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またまた三連続で質問申し訳ありません。この質問が済めば暫くROMる事にします。私はもともと帝国陸軍機が大好きなのですが、その中でもお気に入りが、四式戦闘機疾風です。その疾風なんですが、「昇降舵が重い」というのは承知しています。一式/二式/三式&五式戦闘機とは全く異なる操縦性思想の元に設計されています。だが、「日本人の手ではいくら引いてもビクともしない」と評される欧米戦闘機は、皆さんご存知の通り高速旋回性能に秀でています。対して、舵の軽い零戦は「180ノット以下ではF4F/M、F6Fに勝るが、200ノットでは逆転する」という衝撃の米軍TAICレポートがあります。零戦は他の要因もありますが、一式戦でも似た様なものです。四式戦闘機疾風は、欧米機の様な高速旋回戦闘機だったのでしょうか。私が一番気になるのはその点です。日本軍の今までの舵が軽い重いは、低速での話であり、疾風は、「低速では重いけど、高速でも旋回出来る様に動かせるよ」という機体だったのでしょうか。操縦系統の話は、P-40が一番分かりやすいと思います。P-40は、低速では操縦が鈍重ですが、高速でも動かせ、低空高速旋回はかなり得意でした。戦史叢書の中国大陸戦線戦訓では、四式戦は「P-40と旋回性能はほぼ同等」と書かれています。型は分かりませんが、私は、四式戦闘機が低速では鈍重と言われるかも知れないが、高速旋回戦闘にある程度追従し得る初の日本軍戦闘機であったと考えています。皆さんは、四式戦の高速旋回戦闘については、どれだけのものであったか分かりますか。 また、蛇足ですが、出来ればもうひとつ答えていただきたい事があります。操縦系統の重さと速度です。操縦系統が軽い設定(隼など)は、低速では軽い力でガシガシ動かせるが、高速では空気圧に負けてしまう。重い操縦系統(P-40など)は、重いが、空気圧に負けないパワーがある。つまり、前者は軽い力で動かせるけどパワーはスカスカの軽いギアの状態であり、後者は力を要するがパワーがある、重いギアの状態、と見て良いのでしょうか。長文、大変失礼しました。以上です。どうか回答お願いします。 パンジャンドラム |
- まずは一言。
4式戦の高速域の操縦性は「悪い」です。
高速になると勝手に頭が上がるため、急降下爆撃時にひたすら操縦桿を押しっぱなしにしていたと64戦隊の報告があります。
また、昇降舵の荷重制限が他戦闘機に比べ低く、
「そのような操縦性」でないと、最悪昇降舵が飛びます。
もっともこれは小山さんが軽量化を意識してそうした、即ち丈夫に作らない分軽くした(どこまでほんとなんだ)そうなので、そういうものだと理解してください。
あと、舵の軽い、重いは昇降舵や補助翼の面積にも比例することなので、その面からも調べてみると面白いですよ。
P-kun
- ごめんなさい、報告は64戦隊じゃなく50戦隊です。
64戦隊は1式戦3型装備じゃないか・・・
P-kun
- 回答ありがとうございます。それなんですが、飛行機の空力安定だと思うんです。飛行機は、降下し続けると危険なので、ある速度で適度に揚力が付いて浮き上がる様になっています。その状態では機体を押さえつける事は極めて困難で、零戦だと300ノットの緩降下爆撃では機首を押さえつけるのに凄まじい力を要したそうです。しかし、三式戦闘機はその速度を上げて設定しており、244戦隊では700km/hを超えても機首が戻らず、地上近くでやっと引き起こせた事例があったのですが、飛燕はその速度が750km/h程度で、疾風はそれよりも低い速度で空力安定が発動する様に設定されていたそうです。高速で機首が上がるというのは、好意的に捉えれば、高速でピッチング性能が良いという事ではないでしょうか。反論みたいになっていますが、反論では無いです。ただの解釈の違いだと思います。
パンジャンドラム
- あと、日本のパイロットと海外のパイロットとの認識の違いもあると思います。P-51が500km/hで高速旋回したら、旋回はぶっくりと膨れますが、これで良いんです。海外ではこれが理想的な旋回です。対して、日本で唯一これをやってのけるのが疾風だったとして、「うわ、こいつ高速になると旋回がぶっくりと膨れやがる。旋回性能悪いな!キ84は駄目だ!鈍重!」と評価するパイロットが現れても自然的です。飛燕は良く高速でも機首が起こらないので高速で舵が押さえつけられる、と勘違いする2ちゃんねらーとかいますが、飛燕の急降下時の舵は相応に効かなくなっており、ただ空力安定が発動していないだけだったりします。四式戦は、ちゃんと舵は動くけど、空力安定があるから一見すると、高速で舵が動かせない、となってしまうと思うんです。
パンジャンドラム
- うおお、大事な事を言い忘れていました。この質問は疾風の高速旋回性能の話で、高速急降下性能の話では無いです…。申し訳ございません。500km/hで高速旋回するP-51やF6Fに制空戦闘を挑み得る機体であったかどうか、という話でございます。大戦後期、日本の零戦が格闘戦を挑んでボコボコに叩かれましたよね。そういうスケールの話です。レイテ沖海戦に参加した護衛空母のパイロットは、「200ノットで以上で旋回すFM-2に、ゼロは追従出来かった。」ドイツ上空で戦闘した米軍機パイロットは「P-51はBF109Gに対して、500km/hでの旋回では大きく優位に立った」。どちらもとあるアメリカマンセードキュメンタリーからの証言です。
パンジャンドラム
- 4式戦の設計思想は高速を出させない方向なんです。
ようは、機体の限界が来る前に頭上げさせて速度を出させなくしてるのです。
(その代わり、機体の限界を低くすることで軽量化させています)
確かにピッチング性能は良いかもしれませんが、頭が落ち着かないので射撃が非常に難しくなっていますので、正直な所、「だからどうした」程度の話です。
またそれを言うなら3式戦の第3燃料タンク満載時も、舵が鋭敏なのでピッチング性能がいいという話になってしまいます。
(これは現場から戦闘にならないとクレームが入っています)
正直な所、日本機に関しては高速時の操縦性を重視していたとはあまり思えません。
(一撃離脱的な戦法を軽視していた訳では全くありませんよ?)
ですが、耐Gスーツのない日本パイロットにとってはそれは正解かもしれませんよ。
P-kun
- 返信ありがとうございます。三式戦闘機の胴体タンク満載時は、舵の効きは悪いですよ。バランスが悪く、舵の危機に悪影響を及ぼしたそうです。旋回性能も低下したでしょう。ただ重心が下がって後ろにひっくり返っても、安定したピッチングとはいえなさそうです。四式戦の様に揚力で持ち上げるピッチングの方が旋回には使いやすいですよ。そもそもドッグファイトの速度域で勝手に持ち上がるものでしょうか。疾風のは急降下時にそうなるだけで、隼一型の最高速度程度でアガっちゃうんですかね。
パンジャンドラム
- そもそも疾風って何キロから機首が浮くのでしょうか。500km/h程度なら、水平飛行も余裕で可能だと思いますが。機首が勝手に上がって空戦どころでは無い、というならば、米軍が疾風の運動性能を評価してくれるかどうか…。
パンジャンドラム
- >三式戦闘機の胴体タンク満載時は、舵の効きは悪いですよ。
ああ、一言足りませんでしたね。
高速時に舵の効きが悪くなるのは仰る通りですが、そうでない時に
「昇降舵鋭敏となり失速になりやすいため戦闘に適せず。」
と部隊から報告が上がっていますよ、というお話です。
P-kun
- 実際、四式戦は高速時の運動性能は日本機の中ではかなりマシな部類に入ったのでしょうか。高速旋回性能についてはなかなか触れられている証言とかは少なく、ただ、「P-51とP-47より優れる」「P-40と互角」としか触れられていません。米海軍は零戦を「180ノット以下で勝り、200ノット以上で逆転」と、ちゃんと速度域で評しています。どうなのでしょうか。
パンジャンドラム
- >10
http://www.wwiiaircraftperformance.org/japan/Ki-84-TSFTE-2001.pdf
米陸軍の報告書です。
運動性は米軍機に比較して良好、特に低速領域、しかし、旋回半径、ロール率は零戦52型には劣る。
昇降舵は重いという評価ですが、
高速で特に困ったという記述はないようです。
私には随分と好意的な評価に読めました。
い
- 陸軍機には詳しくなくて申し訳ありませんが、数値を使った答えがありませんので、せめて零戦(実はA6M1)の数値でも参考にして頂ければと思い、書かせて頂きます。
ふと次の論文を使えば、A6M1の操縦桿の操作力と操作量(ストローク)が計算できそうだと気が付いたので、計算したらうまくいきました。 使った論文は、堀越技師の昇降舵系の剛性低下法の効果に関する論文で、必要な式と、空力データが表に記載されております。
論文は、日本航空学会誌、Vol.15,No.158,pp78-90,1967年3月号です。
次のサイトから入手可能です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1953/15/158/15_158_78/_pdf
計算条件は、操縦桿を一定にして引起こしているときに機体が水平になった瞬間の準静的計算と考えてください。高度は3000mです。計算に使う速度は真速ですが、計算高度に関係なく使えるよう計器速度を付しておきます。
なお昇降舵は183kt(計器速157.6kt)の水平飛行でトリムされている条件での計算です。
[計算結果]
真速 計器速 操縦桿を引く意図 荷重倍数 昇降舵操作力 ストローク
(kt) (kt) (G) (kgf) (mm)
74.7 64.4 失速限界CL=1.52 1 4.0 92
105.7 91.0 失速限界CL=1.52 2 9.8 127
149.4 128.7 失速限界CL=1.52 4 21.3 175
183 157,6 失速限界CL=1.52 6 32.7 218
197.7 170.3 失速限界CL=1.52 7 38.5 239
220 189.5 機体強度限界 7 37.1 212
240 206.8 機体強度限界 7 35.8 192
260 224.0 機体強度限界 7 34.3 175
280 241.2 機体強度限界 7 32.7 160
300 258.4 機体強度限界 7 31.1 146
計算してみて意外と軽いと思ったのですが、操縦桿は90°横方向に例の重すぎる補助翼も引かねばならないから、引き力のベクトル和では相当重くなりそうと言うのが最終的感想です。
なお、計器速度170.3ktは十二試艦戦のコーナー速度です。米軍機は翼面荷重が大きいので、恐らくコーナー速度は計器速度200kt以上でしょうか。 これが、>10.「180ノット以下で勝り、200ノット以上で逆転」の理由の一部ですが、200ノット以上で逆転の理由についてはいろいろありそうですね。
なおGスーツ効果については、以下の資料の第二次大戦ごろの部分の記述に、ある程度数値的な記述があり、かなり効果があったことが分かります。
http://www.sasappa.co.jp/online/abstract/jsasem/1/049/html/1110490101.html
如風
- 再度、失敗しました。
「コピーを利用しても、全角モードでコピーしないと空白は無視される、」が規則のようです。
画面を見苦しくして申し訳ありませんが、全角モードで再トライします。
[計算結果]
真速 計器速 操縦桿を引く意図 荷重倍数 昇降舵操作力 ストローク
(kt) (kt) (G) (kgf) (mm)
74.7 64.4 失速限界CL=1.52 1 4.0 92
105.7 91.0 失速限界CL=1.52 2 9.8 127
149.4 128.7 失速限界CL=1.52 4 21.3 175
183 157,6 失速限界CL=1.52 6 32.7 218
197.7 170.3 失速限界CL=1.52 7 38.5 239
220 189.5 機体強度限界 7 37.1 212
240 206.8 機体強度限界 7 35.8 192
260 224.0 機体強度限界 7 34.3 175
280 241.2 機体強度限界 7 32.7 160
300 258.4 機体強度限界 7 31.1 146
如風
- いさん、ありがとうございます。もう回答はつかないのかと諦めかけていました…。ところで、気になるのがmaneuveraviltiy、即ち運動性が零戦五二型に劣るとされた点です。6ページには、旋回「角」とロールレートが劣る、とされています。radius of turn。この表記の認識が旋回角という認識で間違っていなければ、四式戦闘機は高速大回りで零戦に準ずる旋回率を発揮し得た、という認識でよろしいのでしょうか。零戦と同じ旋回半径で旋回できるほど翼面荷重は低く無いですし。
パンジャンドラム
- 如風さん、ありがとうございます。かなり力を要しますね。TAICが零戦を調査する際に、ロールレートの時は30ポンドに力を抑えて計測しましたから、30ポンドの分のベクトルも加わると両手で引かないと無理ですね。現に両手で引け、という証言がありますし。比較対象として、P-51の高速旋回には付いていけると思いますか?
パンジャンドラム
- >14
Maneuverability and Aerobatics
The aircraft was found to be quit maneuverable with rate of roll and radius of turn slightly inferior to the Zeke52.
"radius of turn"は「旋回半径」のことだと思います。
"slightly inferior" わずかに劣るということで零戦52型にかなり近いという評価に読めます。
い
- いさん、すみませんでした。辞書で調べればすぐ出るものを、「ラジアンの関連語かな」と、勝手に角度の事かと思ってました。ところで、零戦五二型に近い旋回半径って、幾ら何でもすご過ぎではないでしょうか。戦史叢書の評価とは裏腹に、飛行第11戦隊の所訓はF6F-5と旋回性能は互角、としています。おそらくは記述者の乗った四式戦がハズレで馬力が出てなかったのだと思いたいですが、どのみちF6Fと互角の旋回をするには、少なくとも低速で旋回する事は許されないはずです。零戦五二型の180ノットぐらいでの旋回半径よりやや大回りで、220ノットぐらいで旋回出来る、といった所だと思いませんか。その旋回での速度域については触れられていませんかね?私の英語能力は著しく劣りますので…。
パンジャンドラム
- 零戦五二型よりわずかに劣る旋回半径と評されている以上、疾風の旋回性能は翼面荷重以上に優れていることだけは断言できますがね。おそらくは、翼断面形状および前進翼の失速限界の高さが、疾風がどんどん旋回の内側に食い込んで行ける様にさせているのでしょうね。零戦よりもCLmaxが優れていたり、という事はあったりしますか?
パンジャンドラム
- あ゛っ!もしかして、「ファウラーフラップ」を使用していたから零戦にやや劣る旋回半径を発揮できていただけ、ということでしょうか?隼以降に搭載されたファウラーフラップは空戦時でもめちゃくちゃ空力特性が良かったと聞いた事があります。ファウラーフラップの使用には触れられていないので、想像ですが使っていたかもしれません。ちなみに、一つ疑問なのですが、フラップを使った旋回って、どこまで高速でやれるのでしょうか。空戦時の15度下げモードは着陸時の半分なので、500km/h超えても出せますよね?
パンジャンドラム
- 15度は離陸時モードです。
四式戦の場合、空戦でのフラップの使用は前提とされていないはずです。
一式戦では操縦桿にあった空戦フラップの開閉ボタンも四式戦ではなくなっています。
片
- 零戦と四式戦の高速での横転性能を比較する場合、零戦の補助翼の利きが特によろしい感じではなかったらしいことを下敷きにする必要があるように思います。
零戦を基準にしても始まらないのかも、というところです。
片
- うーん…。謎が多いですね。四式戦の旋回性能は。でもフラップ無しでのデータで安心しました。零戦五二型は二一型と違って低速での横転性能が高いので、低速時基準だとは思うんですがね。高速だとエルロンの小さい疾風の方が絶対に有利なはずです。零戦では取っ払ってしまった「バランスタブ」も装備されていたと思います。羽布張りが限界に達する速度まで横転性能は高いはずなんですが…。
パンジャンドラム
- 私も自分でいろいろ考えましたが、対F6Fで考えると、疾風の旋回性能はF6Fと同等とするパイロットの報告が多いですが(学研)、戦史叢書には隊長(開戦時からのベテランで士官)がF6Fに旋回劣るとしているので、どっちが正しいのか分からなくなってました。正直なところ、どちらが正確かだと、たくさんの若年搭乗員の意見<一人のベテランの意見、だとは思うんですが、疾風は当たり外れがあったのと、F6Fは低空だと緊急出力で2200馬力出てて、どちらも正しいんじゃないかと思えてきました。私の結論は「F6Fと互角だが、場合によっては負ける」であり、F6F並みの高速旋回に追従出来ると考えます。どなたか指摘があればお願いします。
パンジャンドラム
- 飛行機の操縦も自動車と同じように操縦者の力量によって評価が違うと考えた方が良いでしょう。F6Fと比較して、といったところで当時の陸軍の操縦者でF6Fの操縦棹を握った人間は居ないのです。
そして大まかな数値で全てが解る訳ではなく、もう少し踏み込んだ話で、例えば限界まで安心して操縦棹を引けるか、といった問題もあります。
本来なら大きな差があるはずのスピットファイアMk.IとBf109Eの間で巴戦が成立してしまうのも普通に考えれば不思議ですが、スピットファイアは失速の予兆を知ることが難しく、熟練者でなければ限界まで回れないからだ、といったテストパイロットの話もあります。
四式戦を評価した言葉にもそのような傾向を示唆するものがあり、それは「思い切り操縦棹を引ける飛行機である」といった常陸教導飛行師団での評価です。おそらくは二式戦と比較してのことと考えられますから、四式戦の空戦は二式戦よりも不安なく行えたのではないかと考えられます。
いずれにせよ、残された記録や限られたデータから全てを推測しきれるものではないでしょう。
BUN
- うおお、BUNさん、回答ありがとうございます!確かにそうですね。実際に乗ってみないとわかりませんよね。でも、それさえもパイロットの評価に左右されますね。くろえ少佐はFW190は旋回しようとするとすぐ失速して相手にならなかった、荒蒔少佐はFW190の方が旋回に優れた、と。もうカオス過ぎて分かりません。四式戦の旋回性能はどうなのか…。実機は隼と違って飛行不能ですし、そもそもここまで飛行性能の評価が安定しなさ過ぎな機体も無いです。もう分かり様も無いんでしょうか。
パンジャンドラム
- おそらく、失速に強い中島式前進翼で翼厚比が16.5%と分厚い四式戦は、第二次大戦機では最も迎え角が取れる機体の一つだったんだろう、とは思います。7G旋回だって耐えられる機体なんですし。
パンジャンドラム
- 昭和19年1月3日付の陸軍航空審査部「『キ八十四』操縦法」では、フラップ開度15度の場合の速度制限として270km/時以下と記されています。また、「下げ翼は(略)離着陸時のみ使用す」ともわざわざ書いてあります。
なお、機体の空力特性を説明する箇所では、「本機の翼断面は速度700km/時付近の高速状態に適す。」「主翼平面形は失速特性及安定性を考慮して(略)直線先細翼なり尚失速特性を良好ならしめるため前縁直線として」とあり、運用時の速度域の想定や、翼形選択において何を重視したかを伺うことができます。
各種制限については、上記フラップの開度ごとの速度制限の他、「急降下 750km/時以下」「加速度 5G以下」「速度大なる場合の引き起こしは加速度4G以内なるを要す」「急旋転動作(急横転、錐揉等) 背面飛行 禁ず」といった記述があります。(もちろん主翼の「大迎角引き起こし」時の荷重倍数は、保安 7.0 規定 12.6 です)。
この「操縦法」の冒頭、「総則」に「本機は其の性能発揮のため各部の構造巧緻にして」「操縦者は(本機の)特性を十二分に把握し周到合理的なる操縦により本機の全性能を遺憾なく発揮すると共に飛行機愛護の精神を堅持しあるを要す。」とあるのですが、なかなか興味深いものがあります。
操縦者向けマニュアルらしく、各飛行状態の操作手順や、速度、上昇、水平飛行、特殊飛行、航続、など各状態の標準数字が述べられています(たとえば、180度、360度、左右それぞれの旋回時間、旋回半径など)が、各々の数字などをみると、http://www.warbirds.jp/siryo/frank.htm の元文献のそのまた元文献ではないかと思わせるものがあります。
逆向春助
- 逆向春助さん、ありがとうございます。こんなに良いデータがあったとは!ところで、250マイル=400km/hでの機動が書かれていますが、つまり400km/hでの機動が十分に行える機体、という事ですか?あと、急降下での引き起こしは4Gとありますが、降下制限速度の750km/hでの4G、という認識で良いのでしょうか。あと、翼断面が高速向き、という事は、やはり高速重視の機体、という事ですよね。高速で4G、というのは悪くない数字ですか?
パンジャンドラム
- 急旋回の初速は250マイル(400km/h)。これは一応零戦や隼の多用した150ノット(277km/h)よりははるかに高いですね。零戦は150ノットで半径186mの旋回で、180度旋回には4秒だそうですが、そのマニュアルによれば250マイルでいくらの旋回半径なのでしょうか。
パンジャンドラム
- >28
「操縦法」においては、特殊飛行や射撃時などの手順の説明を行うにあたりに基準としている速度として、400km/時という表現は多く見受けられます。
なお、>11 の報告書とはまた別の、キ84についての米軍の調査報告書において、飛行特性についての簡単なコメントとして
「IAS 300 マイル以下の速度では、フランク I の操作性は良い。IAS 300 マイル以上では、操縦はかなり固くなる。」
というものがあります。
>29
高度 800 - 700 回転数 2900 吸気圧力(+)250 速度400からの180 度の旋回半径・時間として、以下のように記されています。
旋回方向 左 旋回時間 9.15 秒 旋回半径 約270米
旋回方向 右 旋回時間 8.55 秒 旋回半径 約260米
逆向春助
- >28
残念ながら、急上昇時も同様の制限がかかっています。
エレベーター操作による機動においては常につきまとっていると思っていいでしょう。
ちなみに操縦法で、750km/hでの引き起こしは3.5Gで行っています。
(もっともそれしか耐えれないという意味ではありません。)
ですが>6でも書いた通り、日本においてはそれで良いのです。
昭和19年の空中戦闘教程にはこうあります。
速度250m/hにおいて4〜5Gの加速度を徐々に受ければ、失神しやすい人で5〜10秒後には既に失神・視力の喪失状態に陥り、
更に旋回を持続し35〜40秒後には失神者は更に増えるだろう。
急上昇等、例えば300km/Hで行う急旋回の初動で5〜6Gの加速度を受ければ「その瞬時において」大多数の者は失神あるいはその直前状態にある
それこそ耐Gスーツでもなければ5Gや、ましてや7Gなどの加速度には人体は耐えれないのです。
>30
そんなに多いでしょうか?
400km/hで行う機動に関しては、インメルマン(操縦法では宙返り反転)等著しく速度が低下する機動の開始時に記載が見られますが、
その他の横旋回、スプリットS等の機動の開始速度は260km/h〜380km/hになっていませんか?
しかし、操縦法の別冊をお持ちとは・・・
P-kun
- 逆向春助さん、ありがとうございます。BF109Eは開始速度・かけたGが不明(レイデイトンの戦闘機を持っていないので、私が詳細な記述を知らないです)で旋回半径270mですが、悪くないですね。かけたGは分かりますか?
パンジャンドラム
- p-kunさん、ありがとうございます。その文書は時速とノットを取り違えてはいませんか?あと、四式戦の舵の重さは別に間違ってた方針ではありませんでしたね。確かにおっしゃる通り、今の対Gスーツですが、2Gまで軽減できるそうです。そんなの相手に高G旋回なんて苦しいですよね。四式戦の他の機体とも比較したいのですが、飛燕や鍾馗のもあったりしますか?
パンジャンドラム
- >33
残念ながら、海軍ではなく陸軍の資料ですのでkm/hです。
P-kun
- ありがとうございます。失礼してすみませんでした。四式戦の旋回性能は、「日本軍の対G限界の範囲で欧米機に追従できる戦闘機と言えるでしょうか。例えば、P-40あたりと比較して…
パンジャンドラム
- あと、本当に申し訳ございません、マイルとの取り違えてを疑ってみてもらえませんか?例えば、急降下速度の記述とか。陸海軍の文書や証言に速度・陸マイル・ノットの取り違えはかなり多いので。
パンジャンドラム
- 疑うも何も、km/hとしか書いてませんよ。
空中戦闘教程自体は、4式戦搭乗者に限らず、パイロット候補生向けの教科書です。
4式戦はおろか、将来3式戦に乗る方も1式戦に乗る方も4式重爆に乗る方もみな読む本です。
(もっとも昭和19年の物ですので、これを読んで実戦に出た方がどの位居たやら・・・)
Gの話は飛行機一般的な話として理解してください。
ちなみに、一番気にされている、欧米機と比較してどうかという問題は、私個人の感想ですが、機体としては追従はできる機体だったとは思います。
が、日本人パイロットが乗る疾風が欧米人パイロットの乗るP40やP51に追従できたかと問われたら?を付けざるを得ませんといった所だと思います。
上記皆様が上げられている資料から、日本人パイロットが気にしていた頭上げの癖や、操縦桿の重さを馬鹿力故か、アメリカ人パイロットがあまり気にしてない所から見ると、機体としての疾風の癖もそこでまでは無いかとは個人的には思いますが、きちんとトリム操作を行った結果かもしれません。
(ちなみに疾風のトリムは昇降舵のみ操縦席から操作でき、他は地上でのみ調整可能です。)
P-kun
- あともう一点。(私の書き込みもこれで最後にします)
HNを変えて、投稿するのはここではあまり歓迎されません。
山本5600さん。
P-kun
- p-kunさん、ありがとうございます。そんなに対Gスーツの効果って大きんですね。機体性能の差では無い気がしてきました。あと、名前変えるのはご法度なんですね。失礼しました。いや、しばらくROMると言った手前、この名前使うのもアレだったので…。あまり連投質問する人間は歓迎されないと思い、やってしまいました。すみません。(ところでIPでも漏れていたのかな)?とにかく、ありがとうございました。四式戦はGが許す限り米軍機に追従し得る機体、という事で決着とさせていただきます。当時の対Gスーツも現在同様2Gまで軽減できるものだったんだろうと思います。
パンジャンドラム
- あと、p-kunさん、言い忘れていました。いろいろと時速とノットやマイルとの取り違えを気にして、気を悪くさせてしまい、すみません。私は、旧海軍の文書のキロ、マイル、ノットの取り違えを見たことがありました。その時は急降下速度400キロで気づきました。昔の軍人は几帳面な様で意外と抜けてる部分もあります。だから、これはちょっとおかしんじゃ無いか、と思った時にはすぐに単位の取り違えを疑う様にしています。上の対Gの情報を見た時は、正直、「5Gで瞬時に気絶など、対Gスーツ無しで9Gを耐えねばならない空自のパイロットに比べて、いくらガリガリでもこんな貧弱なはずが無い」と思ってしまい、そう聞いてしまいました。ここでお詫びします。
パンジャンドラム
- あと、初めて実戦に使える対Gスーツが投入されたのは1944年9月の欧州戦線での米陸軍航空隊ですが、米海軍やドイツやイギリス、ソ連はどうなのでしょうか。そもそも、米陸軍でさえそれまでは生身で旋回ですよね?疾風は高速旋回もこなせるし、パイロットも同じ条件で欧米機の高速旋回に追従し得るのでは?
パンジャンドラム
- 一個一個は長めの文なのに内容は細切れの連投連投アンド連投で読むのに難渋
もう少し考えを事前に纏めてから書き込んでくれませんかね?
- 申し訳ありません。一回にまとめてから投稿します。
パンジャンドラム