1383 昭和15年頃から19年末までの日本陸軍機の操縦席、あるいは機体内部に塗られていた塗料、塗色に関しご教示頂きたく、投稿致します。

今年始めに横浜で開催されました「零戦についての深いはなし」を大変興味深く拝聴致しました。当時の国産塗料は時間が経つと遍く黄ばんでしまい(特に軽金属塗料)、現在に残るものは程度の差こそあれ、クリアー部分が劣化して酷く黄ばんだものか、侵食によりクリアー部分がなくなり顔料のみが表面に露出し白化したものかのいずれかであるというお話はとても面白かったです。また、軍用機の塗料は、どのような「彩色」を施すのか、という考え方ではなく、機体の場所、材質、構造に適う用途、目的を持った塗料で塗る、という機能面をメインに考えており、航空機メーカー、機種別に塗られている色が異なるということはなく、どの機体においても陸軍、海軍の枠組内であれば基本的に操縦席、羽布、機体内部、外部の下塗り、上塗り、迷彩等は同一の規則に従って適切な塗料を用いて塗装されていたということにとても納得致しました。

ここで疑問に思いましたのは陸軍機の操縦席を含む機体内部に施された塗装についてです。プラモデルのペイント指示書などには明るめの緑色、黄土色など、機体製造メーカーにより操縦席に塗装される色が異なるという説に基づいているように見受けられます。一方で学研の書籍では灰藍色、灰緑色(青みがかった灰色)が陸軍機の機内色用いられたとあります。

零戦の「飴色化」と同様に灰緑色の劣化による「黄土色化」が飛燕のプラモデルの指示書にある黄土色説の根拠であるとするならば、中島製一、二、四式戦の操縦席付近の緑色説は現存部品、機体に残る灰藍色(灰色+濃い青色)が経年劣化し、灰色がかった「緑色」(灰色+青色+黄色=緑色)が根拠とされてしまったのではないかと考えております。海軍機の操縦席が淡緑色に塗られていたこともあり、黄変化した灰藍色の現存機/パーツを見て操縦席が緑に塗られていたと判断するのはとても自然ことかと存じます。そうすると陸軍機の操縦席は末期の黄緑七号を除いて、基本的に緑色で塗られたものはなかったのではないか、と悩んでおります。

上記疑問につき、私の不見識、頓珍漢な点、多々あるかと存じますがご指摘、ご教示頂けたら幸甚です。何卒よろしくお願い申し上げます。


旅人木

  1. 陸軍機の操縦席内部には灰緑色か灰藍色が戦争中期まで使われています。当時の補給塗料の内容からもそれは明らかで、海軍のような淡緑色は供給されていません。無いものは塗れないのです。
    BUN

  2. BUNさま

    シンプルかつ明確なご回答ありがとうございます。
    戦争中期の陸軍機操縦席に塗られた色は灰藍色ないしは灰緑色いずれかとなるのですね。

    淡緑色は海軍のみとのことですが、淡青色の下地塗装は陸軍機に施されていたのでしょうか。脚庫含め陸軍機の機内は操縦席同様灰藍色か灰緑色となるのでしょうか。
    旅人木

  3. > 2
    > 淡青色の下地塗装は陸軍機に施されていたのでしょうか。

    海軍の淡青色と陸軍の淡青色はまったく別の塗色を指すのですが、どちらのことだかおわかりになりますか?


  4. 片さま

    陸軍にも淡青色があるのですね。存じませんでした。
    私の意図したものは海軍機の機内に塗られていた透明青色塗料です。陸軍機の機内および脚庫の表面はこの色で塗られた例があったのか、あるいは操縦席同様、灰藍色か灰緑色が塗られていたのか、というのが質問の趣旨です。

    陸軍の淡青色はどのような用いられ方をしたのでしょうか。

    何卒よろしくお願い申し上げます。
    旅人木

  5. 陸軍の淡青色は、
     下塗 灰藍色
     中塗 淡青色
     上塗 灰緑色
    のように使います。

    それとは別に、陸軍の正規のレギュレーションにはないのですが、
    海軍E4と同じ淡青色透明も一部限られた範囲で使われていたと思っています。
    というのは、一式戦、二式戦のように単座戦闘機のSDC外鈑の表面を無塗装にする塗装法は、本来海軍が九六陸攻、九六戦で使い始めたものだからです。
    海軍機では外鈑SDC機の場合、内面を淡青色透明E4で塗粧することになっていました(本来は艦上機のみに対する規定ですが、陸上機である陸攻にも使われています)。これが陸軍でも一式戦、二式戦の外鈑をSDCの無塗装とする際に同じように行われたのではないかと考えています。
    同じSDC外鈑の単座戦闘機である三式戦では海軍の淡青色透明E4は使われず、内面は灰緑色となっています。海軍機を生産しない川崎ではそもそも海軍の塗料を持っていなかったからなのではないかと考えます。

    操縦席房塗色を含む陸軍機の内面塗装についての確定的な話については、考証を深めるために今後数年くらいの時間をいただけたらと思います。


  6. BUNさま、片さま
    拙い質問に対し、ご丁寧なお返事誠にありがとうございました。
    ご研究の成果を媒体で発表される時を大変楽しみにしております。
    旅人木

  7. 色名等で明確でない私が答えてすいませんが。
    陸軍機、現物面で考察していても本当に難しいです。海軍は結構明確で判り易いのですが。
    勿論現存サンプルが少ない事もあります。
    三沢のキ54など明確に機体内部は下塗り灰藍色、次に上塗り灰色(色名不明)
    そして操縦席内等はその上に海軍の淡緑色相当の灰緑?草色?が塗られています。
    しかしながら戦闘機となると4式戦の操縦席内下地に青竹色相当が使われていたり、また川崎は一切青竹相当は無くで、屠龍操縦席内に淡緑色相当が使われていたりと各社においての方向性はあれど、違いがあり判らないのです。
    片さんに時間の余裕があり数年の考証を深める事ができれば、BUNさん共に話の合った結果がでるのかなと考えていますが・・・
    A6M232

  8. 一式双高練や二式複戦などの「淡緑色相当」は「草色」だと思うのですが、
    まあ、この辺のことを明確にしていきたいですね。
    いずれね。


  9. >8
    はい「草色」かと。
    明確にしていく点は大変恐縮ですが、いずれ 息抜きとなる時にご無理ない範囲で宜しくお願い致します。

    陸軍前期は結構判り易いかと思いますが、BUNさんが中期までと言われている通り、それ以降の「草色」「青竹」等の事が機体により本当に不明確なので、現物を持つ私としても明確方向に導いて下されば非常にすっきり致しますので。
    97重爆など草色か?と悩む例もありますし・・・

    A6M232

  10. 余談になりますが・・・。
    俗にアオタケ(*1)と呼ばれている機体の内面に塗られる塗料ですが、「航空機用非金属材料」工学博士荒木鶴雄著(*2)217ページによると、以下引用

    内面等で比較的腐蝕の進行が遅い部分にはこの種軽金属塗料の顔料を混入せぬ透明なもの或いは淡青色の透明なものが塗粧せられる事がある。これは一面に於いては透明なために腐蝕の進行を早期に発見出来る点及び材料の判別に便利な点から用ひられる。

    以上引用終り。
    と、書かれています(“この種軽金属塗料”というのは、日本では主にベンヂル繊維素系の塗料の事を指します)。

    因みに、この217ページに軽金属塗料の配合表が有るのですが、雑誌:歴史群像2018年2月号:学研の8ページに掲載されている物と同じです。


    (*1)“アオタケ”はマラカイトグリーンの俗称なので、青色でなく緑色ですが・・・。
    (*2)昭和18年発行:荒木氏は愛知航空機に在籍していた工業化学の専門家です。
    Luna

  11. マラカイトグリーンの「青竹塗料」と、海軍淡青色はまったく別物で、色材も全く異なります。海軍淡青色は青色です。
    強いて言うならば、「青竹塗料」とは透明色であるということで雰囲気の似ているところがあるので「青竹色塗料」と呼ばれていたような感じです。




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