25 |
キ84の発動機をハ112―IIに換装し、武装を減らして軽量化したキ116ですが、どのくらいの性能を予定していたのでしょうか? ご存じの方がいらっしゃいましたらご教示お願いします。 中田 |
- なかなかリプライがつきませんが、手元資料(*)より抜き書きです。
キ-116は、元々が、満州飛行機がハ84の生産拠点のひとつとされていたもので、大戦末期の20年3月、キ-98の試作設計に絡んで、キ-93の初飛行に立ち会うために立川に出張した野田技師が、キ116の設計試作の緊急試作の指示を受けたことに端を発しています。
目的としては、
@:満州で機体が完成し始めていたキ84について、供給すべきハ45(誉)の供給が量的・輸送事情の悪化のため困難になった対策。
A:ハ112-II(金星六二型相当)が既に満州で転換生産が開始されていたキ-102襲撃機の発動機だったため、満州での戦闘機自給が図られた。
機体は短期間で完成するために、重心位置の調整のための発動機架の延長と、百式司偵III用をそのまま流用した。いわば応急改造機だったようで、外形は伝わっていません。ただし発動機換装で500s近い軽量化が図られ、終戦までに数回の試験飛行がされたとのこと。(のちのソビエト侵攻で破壊)
上記のような経緯の機体なので、性能計画値があらかじめ詳細に詰められていたいか否かはやや疑問です。結果的には「五式戦に非常に近い数値」でパイロットには好評だったという以外、残っていません。
確かに諸元をみると、発動機、プロペラ直径は殆ど同じ。重量や全長全幅等もほぼ同じ、主翼面積が20uから21uに増えている程度なので、ほぼ同じ性能を予想していたのではないかと思います。特に、高速機である百式司偵III用のプロペラを流用しているので、速度域として580〜600q/Hr(於6000m)
を想定していたと考えて良いのではないでしょうか。
参考までに、「金星零戦」54型が、やや大きなプロペラで、572Km/Hr(正規重量、ほぼ同じ)を発揮しているので、概ね概算として、速度性能はこの程度を「予想」していたのではないでしょうか。尚、キ-116はさらに100Kg程度は軽量化が可能だったとされているので、もう少し軽快な性能を発揮できた可能性はあります。
以上。ご参考までに。
(*):参考文献
航空情報別冊 太平洋戦争日本陸軍機 昭和49年再販 P30,76,158
酣燈社 日本陸軍試作機大鑑 P100
TOSHI!!