257  下の254番とも関連する質問です。
 九七式司令部偵察機二型と海軍九八式陸上偵察機11型は、細部の艤装以外はほぼ同一の
機体のはずなのに、なぜ最大速度で40kmもの差(九七司偵510km/h、九八陸偵253kt=
468km/h)があるのでしょうか?

 私としては、最大速度の測定条件が違うのでは(海軍は機内燃料満載なのに対して、
陸軍は燃料半減の状態で測定するとか)という仮説を立てていますが、
実際のところはどうなっているのでしょうか?

                                       10.1.27.2:05記

NG151/20

  1. これは面白い目の付け所だと思います。
    陸軍がこの頃に使っていた「全備 常時」または「常装」状態は確かに燃料満載ではありません。九七司偵も一型で常時で燃料約400リットル、燃料満載で666リットル、二型で常時約400リットル、燃料満載で803リットルとなっています。まさに常時は燃料半減ですが、燃料搭載量そのものは一型も二型も変化はありません。胴体タンク、翼タンク、前縁タンク(増加タンク)まで一杯にするのが一型の満載状態、一型で特別装備だった胴体内の増加タンクまで標準装備している二型ではその分を満載時に含めているので搭載量が増えているのです。

    一方、海軍の正規全備状態も一筋縄では行きません。
    正規全備状態をA、B、Cといった形で複数持っているのが普通です。
    その中で基準となる状態がありますが、それもまた各燃料タンクが満載かといえば、必ずしもそうではありません。
    その好例が胴体タンクを満タンにしない零戦二一型の正規全備でしょう。

    一般論はこうしたものですが、九八陸偵一一型の場合はどうも事情が違うように思います。
    陸軍機の制式を示す構造要領という重要な書類があります。
    これは型式が変わると改正されるものですが、九七司偵二型の構造要領が改正されたのは昭和十五年三月になってからです。
    ということはそれ以前、九七司偵の飛行性能は公式には旧構造要領のままでしたから海軍は陸軍の制式で製造されている機体を受け取っても構造要領に記載されている飛行性能を転用できなかったと考えられます。
    しかも瑞星搭載の「神風型偵察機」の発注は陸軍の九七司偵二型の量産発注より早く、陸軍は一型の発注を取り消して二型に発注変更し、海軍に申し入れて了承を得た上で既に三菱で製作中の海軍用機体を陸軍で受領していたりします。

    ということで、海軍はおそらく陸軍の全備常時状態を九八司偵一一型の正規全備状態として重量などを実測し、飛行性能は九七司偵一型の技術資料を転用しているのではないかと思います。さらに海軍オリジナルの九八陸偵一二型では正規状態の定義が変わっているように思います。

    今のところ、

    ・同じ飛行機であれば陸軍の全備常時と海軍の正規全備は内容が同じ。
    ・飛行性能の差は実測値ではないかもしれない。

    といった考えですが、手もとに資料が無いので精査できず、私も仮説です。申し訳ありません。


    BUN

  2. 三菱の社内資料を見ると、九八陸偵C5M1の性能は、九七司偵のものを参照するようにとのみ書かれていて、具体的な数字は省かれてますね。


  3. うろ覚えでいい加減なことを書いてしまいました。
    上記資料におけるC5M1の最高速は「275kt/4330m」と明記があり、
    注釈として「陸軍の成績」としてありました。

    その他、この資料の表を見ると、九七司偵二型とC5M1には微細な違いがあるように記されています。
    (そのすべてが実態を反映しているわけではないかも知れず、また、実は同一機種内における時期による変化を表している場合もあるかもしれない、ということをお断りしておきます)

    ・燃料容積
      九七司偵二型 839リットル
      C5M1   800リットル
    ・発動機出力
      九七司偵二型 離昇850HP/2650rpm/+160Hg
             高力900HP/2600rpm/+120Hg/3600m
      C5M1   離昇780HP/2540rpm/+120Hg
             一速875HP/2540rpm/+120Hg/3600m
    ・発動機重量と減速比
      九七司偵二型 526kg 0.688
      C5M1   542kg 0.727
    ・プロペラ直径
      九七司偵二型 2900ミリ
      C5M1   2950ミリ

    ハ26Iと瑞星一二型では運転諸元が違っているようです。



  4.  BUN様、片様 いつも詳細なご回答ありがとうございます。

     BUN様
    >これは面白い目の付け所だと思います。
     過分なご講評をいただき、痛み入ります。

     片様
    >うろ覚えでいい加減なことを書いてしまいました。
    >上記資料におけるC5M1の最高速は「275kt/4330m」と明記があり、
     以前の水冷エンジン関連の拙問に続き、資料調べの労をいただきありがとうございます。

     他にも伺いたい点があるのですが、今日から出張で土曜一杯PCに接続できない環境に行きますので、取り急ぎのお礼まで。

                               10.1.29.1:45記
    NG151/20@ヒマ無し


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