bにあたる方です。
11型のは105Aからになっています。
陸奥屋
- なるほど。失礼しました。じゃあこれですね。
https://ww2aircraft.net/forum/threads/j2m-raiden.31030/
超音速
- 空技敞の小福田租大尉は1942年5月十四試局戦試作機に搭乗していますが、やはりとういか
「離着陸時の視界の悪さ」「着陸速度の速さ」を指摘しています。ここのところは
どうしても比較対象として”零戦”を考えてしまったようですね。
但し「高性能の代償としては”仕方が無い”」と結論付けていますが。
余談ですが実は陸軍パイロットも雷電に搭乗していまして所謂「互乗研究会」の時(1942年10月頃)の事です。
荒蒔義次少佐が搭乗、「視界は良くないが、ずんぐりとした機体の割には舵の釣り合いが
とれていて乗りにくい飛行機では無い。全体的に悪く無い」と評価しています。
更に二式単戦と比較して「速度と旋回はJ2(雷電)が勝り、上昇力は二式単戦一型が上」
「着陸に関しては二式単戦一型より楽だった」としていますね。
搭乗環境や立場が変われば評価も少しずつ変わってきて面白いモノです。
陸奥屋
- >6
そういった事だったのですか。
目から鱗の感が有ります。
有難う御座いました。
暇人
- 単に「慣れ」の問題ではないでしょうか。
96艦戦から零戦に移行する時も鈍重だなんだといわれたようですし。
アビシニアン