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誉で問題となった、星型エンジンの混合気分配の不均一による異常燃焼は、アメリカやイギリスの同型エンジンでは、どのような方法で解決していたのでしょうか? ホロンハカセ |
- 素人考えですが、米英のレシプロエンジンはソ独日の其より気筒に吸入される時点での混合気の温度が高いのでは?
気化器通過時点で吸気温が十分高い、或はエンジンに組み付けられた内装過給器の圧縮比を高くし其処で混合気の温度を上げて
燃料を気筒吸入前に十分に気化させる事で均一化させているのでは?
独ソ日が気筒毎の燃料噴射を逸早く採用、イスパノでは二気筒づつの気化器にしたのは
米国の高オクタン価燃料を入手出来ない環境で其に性能向上で勝つには
気筒に吸入され充填される混合気の温度を如何に低くするかしか無いと考えるから。
にも。
- 私も素人考えですが、本件の対策としては、何はともあれ高オクタン価の燃料の使用があげられるのではないでしょうか。混合気分配の不均一でリーン気筒側でノッキングが発生するというのが異常燃焼の原因とするならば・・・、単純に高オクタン価の燃料でノッキングは抑制できるのではないかと思うのですが。誉21に関しては、91オクタン燃料では異常燃焼による筒温上昇が発生していたようですが、雑誌丸の今月号の古峰氏の記事では、95オクタン燃料では正常な運転ができていたという記述がありました。(分溜性状改善と高オクタン価化の相乗効果による?)戦後米国でki84がテストされた時も100オクタン燃料が使用されていますが、異常燃焼や筒温上昇の報告はなされていないように思います。
P&Wのダブル・ワスプR2800や24気筒のネイピア・セーバーは誉21と同じ単一の気化器式ですが、使用燃料は100オクタンではないでしょうか。高オクタン価の燃料が使用できないドイツでは、BMW801などは筒内直噴の燃料噴射システムで混合気分配バラツキそのものを抑制する対策を取っていますね。
燃料の分溜性状の改善によって気化を促進し、混合気分配の均一化を図ることもBUN様が指摘されていますが、そのあたりは米英の燃料でどのような改善がなされているのかは、私は知識不足でよく分かりません。
飛行機猫
- 米英独日で、ガソリンの原油の産地も違っていたのではないでしょうか。
テキサスか、プロエスティか、ブルネイか。
沸点が低い、軽い炭化水素の含有量の多い原油なら、気化しやすいガソリンができると思います。
それから、みなさんの家にあるクルマの吸気マニホールドをバラして、中をさわってみてください。
マニホールドの中は、ざらざらでしょうか?
それとも、つるつるでしょうか?
じゃま
- 私も素人ですが回答させていただきます。
オクタン価も重要ですが、混合気分配対策としては空燃比を正確に調整することが根本的対策と思います。
誉の場合、「低圧燃料噴射」による対策がとられ、実用化直前で終戦となりました。低圧燃料噴射とは噴射式気化器のことです。
米国の場合も対策はやはり噴射式気化器で、ベンディックス・ストロンバーグ製の噴射式気化器がライトR-3350やP&W R-2800に装着されました。
最終的には米国も直接噴射式を目指すのですが、実用化は終戦直前でした。
超音速
- にも。さま、飛行機猫さま、じゃまさま、超音速さま、ご回答いただきありがとうございました。
100オクタンの燃料が潤沢に使えるアメリカやイギリスでは、日本ほどこの問題には苦しまなかったし、噴射式気化器も実用化できたので解決できたということになるのでしょうね。
ウィキでみるとプラット・アンド・ホイットニー R-4360が四重星型28気筒という、いかにも混合気分配の不均一が生じそうなのに燃料供給はキャブレターとなってまして、なにかよい工夫でもしているのかな?と思ったしだいです。
ホロンハカセ
- アーカイヴですが以下のサイトにパフォーマンスナンバー三桁のアヴガスについて触れてますhttp://web.archive.org/web/20030221220913/http://www.yabuki.webis-ya.com/feature/
にも。
- 自分も素人で恐縮ですが・・・。
筒内燃料噴射によって各気筒に燃料を均一に分配出来たとしても、
それぞれの気筒の吸気圧が違えば空燃比は均一にならないので、異常燃焼を起こすかどうかは別として燃焼状態には多かれ少なかれバラツキが生じるのではないかと考えます。
みいつ
- みいつ様
一般論ですが、燃料の気筒分配不良は燃料が十分気化しないで、一部が液状で吸気系統に滞留するために生じる問題かと・・・。それで誉のような星型空冷エンジンの場合は、気化器から出た燃料の一部が、過給機を経て、分岐管部まで液状で流入して、それが下部気筒の吸気管にそのまま流入して、下部気筒をリッチにし、逆に上部気筒をリーンにするというようなことによって燃料分配不良が生じるわけです。しかしただの空気の場合は、確かに気筒毎の充填効率のバラツキは諸要因によって生じはしますが、液状燃料の流入バラツキによる、空燃比バラツキよりは、一般にはるかに小さいと言うことではないのでしょうか。だからガソリンの気化性能を上げるだけで、空燃比バラツキ問題は相当な改善が図られるということもあるわけです。もっとも厳密に言えば、仰っているように、気筒間の充填効率バラツキはあるわけで、その他にも燃料の気化状態バラつき、筒内吸気温度バラツキ、筒内残留ガスバラツキなど色々あるわけでして・・・難しいです。
飛行機猫
- そのような現象があるという事を知りませんでした。
飛行機猫様、わかりやすく丁寧な解説をありがとうございました。
議論ボードでも最近話題になった「気化器で燃料が気化すると思うな」「吸気管を可視化したらガソリンが液状に流れていた」というのは、つまりコレの事だったのですね。
みいつ
- 素人として考えてみました。
米英の100オクタン燃料ついては
国立国会図書館デジタルコレクションにある
「南方産業技術要覧」
著者南方産業技術要覧編纂会 編出版者山海堂 出版年月日1944
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1872274
中の「明石報告」と呼ばれる物に
蘭印パレンバンにおける航空揮発油製造の概要が
「プラヂュー製油所」
P115〜128
「スンゲイゲロン製油所」
P130〜133
に書かれており、航空燃料の配合、性状が詳しく分かります。
また、私が書き写した
「北のさいはて日記
米国の100オクタン航空燃料」
http://www.warbirds.jp/prince/cgi-bin/di_pr.cgi?start=40&pass=
に米国の100オクタン燃料の配合があります。
通常、オクタン価を高める為の主要な配合燃料である「イソオクタン」「アルキレート」「ベッゼックス」ドイツで云えば「DHD燃料」等は、ベースガソリン(直溜揮発油、接触分解揮発油?)に比べ沸点が高く、気化性が良いとは言えません。つまり、単純に云えばオクタン価と気化性は相反する物だと思われます。英米の100オクタン燃料にみられる「ブタン」「イソペンタン」などオクタン価が高く、気化性が良い「蒸気圧調整剤」の存在が「混合気分配の不均一による異常燃焼」に対して効果があったような気がするのです。
これこそ、本当の素人考えなのですが、日本の物に比べ英米の気化器の性能良さや一工夫、余裕のある設計による配管の取り回しの良さが「混合気分配の不均一による異常燃焼」に効果は無かったでしょうか?
姫
- 「誉で問題となった、星型エンジンの混合気分配の不均一」の出典は何処なんでしょうか?
星型エンジンで気化器の下流にあるスーパーチャージャーの円周対称上に各気筒のインテイクが配置されていれば混合気分配の不均一はあまり問題にならないと思うのですが。。。
>8でも不均一が生じると述べられていますが、高速回転しているスーパーチャージャーのインペラを通過した後にそのような不均一が生じるとは考えにくいのですが。。。。
出典をご存知でしたらおしえてください。
ちょん太
- >11
多気筒発動機の混合気分配不均等問題は例えば昭和17年の中島飛行機研究報告などで問題視され、軍側にも同様の認識を示す文書があります。
この問題はどうも寿の時代から意識されていたようです。
またアメリカでも例えばマーリンでも同様の問題が起きていて、四エチル鉛を多量に添加して分溜性状が悪化した100/130グレード燃料をオクタン価100の旧燃料に戻そうとしても供給上の問題から思うに任せないといった事態が発生しています。
星型でも列型でも大戦当時の多気筒発動機が抱える根本的な問題の一つがこれなのです。
BUN
- ベルサイユ条約の枷でドイツの航空発動機は英米の様に開発に時間と経験を積めなかった(よく考えれば民間機なら開発出来るので疑問ですが)という記事が在って
BMW801のコマンドゲレートやNACAカウルの前縁に埋め込まれた環状滑油冷却器もそうですが、ドイツの発動機が早くから各気筒への燃料噴射を採用したのは「困難でも理論的に正しいことを行うのが性能向上の近道」という考え方では。
そう考えると、ほぼ最後まで全気筒一括の燃料供給を気化器でやっていた米英の発動機、ライトは大戦末期の段階でR-3350の途中から各気筒への燃料噴射にしてるので、P&Hとロールスロイスと云う事に成るのかもしれませんが、その経験値(ノウハウ)の厚みにこそ、驚嘆します。
にも。
- >12
書き込み、ありがとうございます。
その資料は、一般人がネットとかで見ることはできるんですか?
不均一の原因として何を挙げているのでしょうか?
列型なら各気筒毎にインテイクの形状が異なるので、全ての回転数に亘って気筒流入量を同一にするのは難しいと思いますが、星型で遠心加給器をかませていればあまり不均一にならないと思うのですが。。。
寿エンジンは単列9気筒星型ですよね。その不均一の原因として何を挙げているのでしょうか?
更なる情報があればお教えください。
ちょん太
- 組み付けの遠心過給器にはもうクーラーが無いですから此処であまり圧縮すると空気が熱くなるし、そもそもそれだけでは燃料が均一に回らないからこのレスな訳で。
此処は「翼車噴射(スリンガー噴射)」で検索されては。
にも。
- >11、14
@燃料の気筒分配不良が、燃料気化の不良による吸気管内の液相の燃料の挙動によって引き起こされるということは、気化器式ガソリンエンジンの吸気系、燃料系に関わる技術者の間ではよく知られている知見だと思いますので、特に出典はありません。ですから私の思い込みかもしれません。
Aこれも一般論だと思いますが・・・気化器から出た燃料の大半は気体ではなくて、液体の燃料粒子だと言われています。つまり燃料噴霧です。その燃料粒子がしばらく空気中を漂うことによって気化して行き、完全な気相の混合気が形成されると言われていると思うのですが・・・。ですからそれが噴霧状態で吸気系の表面に触れるとまた液流状態に戻ってしまうということもありうるわけです。それでその燃料噴霧状態で過給機に流入した混合気がどうなるか・・・本当に完全に均一な気相の混合気として過給機出口から出てくるだろうかということですが・・・どうでしょうか。過給機内部はインペラなどがありますから混合気の濡れ面積はかなり増えて来るわけです。それに遠心力で燃料粒子が、ハウジング外壁に押し寄せられる可能性も出てきます。ですから必ずしも過給機を通ったからと言って、均一の気相の混合気が形成される保証は無いのではないか。燃料の一部が液流状態や不均一なミスト状態で過給機から流出する可能性は排除できないのではないか。それが燃料分配不良を引き起こす要因にならないか。各気筒の吸気管配列は対象でも、過給機出口は、吸気管配列に対して非対称ですし・・・。まあ考えないとならないことは色々あるのではないでしょうか。(勿論これは出典はありません。しかしこういう技術情報は、そう簡単に出典が出て来るものでもないかと・・・。)
飛行機猫
- >14
そのものズバリの出版物、ネット情報はおそらくありません。
対策の実施計画などは防衛研究所の所蔵史料から拾うことができます。
>15
「スリンガー」は「翼車噴射」とは限りませんよ。
BUN
- 今あらためて星形空冷エンジンの過給機出口と吸気管分岐部の形状をいくつか見ましたが、ほぼ軸対称に配置されているようですね。16>のこの部分が非対称だとするのコメントは、撤回いたします。
飛行機猫
□気化器の場合
気化器は、ベンチュリで通過空気量に見合った燃料を吸い上げる機能しかないです。
燃料は、ほとんど気化していない。
でも、エンジン全体の混合比はここでコントロールします。
だから、吸気マニホールドの中では、空気と燃料が気体と液体のまま、併存しています。
燃料はマニホールドの管底で液膜になって流れています。
ここで気化している燃料は、供給量の2割程度でしょう。
燃料の一部は点火直前でも、まだ液体のままです。
「排気管から青いガスが吹き出す」のは、気化しなかった燃料が排気後に燃焼して出るCHラジカルの発光が見えているのです。
そこで、三つの問題を解決せねばなりません。
1.気体(空気)が各シリンダに均等分配されない
2.液体(燃料)が各シリンダに均等分配されない
3.液体(燃料)が気化しない
空気の方は、みいつさんが指摘されているところです。
気化器から各シリンダに伸びる吸気マニホールドは、それぞれ長さや屈曲部のRなどが違うので圧力損失が違い、吸気量がバラバラになります。
燃料の方は、液体のまま壁に沿ってだらだら流れるから、均等分配するのはもっとむずかしい。
□燃料噴射の場合
燃料噴射にすると、小さな燃料液滴がたちまち気化するようにイメージしますが、実際にはそうではないです。
噴射ノズルから噴霧された燃料液滴は200m/s以上のスピードがあり、せいぜい20m/sで流れている空気をたやすく通り抜けて、そのへんの壁に衝突して、窓ガラスに霧吹きしたような状態、液体のまま留まってしまう。
これは壁衝突"Wall Attacking"と呼ばれ、昔から問題になっています。
1950年代のシャーウッド(シャーウッド数の人)が化学の本に書いているのを読みました。
だから燃料噴射は、「空気と燃料の接触面積を増やす」という効果を期待するほどのもので、万能ではない。
でも、シリンダ毎噴射にすれば、燃料分配不均一の問題はなくなりますね。
□燃料気化の問題
燃料を予熱するという手段があります。
ウエッジ形燃焼室のエンジンでは、側面に吸排気弁が並んでいるから、吸気マニホールドと排気マニホールドを平らにして接触させ、燃料を加熱したりします。
あとは、燃料噴霧のように、空気と液滴の接触面積を増やすことです。
いまどき、キャブレター付きのクルマに乗っている人はほとんどいないでしょうが、どこかの研究機関で古いエンジンを見つけたら、吸気マニホールドを分解してみるといいです。
マニホールドの中をさわると、十番台のヤスリのようにざらざらしています。
あれは、でこぼこをたくさんつくって、燃料の液膜をうすくひろくして,空気との接触面積を増やしているのです。
でも結局は、低沸点成分の多い燃料を使えれば一番です。
これはオクタン価とはかんけいありません。
□オクタン価の問題
これは、混合気不均一の問題とは、かんけいないです。
◆ノッキング
大体は、ノッキング回避のために生まれた問題だと思います。
均一分配、均一混合比になれば、大戦機のように異常に濃い混合比にしなくて済む。
だから、燃費が良くなるでしょうけれど、燃費よりはノッキングが優先課題だったのではないでしょうか。
じゃま
- >17
書き込み、ありがとうございました。
ネットでは、やはり、無理ですが。暇が出来たら目黒に出かけたいとも思います。
>19
>「排気管から青いガスが吹き出す」のは、気化しなかった燃料が排気後に燃焼して出るCHラジカルの発光が見えているのです。
燃焼行程の高温化で気化しない燃料は存在しますか? 理論空燃比(14.7)より濃い混合気を使っているのでシリンダー内で不完全燃焼をおこしているんですよ。その燃え残りですよ。
ちょん太
- >20.燃焼行程の高温化で気化しない燃料は存在しますか?
しますよ。
シリンダ内壁は燃料の液膜が流れています。
膨張行程でも、液膜がすべて気化するわけではありません。
なぜかというと、シリンダ内壁には温度境界層があって、液膜の温度はそんなに高くならないからです。
熱電対で測ってみると、110℃+くらいです。
熱容量があるから、液膜が瞬時に蒸発することはないです。
高沸点成分は残る。
長いこと運転したエンジンのシリンダヘッドをバラすと、中にススがいっぱい付いていますが、あれが一部です。
そして、吸排気弁にはオーバーラップがあります。
排気→吸気行程で、吸気弁の前で気化しないまま、たまっていた燃料の一部は燃焼室を吹き抜け、排気管まで行ってしまいます。
じゃま
- >15.誉一二型からは過給器の翼車にあけた穴から噴射しています。火星は過給器のカバー内側から噴射していますhttp://www.warbirds.jp/ansq/1/A2000862.html
にも。
- >22
それは燃料噴射ではなく、水噴射の話ですね。
細かい事ですけれども「誉一二型」からではなくて、誉二一型と同様に誉一一型の水噴射装置を後から改めたものが誉一二型です。
BUN
- インペラの中心軸から翼車の遠心側に開孔する噴霧管を通すのであれ、インペラの表或は裏に噴き付けるのであれ、吸気を遠心させる過給器の機能を燃焼剤の各気筒への均等分配に用立てようとした事例は日本以外にありますか?
にも。
- そもそも誉24などで量産準備中だった中島式の低圧燃料噴射システムの燃料噴射位置はどこなのでしょうか。シングル・ポイント式の燃料噴射システムと聞いていますので、それからしますと従来気化器があった所にスロットル・ボディ(スロットルバルブ・ユニット)と噴射弁が搭載され、そこに噴射しているということになると思うのですが、どうなのでしょうか。それとも水噴射と同じように燃料分配対策のためにスリンガー噴射のような特殊な噴射方式を採用しているのでしょうか。
飛行機猫
- >5.プラット・アンド・ホイットニー R-4360が〜キャブレター
噴射式気化器をキャブレターと書く場合もあります。
超音速