63 アンロード加速についてお伺いします。
「最強の戦闘機パイロット」岩崎貴弘、p124-125には、概略、「マイナス0.5gを維持したものがアンロード加速で、このときに一番スピードが出る。急降下は空気抵抗が大きい」旨があります。

Q1 これは原理的なものでしょうか、それとも諸条件次第でしょうか? 大戦機は(たとえば特攻の突入要領等で)降下角度が深いほうがスピードが出るとされていることも多いと思うのですが。

Q2 もし諸条件次第の場合、いつごろのどんな機体からアンロード加速のほうが速くなったのでしょうか? あるいは別の言い方をしますと、アンロード加速のほうが速いはずだと判る指標(たとえば馬力(推力)/荷重と何かの比など)は存在しますでしょうか?

Q3 この方法の利用と概念化はいつ頃、どのようになされたものでしょうか? BoBでJu88が長い緩降下で進入してくると英戦闘機でも追いつくのが難しかった(出典失念)などは、この方法の利用と考えてよいものか、しかもその嚆矢と考えてよいものでしょうか?

はたの

  1. 原理は極めて単純に、迎え角を無くして抵抗を極少とするものです。
    大舵を使わずに機首を抑える時の感覚を表したもので、Gの値に厳密な意味はないでしょう。

    APOC

  2. つまり、極端に円弧が大きい逆宙返りの一部、ですよね。
    それが実機の特性と重なった場合に、現実的にどうであったのか、ご教示いただければ幸いです。
    はたの

  3. 基本的にあらゆる飛行機に適用で、そのままなら何れ急降下に陥ります。
    最終速度に差はなくても、無理な操舵を行うより到達時間が早くなることがメリットです。
    APOC

  4. 単純化すると、いきなり急降下に入れても利用できる重力加速度は1Gでしかなく、姿勢の乱れで抵抗が増えます。
    理想的なアンロード加速では、同じように1Gの重力加速度を利用した上で最少抵抗を維持します。
    あとはケース毎にどこまで理想状態に近づけるかですね。
    >3. 適用できて、の誤りです。すみませんでした。
    APOC

  5. 表現を変えると、放物線の接線を翼弦とするのがアンロード加速の軌跡です。
    重力加速度に逆らわず、抵抗は常に最小です。

    強引に急降下する場合、軌跡は放物線から外れることになります。
    このとき放物線の接線と翼弦のなす角が負のトリムとなり、その下向き分力に応じて降下率は増えます。

    つまり放物線降下より速く降下できます。

    しかし速度に利する重力加速度は共に1Gであるのに対し、この場合ではトリムによる抵抗が発生することになります。

    即ちアンロード加速に対して、

    強引な急降下では「降下率」が増えるものの、「機速(対気速度)」の増加にはマイナス要因のみが発生します。
    APOC

  6. 詳しくありがとうございます。
    「WW2機だと機速が遅く旋回半径も小さいのに対して、F−15級だと大気圏の天地が足りないから」と漠然と思っていたのですが、違っていたようですね。
    WW2時に急降下で避難(しようと)する例が目立つのは、降下率(というか降下角か)が大であると照準難になるから、という理由であったであろう、という解釈でよろしゅうございましょうか?
    もしお差し支えなければ、Q3のJu88がどの程度該当するか、どの程度自覚されていたものかもご教示いただければ幸いです。
    はたの

  7. 敢えて言えば落ちるに任せるわけですから、実質的にアンロード加速とは急降下そのものです。
    ただ強引な入り方をしないだけですね。
    空力や強度などの制約で実際に可能な降下のプロフィルは変わりますが、基本は同じです。

    差し迫った戦術行動においては他に考慮すべき項目が多く、物理的に最良の加速を得る事の相対的な比重は変化せざるを得ないでしょう。
    お考えの理由が当てはまるケースも有り得ると思います。

    史実については、私もお聞きしたいですね。
    ロック岩崎の本を、私も読んでみたいと思います。
    APOC


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