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軸流式に比べ遠心式ジェットエンジンの方が機構が単純に思えます。 日本はなぜネ−10の開発に失敗したのでしょうか? 裸の大将 |
- 失敗というより、研究が進行中だったところに、さらに完成度が高く、タービン翼冷却の配慮などが盛り込まれて耐久性に期待できるBMWの資料が入手できたので、そちらへ乗り換えた、ということです。
片
- 遠心式だと羽根車形状に無理があったのではないでしょうか?この分野のことはよく分かりませんが、流体機械の性能は、普通、比速度(specific speed)で規定されますよね。この比速度が大きくなるにつれ、遠心式→斜流式→軸流式と製作可能なおおよその型式および羽根車形状が決まってくると聞いたことがあります。もっとも戦闘機のエンジンの話ではありませんが。
ではなぜ比速度の尺度的に無理っぼい型式で設計していたのかを考えると、単純に「比速度」という尺度がまだ発表されてなかったのではないかと想像します。
理屈っぽくなりましたが、遠心式に見合った領域もあれば、軸流式に見合った領域もあるということです。遠心式と軸流式の棲み分けに興味がお有りなら、艦船の送風機について
調べたりするのも面白いと思いますよ。
太助
- >2
無理っぽいと申されても、現代のヘリや普及帯のターボプロップ、小推力ターボファン等でも遠心式は普通に使われてます。事実上それらに比しても大出力というわけでもないWW2期のターボジェットで遠心式が難しい領域ということも無いのでは?(例えば遠心式圧縮機を備えるホンダジェットのエンジンの推力はネ20の約2倍です)
SUDO
- >>3
実際に計算したわけじゃないんで只の感想ですよ。
それから比速度なんですが、出力と直接の関係ってありましたっけ?
色々と制約もあるんですが、大きさの異なるものを比較したいからこそ、比速度って重宝されるんだと思いますが。
SUDOさんは比速度で流体機械を比較するということに批判的なんですか?
太助
- >3.
比較するんなら同時代の軸流式と遠心式でないと技術水準が違ってしまってまずいんじゃないでしょうか
駄レス国務長官
- >2
無理っぽいと申されても、現代のヘリや普及帯のターボプロップ、小推力ターボファン等でも遠心式は普通に使われてます。事実上それらに比しても大出力というわけでもないWW2期のターボジェットで遠心式が難しい領域ということも無いのでは?(例えば遠心式圧縮機を備えるホンダジェットのエンジンの推力はネ20の約2倍です)
SUDO
- ブラウザ放置してたら二重投稿になってしまいました
SUDO
- >4
比速度で比較するのが間違いなのではなく、現実として相当量の空気流量まで遠心式で十分に間に合ってるという現実を述べています。つまり比速度で見ても(計算してませんが)無理のある領域ではないということではないかと言ってるのです。
>5
そうですね、比較するなら同時期でしょうね、そして英米の同時期ターボジェットも遠心式です。
もちろん大推力のジェットエンジンに軸流式のほうが向いてるということを否定するものではありませんが、朝鮮戦争で使われた両陣営ジェットの殆どはRR系の遠心式だったわけで、推力1000〜2000kg級までは無理のあるものでも無かったのが現実では?
SUDO
- >>8 「相当量の空気流量まで」
SUDOさん。比速度を尺度とすることに同意なさるなら、まず空気流量を尺度とする固定観念を捨てるところから始めなくてはなりませんね。誤解を恐れずにいうと、比速度とは流体機械の形状を示す無次元量またはそれに準じた量なんです。繰り返すと、比速度は形状を示す量ですから、大きな実機からその何分の一かの模型まで同じ値をとります。
太助
- 推力同等なら遠心式よか軸流式のほうが小径に造れます
方式 型式 推力 外径
軸流 Jumo004B 910kgf 810mm
軸流 BMW003 800kgf 690mm
軸流 ネ20 472kgf 620mm
遠心 Welland 730kgf 不詳だが添景人物との対比で1m以上と推定
遠心 GE-J-31 748kgf 同上
とうぜん前面投影面積は遠心式のほうが大となります
おそらく単発か双発か、侵攻用か迎撃用か、キモの性能は何か(最大速力・上昇力・航続力etc)など実装時の機体の形状・スペックもエンジンの選定基準となる筈です
ネ10に続くネ12では遠心圧縮機の前段に軸流圧縮機を付加してますので、圧縮比増大とともに外径縮小も意図してたと思われますが、その後にBMWの図面を見て純・軸流式で行くと決心したわけです
駄レス国務長官
- >9
エンジンの出力は空気の量で決まりますので、空気量を前提としないと話になりませんが。流量を別とするならそれこそ各種タービンエンジンで遠心式が現役である以上全く無理ではないというだけのことになりますね。
SUDO
- >軸流式に比べ遠心式ジェットエンジンの方が機構が単純に思えます。
>日本はなぜネ−10の開発に失敗したのでしょうか?
ジェットエンジンのネックエンジニアリングは、コンプレッサー部分では無くて、タービン部分だと思います。高熱にさらされますので。
「ネ−10の開発の失敗」は、「タービン部分の開発の失敗」ではないでしょうか。
なので、「ネ−10の開発の失敗」に関しては、軸流式や遠心式というコンプレッサー部分の問題では無いと思います。コメント1からもそのように思います。
>2
>この比速度が大きくなるにつれ、遠心式→斜流式→軸流式と製作可能なおおよその型式および羽根車形状が決まってくると聞いたことがあります。
ここでは、「遠心式→斜流式→軸流式と方式が変わると、比速度が大きくなる。」と表現するほうが分りやすいのではないでしょか。
比速度は、同一揚程、同一吐出量を得る回転数です。つまり、一段で同一の空気量を得ようとすると、遠心式より軸流式の方が回転数が高くなるということです。
でも、軸流式なら多段に出来るので、空気量を増せます。
外径の制約や高回転の技術やその他の観点から、ジェットエンジンでは、遠心式、軸流式、或いはその複合方式を選んでいるのではないでしょうか。
ちょん太
- >10.の訂補
方式 型式 推力 外径 最大回転数
軸流 Jumo004B 910kgf 810mm 8,700rpm
軸流 BMW003 800kgf 690mm 9,500rpm
軸流 ネ20 472kgf 620mm 11,000rpm
遠心 Welland 730kgf 1,092mm 17,100rpm
遠心 GE-J-31 748kgf 1,054mm 16,500rpm
あとこちら ↓ にネ-10などの不具合が書かれてます
http://www.ne.jp/asahi/airplane/museum/nakajima/KIKKA/ne-20.html
思うに遠心式のほうが翼車の共振や不平衡力や軸受の転動体に働く遠心力など高速回転ゆえの問題がシビアなんじゃないでしょうか
駄レス国務長官
- 皆様、ありがとうございました。
裸の大将
- 比速度などの議論をされていますが、おおざっぱに言うと
遠心式:構造単純、製作容易、効率低、安価
軸流式:構造複雑、製作困難、効率高、高価
といったところでしょうか。
ここでの効率とは断熱効率で、空気の得たエネルギ÷圧縮機の駆動エネルギです。
性能でいえば、軸流式が有利なのですが、これは精密鋳造のブレードを円周上にぐるりと植えて、それを何段か重ねているので、おそろしく面倒で、高価です。
ブレードの振動モードはいくつもパターンがあって、うまく逃げるのはたいへんです。
遠心式は効率は低いですが、はるかに単純で安くつくれます。
ただし、最近の遠心式の性能向上ぶりはめざましく、ひとむかしまえの軸流式に匹敵するレベルになっています。
そして、安くつくれる。
だから、SUDOさんの仰るようなホンダジェットやヘリコプターで採用されているのです。
日本で最初に遠心式を試みたのは、しごく妥当だと思います。
でもベースがゼロだから、わけもわからず進めていて、うまくいかなかった。
潜水艦で運んできたBMW003の図面がきっかけだったのではないでしょうか。
ネ20でいきなり軸流式に飛んだのは、たいへんなテクニカル・ジャンプですが、参考にできるものが他に全くなかったから、ワラにもすがる思いで断行したのしょう、仕方なかったのでしょう。
ホンダの中村良夫氏が「図面といっても何回も青焼きを重ねた輪郭がぼんやりわかる程度のもので」と回想していますが、いわゆるエンジンの「体格」ですね、直径と回転数と段数と空気流量の関係、必要なベアリング容量などは推定できたのでしょう。
リバース・エンジニアリングです。
ブレードをローターに植える方法もわからなかったみたいで、クリスマスツリーというやつですが、偶然、資料を見つけてようやくブレードが遠心力で飛ばないようにできたそうです。
うまくいったからよかったようなものの、失敗する可能性の方がはるかに高かったわけです。
BMW003の図面がなかったら、ネ10の開発を続けて、それなりのものは完成できたかも、と思います。
じゃま
- ちなみに、ジェットエンジンで一番むずかしいのはタービンであって、圧縮機の形式はほんとは二次的な問題で、それほど重要ではないです。
遠心式でも軸流式でもどちらでもよろしい。
圧縮機は収縮流ですが、タービンは膨張流だからです。
タービンの第一段静翼と動翼の構造は秘中の秘で、これを公開しているメーカーは殆どないと思います。
V-2500開発には日本も参加しましたが、燃焼室やタービンの仕事は、やはりRRなんかに取られてしまいましたね。
じゃま
- 種子島時休氏のタービンロケット開発は、排気タービン過給器のようなものに基礎を置いてその発展形として考えられていたわけですから、遠心式で始まるのは当然といえば当然のことだったわけです。
そこで作り出されたネ-10そのものとしては、回転数が高すぎることがひとつのネックとなっていて、遠心送風機、タービンブレード両方の破壊の原因おされていたようです。
軸流式併用のネ-10改は回転数低下対策として開発されています。このように、軸流式のメリットを認識して移行中であったわけです。
ネ-10についてはほかにも、曲流式燃焼室内で意図せぬ渦流が発生し、不完全燃焼から不完全燃焼からアセトアルデヒドが発生するような問題も起こっており、これもBMW式の直流式燃焼室ならば改善可能と考えられた、とされています。
こうした開発上解決を要するポイントが徐々にはっきりしてきて、それらを一つ一つ乗り越えてゆこうとしていたところで、一つの解決策としてBMWとユモの実例が示されたために、一気にそちらに乗り越えた、というところです。
片
- リターンフローの燃焼室はいいところもあって、エンドカバーをはずせば、すぐ中にアクセスできるので、分解組み立てがずっとラクです。
エンジンの開発は組み立て、運転、分解、組み立ての連続なので、それが短時間ですむのは、開発期間をみじかくするのにとてもよいです。
じゃま
- >>12
ちょっと引っかかる表現もありますが、同一風流・同一揚程ならば、回転数において「遠心式<軸流式」となるのは、比速度において「遠心式<軸流式」となることと同義ですね。つまりは、
・遠心式:低回転数×大流路面積
・軸流式:高回転数×小流路面積
があるべき姿だろうということです。
では高回転数×小流路面積の遠心式や、低回転数×大流路面積の軸流式はどうなのかというと、まず高回転数×小流路面積の遠心式は構造的に脆くなるのだろうと思います。遠心式は羽根車の形状が軸流式に比べて繊細(構造的にやわ?)である上に、動作原理において、文字通り遠心力作用が支配的であるからです。低回転数×大流路面積の軸流式は構造的には問題ないとは思いますが…まぁもったいないんでしょうね。これは高回転数×大流路面積の軸流式の一運転状態とも見なせますし、効率点からも外れるため性能に劣ることにもなりますから。
太助
- 書き込みしてから何ですが>>19は少し世俗的に言い過ぎたかなと思いました。回転数が比速度に絡んでくるのは定義からも明らかなのですが、一般的に遠心式は高圧・小風流に適しており、軸流式は低圧・大風流に適しております。回転数の影響はもちろんあるのですが、やはり入口と出口の半径差が比速度に与える影響も大きいですね。
太助
- なぜか、コンプレッサー部分のカキコが続いていますね。
遠心式と軸流式の大きな違いは、軸流式は段数を増やせることです。たとえ比速度が3分の1でも段数を6段にすれば、回転数は半分で済むということです。(最終段を遠心式にするというのは、美味しいのかもしれませんが。)それに、遠心式は、名前のように、ジェットエンジンには不要なラジアル方向の空気速度を与えてしまいます。軸流式に比べて効率が落ちます。
当時の技術者が、遠心式と軸流式に関してどの程度の知見を有していたかは存じませんが、部品点数が増える、未経験(もしそうだったら)な技術は怖いものです。
当時の航空機用星型レシプロエンジンには機械方式の過給器に遠心式のコンプレッサーが用いられていたことはご存知の通りです。エンジン出力が2000馬力?程度まで実用化されていることから、その程度の空気量を得る遠心式のコンプレッサーの技術は確立されていると考えるのは自然だと思います。ジェットエンジンのコンプレッサーに、遠心式を、先ず、採用するのは、エンジニアとしての自然な選択だと思います。
12でも申しましたように、私は、ネ20がものになったのは、タービン部分の改良だと想像します。
13で引用されています、
http://www.ne.jp/asahi/airplane/museum/nakajima/KIKKA/ne-20.html
にあります、
「タービン翼にも空気冷却の方法」
が非常に大きいのではないかと思います。
これが、タービン翼の内部に空気流路を設けて、リーディングエッジに穴を開けて、その穴から空気を流してタービンブレードを高熱から守る現在と同じ方式なら、当時の日本の技術者は、まさに目からウロコ状態だったと思います。
BMWの「タービン翼にも空気冷却の方法」が、どのようなものか、全く知らずにこのようなカキコをして恐縮ですが。
ちょん太