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1660 ゼロは52型甲に至って初めて操縦者を守る鋼板がつきましたが、なんでこんな遅いんですか。パイロットからの要望はなかったんでしょうか?
のり次郎

  1. 機体の装備が変わるのは「考え方」が変わったからなのですが、昭和十八年の「性能標準」に盛り込まれた防御装備についての考え方が十九年度からの零戦に採用されたと見て良いと思います。(「性能標準」は当warbirds別館「真実一路」を御覧下さい。)
    この変化の背景には実戦での大損害と防御装備を求める声があったと思います。しかし陸軍は開戦当初から防弾装備のある戦闘機を持っているのに何故、海軍は防弾装備に欠ける機体が目立つのか、という問題については、通常「海軍首脳の攻撃偏重の精神主義が悪い」といった語り口になりやすいのですが、私は最近、そうとばかりは思えなくなって来ています。自社機採用の為に防御装備を切り捨てた設計者にも相当な責任があると考えるべきです。
    BUN

  2. 最初に配備された十二空で、15年8月頃早くも問題にされています。搭乗員からの指摘があったようでもあり、これに対して現場にいた技術スタッフ(空技廠飛行機部員)が、軽量化によるメリットと防弾を天秤にかけた発言をしています。結局大西瀧治郎が後者を支持する姿勢を示してこの場をおさめたと言いますから搭乗員からの突き上げはちょっと厳しいものであったようでもあり、零戦が初空戦を経験する前の話であることを考えると「戦闘機に防弾を施すという常識」が既にあったことが分かります。零戦の登場がその常識を捨てることを迫ったのです。


  3.  大西瀧二郎の防弾重視発言は一式陸攻の計画審議案の検討時からのものでしょう。この時も大西瀧二郎の「搭乗員の命はかけがえの無い貴重なものだ」との主張が技術側と業者からの否定的な意見によって押し切られています。一式陸攻は実戦参加直後からその防御面での大欠陥が指摘される飛行機でしたが、その改修型であるG4M3について、設計者は一式陸攻の高性能を保証したインテグラルタンクの利点を損なう改造であり実利が無いばかりでなく無意味、と平然と発言しています。また、
    「そのため(重量軽減要求が過酷ということ)にどうしても防弾面の研究がおくれてしまう。みんな元気のいいパイロットにおぶさってしまう。体当たりさえしようというんだから(笑)」
    とは、ある主力戦闘機設計者の言葉ですが、愚劣な発言というよりも、第一線と設計者達の居た世界との距離の大きさをそこに見るべきなのでしょう。設計者には何も見えていなかったと考える以外、彼等を免罪する道が見つけられません。
    BUN

  4. 設計者は、要求仕様に基づいて設計をするもので、要求仕様にはその中の優先順位
    も決められれていて然るべきものですから、防弾装備が不十分なことを設計者の責任とするのは不適切だとおもいます。
    使用者の要求を仕様に反映させたのが設計者なら、設計者の責任ですが、戦略および戦術上の要求を盛り込む必要のある兵器で、そのようなことが行われていたのでしょうか?現在の常識からはちょっと信じられません。
    ぶひ

  5. 一式陸攻の計画要求審議案決定までの記録は一般人も読むことが出来、計画要求は市販の出版物で読めると思いますが、明確に防御の要求があります。これが全くの無防御に転換した理由は主翼の独特な構造によるのですが、それは軍が押し付けたものではありません。設計者達のオリジナルと言われる機構、構造も海軍側の研究と発案に依っている場合が多くありますが、この件は独自の発想と設計者の口から語られています。そして設計者は「(当時最も効果的であったことが立証されているG4M3の内袋式)防弾タンクは被弾炎上までの弾数がやや多くなるだけ」と発言してるのですから、当然責任はあるということでしょう。こういうことは幾つかの機体において現実に起きていることなのです。
    現実には用兵側と業者との間に空技廠が大きく関与しますし、計画要求の一項目を無視することが果たして業者側のみで可能であったとは思えませんが、上記の通り、当時のエンジニアはこの件に関してはその個性と裁量の範囲でこの件に十分に関与していると思われます。
    BUN

  6. 記憶モードで申し訳有りません。ある時この問題が取り上げられ相当激論が交わされましたが、結局は源田実さんの一言でその時点では防御の強化は行われなかったとの文を読んだことが有ります。(roht)
    roht

  7. >4 要求を逸脱して、中攻であるところの十二試陸攻を4発化しようとしていたのは三菱側だったのではないでしょうか。4発攻撃機すなわち大攻はこの時期別途計画が進められ、中攻3に対して大攻2の機数割合で整備することまで定められていたのにもかかわらず、です。十二試4発案については、ボーイングに対する技術的憧憬から出発しているのではないかと、私には思えてしまいます。当初案どおりに尾部銃座無しで4発の一式陸攻を想像すると、B−15、17のイメージのままではありませんか。実際、本庄氏はこの頃渡米取材も行っておりますし。


  8. ちょっと質問したいのですが・・・
    昔、友人からベテランパイロットは少しでも機を軽くする為に
    自ら鋼板を外そうとして、その行為を整備士が必死で止めた。
    と聞いたことがありますが、本当の話なのでしょうか?

    ベリアル

  9. >8
    隼では聞いたことがあります。
    バウアー中尉

  10. 私も防弾については、兼ねがね海軍機と陸軍機でかなり思想的な差を感じています。特に一式陸攻、零戦は目立ちますね、確かに用兵側だけの話では済まされない不自然が有るのでBUNさんのご意見をOFF会等でじっくり伺いたいと思います。
    やっぱ隼最高!!(笑い)
    2HB

  11. >BUNさん
    なるほど、そういうことでしたら、設計者にも責任の一端があるということは明確ですね。
    ご教授ありがとうございます。
    ぶひ


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