284 おねがいします。

第三次中東戦争では、イスラエルのミラージュIIIがアラブ側のMiG-21に対して圧倒的に勝利したようですが、機体の性能、機動性はMiG-21の方が上で、ソ連式の訓練が悪かった、という説を耳にしました。

本当でしょうか? ソ連式訓練、と聞くと、防空任務一辺倒なのかと考えもしましたが、スッキリしません。よろしくお教えください。
まるき

  1.  第三次中東戦争ではミラージュも有するイスラエル軍が圧勝しましたが、空中戦で勝ったのではなく、開戦劈頭の奇襲攻撃で飛行場を爆撃して吹っ飛ばしたのです。つまりソ連式の防空そのものが奇襲で成立しなかったんです。
     空戦の戦果は誇大に膨れ上がるものですからまっとうな評価は難しいのですが、圧倒的優勢を確保した後のイスラエル軍の発表ですら1:4の得失比ですからアラブ側戦闘機は敢闘したともいえます。
    SUDO

  2. ありがとうございます。
    たしかに、開戦と同時の対地攻撃が非常に効果的だったことを失念していました。
    ソ連式防空、というと、やはり地上管制主体のものなのでしょうか?
    伝聞なのですが、イスラエルのパイロットがミグ21飛ばしてみて、使える飛行機ではないか、と判断し、結果、「アラブ側がうけた、ソ連での教育が悪かったのが勝因」となったとか。この「教育」とは、ACMのことなのか、ソ連のACMはどうまちがっているのか、が、気になってしまった次第です。
    でも、イスラエル相手に1対4とは、たしかに奇襲攻撃うけたことを勘案しても、健闘していますね。
    まるき

  3.  世界の傑作機「ミラージュIII」には、MIG21の操縦士は機体限界まで急旋回せず、容易にミラージュにバックを取られた。被弾に弱く30mm弾数発で落ちたと、いいところなしという印象を受けます。
     逆に、小回りが効いて被弾にも強かったMIG17は手ごわいようで、実際に取り逃がす例が散見されます。
     MIG21は操縦性にクセがあるともいわれてますから、まだ十分に乗りこなしていなかったアラブ側操縦士はMIG21の性能限界まで追い込めなかったと考えてよいかと。
    SUDO

  4.  1960年代はエジプト空軍の急速拡大期に当たります。
     組織の拡大と乗員養成、戦術の研究、習熟が大急ぎで行われていた時期で、1967年以降の成熟期とはかなり状況が異なります。
    「ソ連式の訓練が悪かった」とはこのことで、唯一の師だったソ連からジェット爆撃機邀撃を主体とした航空戦ドクトリンを採用する以外に方法が無く、固定的な編隊機動を中心とした高高度戦闘に戦闘機隊を充て、低高度の防空は対空兵器を主体に担当させています。
     これに対して、イスラエル空軍は対戦闘機空中戦と航空基地攻撃を主体とする航空撃滅戦ドクトリンを採用し、中低高度での戦闘機動までも捕獲したMiGを利用して研究していたこともあって、アラブ側を圧倒出来たと言われています。

     ということで、戦闘機の機種が逆転していても結果は変わらず、戦闘の結果は飛行性能の差といったものよりも、急速拡大期の空軍は乗員の平均的錬度も機材の可動率(60%程度とも言われます。)も低く、まして想定されていない低高度格闘戦を挑まれたことによる、と考えるべきなのかもしれません。
     この敗北を戦訓としてアラブ側の航空戦力は急速に強化されて有効な管制システムと各空軍の連携も考慮されるようになり、1970年代には侮り難い強力な空軍に生まれ変わります。
    BUN

  5.  消耗戦争時の1970年7月30日に、ソ連人パイロットが搭乗した20機のMiG21MFが、イスラエル空軍の12機のミラージュ及びファントムを相手に、空対空戦闘で5機を失い相手方は無傷だったケースがありますから、イスラエル空軍の練度がかなり高かった、という要素もあるのかもしれません。
    ヤマイモ

  6. みなさま、ありがとうございます。
    3 たしかに、乗り慣れている、という要素は重要ですね。わたしはミグ17がアトール積んだら、ベトナムくらいまではかなり使える戦闘機なのではないかと常々思っています。

    4 組織として、タイミングが悪かったのと、ソ連の防空的な空軍の考えが重なったわけですね。

    5 やはり、場数をふむとちがうのでしょうね。重いと思うファントムまで交えての話ですから、イスラエルの練達ぶりは、恐ろしいものを感じます。

    ありがとうございました。 
    まるき


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