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まず私自身がエンジンの素人と、ことわっておきます。 陸軍3式戦はエンジン出力が定格を下回り、特に上昇力において劣っていたとされます。排気タービンの採用が難しいなら欧米の液冷戦のように多段多速の過給機を開発したほうが3式戦に限っていうなら有効だと思うのですが…。 「後からなら何とでも言える」のたぐいですが、識者の皆様、この素人にわかるよう教えてください。 備後ピート |
- エンジンの出力低下についてはいろいろあると思いますが、少なくとも上昇性能向上に大きな寄与はしないんじゃないですかね。
根本的にハ40の低馬力によるところが大きいと思います、大馬力の2型や5式戦が上昇力が上がってますから。
昔エンジン関係の仕事をしていた自分としては当時の低オクタン価の燃料では現代の技術を駆使しても要求を満たす性能は出ないとおもいます(詳細な当時の燃料成分も知りませんし、空冷星型は全く触ったことはないですが(汗 )
通りすがりの♂
- ハ40はDB601の国産化で、フルカン式過給器を備えています。この過給器は特性上「全開高度より下の高度でも馬力が大きい」という利点をもってます。ちなみに普通の機械式は各段・各速の全開高度より下の高度では馬力が落ちます。
つまりある高度での公称性能が同じぐらいのフルカン式と機械式では、フルカン式のほうが低空での馬力が大きいので上昇性能は優れることになります。
もっとも複雑なフルカン式の調整が果たせなかった場合はその限りではありませんが。
三式戦闘機の上昇性能が悪いのは重たい割に非力だからですが、重さがどうしようもないのだとして、ハ40がちゃんと馬力が出ていないから上昇しないのか、頑張っても上昇できなかったのかで話は変わります。
つまりはハ40が馬力が出ておらず、その原因がフルカンの調整がに多くを求められ、また機械式ならば回避できた可能性が高いという場合は、ご質問のように多段機械式を選択したほうが良かったとはいえるでしょう。
ただしDB601は多段過給器を備えるには原型からかなり色々と変えないと辛いレイアウトなので、現実的な話かというと否定せざるを得ないでしょう。
SUDO
- SUDOさんのお話を引き継ぐような形になりますが、川崎の機体設計は重量の問題を徹底的に絞り込むようなことをせず、質実剛健というのか、とにかく機体が重いです。その上に、重量が嵩む水冷発動機を載せているのですから、上昇力の点では最初からかなりのハンディキャップがあります。
そして、この水冷発動機ハ四〇を使う意味のかなりの部分はフルカン式過給器にあります。フルカンを使わず機械式過給器に換える、排気タービンを使う、ということなのでしたら、水冷発動機そのものをやめてしまえばよいわけです。
ということで、質問者の方が提案しておられるのは実はキ100IIに至る道に他ならず、「後からなら何とでも言える」でもなんでもなく当時実際に選択されていた方策にほかなりません。
片
- 識者の皆様、貴重なご回答をいただき、ありがとうございました。
同じ液冷式でも欧米とわが国の国情では根本的な違いがあったのですね。
素人の私にも懇切丁寧なご回答、かさねてありがとうございました。
備後ピート
- DB605L フルカン式2段過給気エンジン
DB603LA 同上
本国ドイツでも終戦までに間に合ってません。
さらにいえば多段多速系のJumo213系も終戦までになんとかなってません。
wittmann
- >2
>この過給器は特性上「全開高度より下の高度でも
流体継手に「全開高度」というインデックスを持ちこむのは無理です。
>複雑なフルカン式の調整
どこが複雑で、どこを調整するのでしょうか。
構造は歯車式よりむしろ単純ですし、あまり調整するところはないと思いますよ。
じゃま
- >6
油温が上がれば油圧も変わりますしポンプの吐き出し量も変わってくるんで、中々これが大変なんです。DBはこれを制御する装置を備えてますが、いいかえればここに与えるパラメータは、冷却性能や運用条件で色々と変えないといけない代物なんです。そして当然ですがエンジンや構成部材の調子が違えば適切な設定はまた変わってきます。
そしてフルカンは流体継手ですが、変速装置でもあるんですよ(正しくは減速装置でしょうか)だからフルカンを用いた過給器には全開高度は厳然と存在します。
SUDO
- >6
トルクをコンバートするオイルは、2つのオイルポンプから供給されます。
一つは、外気圧と無関係にオイルを供給します。これは、言わば、歯車式と同じです。(除熱もしないといけないので、一定量のオイル流量は必要。)
なので、これをもって、「(一速)全開高度」と言うのじゃないでしょうか。
ある高度以上になると、もう一つのポンプから外気圧に連動して、更にオイルが供給されます。
この領域でフルカンの本領が発揮されます。
たしか、マックス、九十数パーセントまで回転を伝えられます。
歯車式に比べたら、かなり複雑とみるのが自然だと思います。
SUDOさんがおっしゃっているように、調整は大変そうに思います。
ちょん太
- クランク軸から駆動される入力側インペラの増速比は10.39で
出力側は98%から60%で無段階変化ですね。
KZ
- フルカン式過給器は特性上「全開高度より下の高度でも馬力が大きい」
と言うのはどうゆう意味なのかな?
KZ
- >10
読んで字の如しですが何か疑念でもありますか?
SUDO
- 過給エンジンなのでフルカン継手だとブースト圧を高く出来る、とかなのかなと?
KZ
- エンジンの出力低下についてはいろいろあると思いますが、少なくとも上昇性能向上に大きな寄与はしないんじゃないですかね。
根本的にハ40の低馬力によるところが大きいと思います、大馬力の2型や5式戦が上昇力が上がってますから。
昔エンジン関係の仕事をしていた自分としては当時の低オクタン価の燃料では現代の技術を駆使しても要求を満たす性能は出ないとおもいます(詳細な当時の燃料成分も知りませんし、空冷星型は全く触ったことはないですが(汗 )
通りすがりの♂
- >12
全開高度より下の高度とは、大気が濃いのです。
つまり全開高度より下の高度では、過給器の圧力比は小さくして良いし、小さくするべきなのです。圧力比が必要以上に大きい過給器は余分な性能であり、その余分な性能は無駄に過給器を回すのに食う馬力、無駄に大きな圧力比がもたらす余計に高温になった吸気を齎し、それはエンジン出力の低下として現れるのです(場合によっては高温ゆえのノッキング等から更に性能低下をもたらします)
だから大概のエンジンでは過給器を変速し、多段だと1段目をバイパスする等で、低空では過給器の圧力比を落とすわけです。しかしこれらでは大した数の切り替え段を持ちませんし、切り替えたところで、その圧力比の性能でベストバランスになる高度より下では、やはり過剰性能の分のマイナスが出ます。
つまり高度に応じて過給器の性能を無段階に調整できることが望ましいというか理想的なわけです。フルカン式の優位点は、この高度に応じて過給器の回転数を無段階に変速できるという点にあるわけです。
つまり全開高度よりも下でなら、同じブースト圧なら低温の吸気を作れるので、馬力面で有利になるのです。
まあ、フルカンによる駆動損失や潤滑油温度の上昇といった別のマイナスもあるので、完璧に思ったとおりの性能はなりませんが、全開高度を頂点として、ソレより上でも下でも馬力が落ちるのが機械式、全開高度より上の落ち方は機械式と同様だが、全開高度より下では全開高度での出力と大体同じぐらいの馬力を発揮できるのです(フルカンが減速できる範囲までの高度ですが)
SUDO
- マーリンのような一段二速だと出る出力曲線の谷間がないというあれですね、
言わんとしてることで、おかしな質問しちゃいまいた。
KZ