128 WW2当時の零戦搭乗員について、「零戦には(当然)トイレがないので、落下傘にオシッコした」などという話を聞いたことがあります。
長距離侵攻作戦に従事した彼らにとって、トイレ問題は深刻だったでしょう。

ところで、同じように長距離を飛んでB-29の護衛に当たっていたP-51Dのパイロットたちも、同じ問題に悩んでいたと思うのですが……
どなたか、その辺の体験談などご存じないでしょうか。
Mの社員

  1.  以前、こちらの伝言板で紹介された欧州でB-17の護衛をしていた方の回想には、「長距離飛行時には、夕食を少なめにして、朝食は抜いてコーヒーを少し飲むだけ、出撃前に用便は大小とも済ます(但し、帰途に猛烈な空腹に襲われるので弁当を持参する)」という坂井三郎式と大差ない対処方法が紹介してありました。
     また、体験談ではないのですが、日本側が鹵獲したP-40を調査したところ、ビニールホースを通じて機外に投棄される漏斗式の簡易トイレが操縦席に付いていた、という話もあります。
    T216

  2.  追記。
     日本側もこの点を無視していた訳ではなく、現在の携帯トイレに似た紙製の簡易トイレ(使用後は風防を開けて機外投棄)があったそうです。
     尤も、風圧の関係で機外に投棄するのが難しく、戦況が悪化してからは使うことはなかったそうですが。
    T216

  3. >ホース式のトイレ
    Relerif Tube と呼びます。"P-51 Relief Tube" のキーワードで検索頂ければ、それがコクピット左舷の床面に格納されていること、実用機教程で使い方を教わること、これを使うためにはやはりベルト・ハーネス類を外してジッパーを開く必要があること、パイロットは出撃前にトイレに行き余計な水分を出し切るよう努力していたが、それでもリリーフチューブを使うこともあり、この装備に感謝していたらしいことが読み取れるかと思います。また硫黄島からの VLR ミッションに当たっては目覚まし薬(Pep pill, アンフェタミン)が提供されていたという証言も出てきます。


    http://www.cebudanderson.com/conlinstory.htm

    When we were getting ready to go, I had to go but decided I would wait until we arrived at the designated area. At that time I would avail myself of the relief tube that North American had so thoughtfully provided for such an emergency. As we settled into a patrol formation, I started to undo all the straps, belts and zipper to accomplish my objective. It was at that exact moment that the Captain called to inform me that he and I were going to go down to take a look at the invasion. Egad!

    中隊機が集結し終えたとき、私は目的地に着くまで時間があると考えた。こんな緊急時のためにノースアメリカンが用意してくれた、有難いリリーフチューブを使うときだ。哨戒編隊を組みながら、私はストラップ、ベルト、ジッパー類を外して「それ」に備えはじめた。全くそのとき、隊長が無線で私を呼び出し、私と彼の2機で降下し侵攻作戦の様子を偵察すると伝えてきた。くそっ!!

    http://www.wwiihistoryclass.com/education/transcripts/Roberts_L_021.pdf

    "Question: So did you remember to relieve yourself before you got in all your gear and got in the plane?"

    (7.5 時間の長時間任務に対し)出撃前にトイレに行って水分を出し切るのですか?

    "Answer: Well, it didn't help. You had to relieve yourself anyway once you got airborne, but you would always make sure. It's like my wife tell our kids, go to the bathroom before we take off, you know. And of course you would do that before you took off, but there was always, you know. Because there was a relief tube that was handy, you could use it if you were airborne."

    それでも駄目だ、上空に上がれば結局小便が出てしまう。だが常に注意するようにはしていた。出かけるときママが子供に「ちゃんとトイレ行った?」と言うみたいなもんさ。もちろん出撃前にはトイレに行くが、上がればいつも来るモンが来る、わかるかな?こういう時のためにリリーフチューブという便利なものが装備されていて、上空に上がったときはこれを使うのさ。

    http://www.7thfighter.com/history.htm

    Anticipating that the pilots might get weary from the long flight to Japan, they were issued pep pills. Those that took them found that the let down after relaxing for the flight home was too deep and most never used them again. Besides Mother Nature built in her own chemical for this purpose. She also arranged for reality to return. All of a sudden that survival gear seat became harder and lumpier than ever, hunger and thirst set in, and the desire to use the relief tube became strong.

    日本への長距離飛行での疲労に備えて、パイロットには覚醒薬が提供されていた。これを使ったパイロットは基地までの長い帰路において落ち着くどころかイライラさせることを体験し、殆どの者は二度と使わなかった。いずれにせよ、母なる自然は人間に天然の覚醒薬を与えているのだ(訳注:アドレナリンなど戦闘に対する興奮で疲労が相殺されることを意味しているらしい)。それ同時に、長距離飛行の厳しい現実も見せつけてくれる。身につけた救命具は重く苦しく、空腹や渇きを感じ、小便を出したい欲求が込み上がってくる。

    無記名

  4. 皆様ありがとうございます。

    零戦の簡易トイレの事は初耳でした。考えてみれば、現場でも対処可能な事なので、部隊や搭乗員によっていろんな工夫をしていたんでしょうね。

    米軍機にはホースがついていたというのも驚きました。でも、機外投棄するってことは、負圧で吸い出されるからナニが漏斗にはまって抜けなくなったりという笑えない話もあったのかな……?

    私がミリタリーに興味を持つきっかけは「丸」およびプラモデル雑誌だったので、米軍関係者の体験談はあまり見たことがありませんでした。ミリオタ道はまだ奥が深い……。
    Mの社員

  5. 約40年前の「丸」誌、ここの「画像掲示板2」の♯3836の少年向け戦記シリーズ、「ゼロ戦と戦艦大和」等時代から、零戦の防水紙製小便袋(高高度では凍ってしまいカタマリを投げ捨てることがあった)のハナシ、航空弁当は切らない一本モノのノリマキが多かった(片手で食べられるから)等は繰り返し書かれていたと思いますが… 
    丸メカ旧版No12「零式水上偵察機」では、乗員の方の手記として機上での“大”の方の処置の苦労談も載ってます。
    ちなみに長時間滞空する近年の高性能ソアラでは、やはりチューブ式の「リリーフチューブ」が装備されているものがありますね(チェコのJanter等)。
    逆に現代の単座ジェット機等では処置ナシで、F4ファントムの戦記等では“機上放尿”(要するにお漏らし)の記述が見られます。トム・クランシーの作品でも、ジャク・ライアンを迎えにきた複座のハリアーのパイロットが挨拶もソコソコにトイレに駆け込む場面がユーモラスに書かれています。
    TOSHI!!

  6. >TOSHI!!様
    簡易トイレの話は結構常識だったようですね。お恥ずかしい限りです。

    「大」のほうは……どうも、そのままするしかなく機内がえらいことになった、なんて話は聞いたことありますが。

    そういえば、宇宙飛行士はEVA(機外作業)の際にはオムツをつけるといいます。使い捨てトイレのほかにオムツ使う場合なんかもあるんでしょうかね。
    Mの社員

  7. >6.
    オムツというのは… 宇宙飛行士の船外活動は2-3回分のを付ける、とは聞いていますが、WW2期だとちょっと聞いたことがないですね。

    零戦のパイロットの方の懐古談(確かラバウル戦記系)で、熱帯系の食中毒に見舞われて(尾籠なハナシながら)、戦闘の帰途に吐き下し・下痢でひどいことになりながらもナンとか機体を持って帰った、というハナシを聞いたことはあります。

    ちなみに、ソアラの例を出しましたが、私が現役だったころ(30年前)は、「科目:滞空要領!!」というときは、「氷嚢と留め具」が必携でした(笑)。
    TOSHI!!

  8. >TOSHI!!様

     貴重な体験談をありがとうございます。氷嚢は……やっぱり、尿瓶代わりに使ったんでしょうか。

     零戦搭乗員の方の体験談は、聞いたことがあります。マラリアにやられると下痢に襲われるけど、それでも出撃しなければならなかった、なんて話ですね。

     日本海軍の長距離侵攻作戦は、米軍を驚かせたとよく言われますが……そもそも航続距離ぎりぎりの作戦自体に無理があったんですよね。そんなプランを実行した現場の人達には頭が下がります。
    Mの社員

  9. >8.
    >氷嚢の用途

    ご想像通りです。ただ、私が飛んでいた関東地方(妻沼、関宿)では、数時間以上の滞空は稀だったので、あまり出番がなかったようですが(私自身が教官同乗で47分飛んだのが最高でした)。

    ただし、当時は未だ「霞ヶ浦の教官あがり」といった豪傑肌の大老教官も居られて、「1時間目で1回目を済ませたが2回目をどーしてもガマンできずキャノピの窓(引き戸があった)からナカミを投棄しようとしたら風の吹き込みでモロに顔に被って、揉んでしまい(=キリモミにはいった)3時間を逃した」という上級生が鉄拳制裁を食らってました。
    (古き良き時代、だったんですかねぇ)

    TOSHI!!

  10. ちょっと訂正です。

    ×:私自身“が”教官同乗で47分飛んだのが最高

    ○:私自身“は”教官同乗で47分飛んだのが最高

    ちなみに、単座機(ASK-8、ASK-6、ピラタスB4)等では、3時間以上の滞空をした上級生が何名か居りました。
    TOSHI!!


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