QQCCMMVVGGTT
1910 中世から近世にかけての日本では、乗馬の際の鐙はスリッパのような形(横から見ると平仮名の「つ」を逆さにしたような形)をしていますが、これにはどのような長所短所があったのでしょうか。
また、古墳時代の埴輪などに見られる鐙は、足の甲を通す輪のような形をした現在では一般的なものに近い形をしています。これらの形状の変化はいつ頃だったのでしょうか。
よろしく、御願いします。
吉川

  1. 古墳時代の、リング状の鐙は「輪鐙」と言い、中国と同じ様式の渡来文化の品です。

    これが「つ」というか「J]というか、あの形になったのは平安時代で、日本文化の産物といえます。
    名前も、「和鐙」(洋式鐙に対して、ですが)と言います。

    なぜ、あのような形状かと想像しますと、
    おそらく、靴に問題があったのでしょう。
    中国式の木靴など底の固い靴に対して、平安時代の武士の「沓」は、足を包む皮のような、比較的柔らかい構造でした。
    これは、現在でも、流鏑馬などの儀式で見ることが出来る「物射沓」「馬上沓」として伝わっています。

    底が(比較的)柔らかい沓や、草鞋のようなもので馬に乗るには、輪鐙ではいかにも足の裏が痛そうです。
    平安時代の貴族や、貴族化した武士にとっては、それは我慢できなかったのでしょう。

    そこで、底板が広く取られた、和鐙が出てきたものと推測されます。

    実用上は、問題あると言うか・・・競馬には向かない感じですが、昔の日本の馬は背が低く、高速では走らなかったことと、そもそも馬上の武士は主戦力ではなかったこと、他の甲冑も不合理でも問題なかったこと(!)などから、そのまま伝わってきたものと思われます。

    致命的欠陥で無い限りは、伝統と威厳を守ったほうが得ですからね。

    また、流鏑馬などの儀式を見ても、致命的なほどではない(そこそこ走って矢を射てている)ように見えます。

    ご参考までに。
    http://www.maruyama.gr.jp/FootandToy/event/2001/wagutu/wagutu010.htm
    クリスティー

  2. 1>・・・あの形になったのは平安時代で
    もう少し前でも、存在するような気がしてます。それはともかく・・・
    古墳時代の埴輪などに見られる鐙は、その原型は鋳物である筈で。。。
    他方「和鐙」は木製が多く・・・
    そして件のカタチの前段階では、スリッパのように足の甲を包むカタチも見受けられます。製作上の都合からでは?と漠然と考えておりましたが、、、?
    sinn

  3. 我が国の鐙は袋鐙、武蔵鐙と呼ばれ、他に軍陣用の舌の長い鐙は舌長鐙と
    呼ばれています。概ね平安期の間に鐙の形態が定まった様です。

    さて前史として古墳時代の鐙には二種類ありました。
     (1)輪鐙
     (2)壺鐙
    壺鐙は足の裏にあたる部分に舌状の延長部があり、形態的には袋鐙につながって
    いると思われます。袋鐙の移行期には舌状の部分が袋鐙よりやや短い半舌鐙が
    ありました。
     袋鐙の利点は足全体を鐙が覆う為、長時間の騎乗時の足の疲労が少ない事、
    戦闘時に踏ん張り易い事、落馬時に足が抜ける(横が空いている)事が
    上げられます。
    馬上の人

  4.  まあ実用上の利点欠点は必ずしも合理的に文化に反映されるわけではないわけですが。

     鐙だけ見ていても仕方ない気がします。鞍とセットですし、乗り方とも関連しますし。

     程度差ではあるものの、和鞍は、中世ヨーロッパ騎士の鞍、西部劇に出てくるウェスタンスタイルの鞍と並んで「硬い」のです。表面というより構造体として。
     したがって、まずは鞍の硬さに由来して、ついで鞍が硬い(のに合わせた乗り方であることから)収縮(馬術用語)が困難であることを反映して、反撞がきつくなります。ことに速足の時。にもかからわず、速足が多用されます。せざるを得ないのですね。なので、鐙革を長めに、つまり比較的足を伸ばした状態で乗ります。となると、馬体がヒトに対して相対的に小さければ(和、ウェスタン)むろん、大きくても(西欧騎士)、足先は馬体から離れることになり、長い拍車が必要となり、したらば鐙革が硬くていい、むしろ硬いほうがいい、ということになります。
     で、ウェスタンではヒトの背骨を反撞の向きより後ろに傾けることにより、和と(たぶん)西欧騎士では、速足の時は鐙上に立つことにより、反撞を逃がしているわけです。
     対して普通の(西洋風の乗馬用の、また競馬用も、たぶんモンゴルあたりのも)鞍は、中に仕込まれている鞍骨という木材が変形するようになっており、比較的足をまげて乗ります。足先の自由度が大きくなります。と、背骨に沿って反撞を逃がすことが可能になるわけです。
     
     こうしたスタイル全体の違いが鐙にも影響しているのでしょう。
     踏みしめる部分がどうなっているかは、あえて言えば瑣末事です。鐙の位置と、鐙革の自由度が「まず」あり、それに応じて「踏みしめる部分」が形を成すのでしょう。

     低い位置の、固い鐙革を用いた鐙の欠点は脚の操作が限られることであり(ひいては馬の制御が低レベルにとどまること)、利点は外れても履きなおしやすいこととなります。
    はたの

  5. 履物の事は気が付きませんでした。
    有難う御座いました。
    質問者
    吉川


Back