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ハ40の不調を語る際 >クランクシャフトの折損が多発した の記述を多く見ますが、実際に飛行中にポキッと逝ってしまったらどうなるのでしょうか? 1)回転軸が長い液冷なので、忽ち正常な回転を維持できなくなって固着しエンジンは停止、 動力を失った飛燕は鈍重なグライダーと化し、滑空に失敗した時点で墜落する。 2)軸受けなどで支えられて、折れた部分から前のエンジン回転は辛うじて維持でき、 最小限の推力は得られるので、不時着の可能性を探れる。 3)上記2者のいずれでもない。 のどれになるのでしょうか? 2013.5.03.19:30記 NG151/20 |
- 1)の状態で済めば幸い、といったものではないかと思いますが、飛行中の折損事故は本当に多発したのでしょうか。
BUN
- >BUN様
>飛行中の折損事故は本当に多発したのでしょうか。
私が引用した「クランクシャフトの折損が多発した」は、直接はWikipediaからの引用ですが、
出典が明示されており、こちらでもリンクされている
陸軍飛行第244戦隊ホームページ
http://www5b.biglobe.ne.jp/~s244f/
の
ハ40
http://www5b.biglobe.ne.jp/~s244f/kizuki-06.htm
で初代整備隊長茂呂豊氏の
>新造ハ40のクランクシャフトが、80時間ちょうどで折れたことがあり、信じられなかった
との一次証言もあり、頻度はわかりませんが、飛行中の折損は当然発生していたと思われます
NG151/20
- このレベルの事故が飛行中に多発すると間違いなくその機種はたとえ戦時中の日本でも飛行停止になります(例えば雷電がそうです。お蔭で南方進出が中止されています。)。試運転中の折損ではないでしょうか。
BUN
- 実際にどうだったのかは存じ上げませんが・・・
1)か2)かと言われれば1)でしょう。
DB6系の構造的に2)はありえません。
DB6系はオーバーヘッドカムシャフトですが、カムシャフトを駆動するギアがエンジン後方(プロペラとは反対方向)にあるので、仮にクランクシャフトだけを石川五ェ門が斬鉄剣でスパッと綺麗に切ったとして回転を維持できるとしたらエンジン後方側です。
前方側にも一応燃料も吸気も供給されますし、点火プラグで点火もされますが、ピストン位置(クランクシャフトの位相)とバルブ開閉タイミング&点火タイミングの整合性は失われるので綺麗に回転できなくなります。当然、プロペラの推進力は期待できません。
もっとも良い状態でも異常振動は免れないでしょうし、位相のずれから最悪のタイミングで点火されてしまえばノッキングやオーバーブローを起こして停止もしくは出火。
実際にはクランクシャフトが斬鉄剣の切り口みたいに綺麗に切断される事はないので、切断部付近で焼きつきを起こすか、切断部で発生した無数の鉄粉がエンジンの各軸受け等に回りこんで焼きつきを起こして固着→プロペラも停止になるんじゃなかろうかと想像します。
おうる
- BUN様、おうる様
ご回答ありがとうございます。
>3.BUN様
>このレベルの事故が飛行中に多発すると間違いなくその機種は
>たとえ戦時中の日本でも飛行停止になります。
ご指摘を受けて、Ans.Qが新体制になって間もない08年12月の航空15で、
>石川島製栄が、減速器部分の欠陥からプロペラ飛散事故を多発させ、
>空技廠がその対策に忙殺されたために栄31型の導入が頓挫した。(要約)
との回答をいただいていたのを思い出しました。
私自身は、回答を得るまでこのことは知らなかったのですが、「丸」など市販誌でも紹介される
規模と件数の重大な事故だったと理解しました。
翻って三式戦で「『飛行中に』クランクシャフトが折れて墜落した」という記述は、確かに見た
記憶はありません。紹介した茂呂氏の証言でも、滞空中か、地上での試運転、暖気運転中での事故か
の記載はありません。
私としては、折れるとするならB-29来襲を受けての緊急発進、最も負荷のかかる離昇馬力での
全力上昇中に発生する可能性が高いと思います。この場合たとえ機体は墜落、全損となっても
操縦士は脱出し、経緯を報告できる(体当たりの衝撃に耐えて落下傘脱出できる錬度なので)と
思うので、もっと証言があっていいはずです。
それが見当たらないとなれば、飛行中での折損は少ないのでは(戦闘中に折れてそのまま墜死で
因果関係が不明の例もあるでしょうが)とのBUN様のご見解も納得できます。
どうやったらいいのかわかりませんが、これからも調べていきたいテーマです。
NG151/20
- >4.おうる様
>DB6系の構造的に2)はありえません。(中略)カムシャフトを駆動するギアがエンジン後方
>にあるので、(中略)回転を維持できるとしたらエンジン後方側です(以下略)。
詳細なご解説ありがとうございます。私の関心は、
>長大な回転軸の途中に、破断した軸を支え得る軸受けはあっただろうか?
に集中していましたが、カムシャフトの件は意識外でした。シャフトが折れたら、エンジン停止、
全動力喪失と理解しました。
NG151/20
- 質問者様
これ ↓ 見るとクランクシャフトは一体鍛造、7平軸受となってますね
http://www.456fis.org/DAIMLER-BENZ_DB-601_ENGINE.htm
(隣り合わせのV字の中間5ヵ所と両端2ヵ所)
思うにクランクシャフト折損は加工時の残留応力と運転時の外力との相乗作用で発生するんじゃないでしょうか
駄レス国務長官
- クランクシャフトの運転中の折損は、ハ40の不評の象徴でしょうなのでしょうけど、運転中の事故がそれほど多かったとは、どうも考えにくいです。
開発段階のベンチテストで百時間級の耐久試験をやっていたはずで、それほど深刻なら、いくらなんでも生産に移行する前に対策していたでしょう。
加工を終わったあとの検査を通らない、いわゆる「おしゃか」が多くて歩留まりが悪い、ラインから無事出てくるクランクシャフトが少ないのが問題だったのではないでしょうか。
本家DBでも、赤めて数十回叩いて鍛造し、研削で仕上げたあとの検査を通るのは七割程度だったと、これは佐貫又男さんの「ヒコーキの心」に出ていますね。
じゃま
- これは一例ですが、私も飛燕のエンジンのトラブルというのがどういうものだったのか知りたくて、川崎の工場や航空廠の整備にいた方、航空廠でフェリー・パイロットをされていた方に尋ねてみたことがあります。
意外なことに、深刻なエンジントラブルの経験はないとの返答がほとんどで、一般に言われているハ40の不調の話をすると、逆に怪訝な顔をされることが多いくらいでした。
クランク軸の折損に至っては「そんな話は聞いたこともない」で、この方々の記憶にあるハ40のトラブルといえば「油漏れと水漏れ」とのことでした。
各務原の住人